第1話『ようこそ並行世界へ』
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巨大な大樹を中心に広大に広がる大森林の中、白銀の体毛をなびかせ疾走する一匹の狼。
背中には褐色の肌と尖った耳が特徴的な少女を乗せている。
そんな希少な魔獣『天狼』の背に跨る少女の向かう先は住処にしている洞窟である。
「まだ寝てるかなー」
「世界樹の実も食べさせたし、そろそろおきないかなー」
森の中心にそびえる『世界樹』と呼ばれる大樹。
その葉はあらゆる傷を癒し、その雫は不老を与え、そして満月の夜にのみ実る果実は命を呼び戻す秘薬となる。
ある満月の夜、日課の散歩をしていた時に大樹の根元に倒れている男を拾った。
男は生命力が尽きかけて瀕死状態だった。
怪我をしているのか血だらけだ。回復魔法をかけてみるが何故か回復魔法を受け付けず、困った少女は『魂を呼び戻す秘薬』と言われている世界樹の実を与えてみた。
男は血色が多少良くなったが未だ意識は無く、浅い呼吸をするのみ。とりあえず生きているのを確認し住処である洞窟に連れて行ったのだ。
……
村正は夢を見ていた…
目の前には、カレンがいる。
「…カレン?」
少し背が伸びてる?
「カレンなの…か?」
泣いてるのか?
「ここは……」
そこは『白』1色の世界。建物はおろか、人も、動物も、空も、地面もない。
自分が立っているのか浮かんでいるのかすら曖昧な世界に村正は困惑する。
「たしか、カレンを探してて…橋の下に居た…」
「そしたら…」
「!!」
「そうだ!変なやつが現れて…そう!ペンダントを渡せって。」
「アレ?それでどうしたんだ俺…」
「胸が痛くて、すげぇ血が吹き出して…」
記憶を辿り得た答え。
「死んだ……のか?」
貫かれた胸を見るが傷どころか着ていたTシャツにも変化はない。
夢か…?
「いいえ。確かに貴方は天命を失われかけました。」
え?でも、傷も何もないぞ…?
「巻き込んでしまったのは、私の責任です…」
「謝って許されるとは思っていません。なので私の半身を核に損傷した心臓を再生させてもらいました。」
責任?半身を核に心臓を再生させた?
どういうことだ?何を言ってる……?
目の前にいるのは少し成長した姿のカレン。
小さな女の子というより若い女性だ。
そして彼女はこう続けた。
「わかりにくかったですね。貴方を救うには『コチラ』に来ていただくしかなかったんです。」
「あの時は時間がなく半身を核にした賢者の石を使い心臓を再生し、傷は回復させましたが襲撃者の追撃を躱すために強制転移させてもらいました。」
「すまん。まだ理解が追いついてないけど、1つ聞かせてくれ。」
自分に起きた事より、この疑問の答えを聞かなければならない。
「君が『可憐』なら、俺の知ってる太刀花 可憐はどこに行ったんだ?」
「確かに貴方にはソレを知る権利がありますね。」
「無事なのか?」
「それを答えるには、この『世界』について知っていただかなければなりません。」
そう言って彼女は世界の真実を語り始めた……