第18話『可能性』
『鎚小人族』
身体は小さく、成人となっても120センチ程度。寿命は平均160歳と人族よりは長いものの、亜人では短い部類に入る。
基本適正が筋力と技巧に特化している為、鍛冶鉄工技術と魔科学の分野では、全種族の中でも最高の技術力を誇る。
……
「…という訳で。私こう見えても。お姉さんなんだな!。」
「なるほど…な。」
俺はティエナと共にアウロラの待つ宿に向かっていた。
「ところでアウロラの状態を見た時に『管理者』って項目があったんだけど、あれは魔法人形は全員に付いてるのか?」
「そうだねー。自律型魔法人形っていうのは。どうやって生まれるかわかる?。」
「魔法じゃないのか?」
「まあ。魔法人形だから。そう思うよね。」
「違うのか?」
「あの子たちはね。私たちの『様々な事を手伝ってもらう為』にこの街の魔科学研究所が人造魔石を核に生体素材で作った人型魔道具なんだ。」
「生きた魔道具ってことか…」
「正解。さっき『魔道具みたい』って言ったのはそういう意味だよ。」
「人造魔石は『自己意識を持った人を造る研究』の中でも最大の成果って言われてる。」
「だけど。意識っていうのは。要は自我だから。彼女たちにとっての創造主や管理者、使用者に対して攻撃や反抗されると困るじゃない?。だから首輪を付けたんだよ。」
「理屈はわかった。」
「要は面倒事を任せる為に作ったから、扱い易いように首輪をつけたって事か。」
「あはは!。面倒事とは手厳しい。でもその通りだよ。シドくん。」
「さあ、ついた。ここだ。」
「じゃあ。眠り姫を起こそうか。」
……
部屋に戻ると女将が着替えさせたのかパジャマ姿のアウロラが変わらず眠っていた。
「さて。まずは状態をみてみよう。」
「解析…いや。こっちかな。『分析』」
……
名前/未設定[初期化済]
種族/兎人族F型 『アウロラ』
固体識別/『自律型魔法人形』
クラス/未設定[初期化済]
天命/10000/10000 魔力/21000/21000
管理者/未設定[初期化済]
原因/魔力負荷限界
状態/昏睡
最終記憶/120分前
『使役効果の喪失により管理者から廃棄処分の命令を受信/拒否しました』
『自己破壊機能防止の為『昏睡』状態へ移行』
……
「……。ふむ。」
「なるほど。やっぱり廃棄命令出てるね。」
「どうなるんだ?」
「通常は自分で処分場に行っておわり。」
「自殺させるのか。」
「そうだね。」
「処分場で人造魔石を回収。別の意識を入れてまた新しい人形として再起動かな。」
「リサイクルか。」
「まあね。シドくんは。どうしたい?。」
「この子を助けたい!」
「そもそも壊した原因は俺だし、責任はとるよ。この子が死ななきゃいけないなんておかしいだろ。」
……
ティエナは静かに聞いていた。そして。
「そうか。ならシドくん。この子は君に託す。私の権限で所有権をわたそう。」
「え?どういうことだ?ティエナの権限て…」
「ああ。ちゃんと自己紹介をしてなかったね。」
「私はティエナ・エリ。この街メルカトスの国立魔科学研究所の所長をしている。まあ。普段は個人的な研究所で骨董弄りをしてる魔科学者だよ。」
「所長?じゃあ、ティエナが作った本人か?!」
「『私達』が作った。が正しいかな。」
「…なるほどな、道理で自律型魔法人形に詳しい訳だ。すっかり騙されたよ。」
「あはは!。相変わらず手厳しいね。でも。私は興味があったんだよ。人族の君が知り合って間もないこの子を助けたいと言ってきたことに。責任は自分にあるから助けたい。責任をとりたい。と最後まで純粋にこの子を『命』として見ていた。ことにね。」
「私は彼女たちを最後まで『管理者』として試験運用中の魔道具として考えていた。」
「最初はね。友達を作ろうとしてたんだ。私たちに寄り添いずっと仲良く生きて行く存在として。」
「でも。街の成長でたくさん便利な物が増えて。楽な世界になった分。面倒事が増えた。そうシドくんが言った通り。私たちは友達にそれを押し付けた。自分たちが見たくないものを押し付けたんだよ。」
「いつの間にか友達は魔道具になっていたんだ。おかしな話だよね。」
「この子は『可能性』だ。廃棄命令を受けてるのに生きている。わかるかい?。拒否したんだ。命令を。今までこんな事初めてだよ。」
「この子を一人の命として向かい合える君になら。この『可能性』を託せると思ってる。」
「託すって…どういう事だ?」
「言った通り可能性を託すって事さ。この子には自由を与える。どうするかはこの子が決めることだ。そして私は作った親として見守ろう。シドくんには彼女を導く友達になってほしい。」
「友達か…わかった。なら俺は友達を助けたい。改めて頼む、手を貸してくれ。」
「もちろん。『子供』の友達の願いだからね。」
「『魂解放』…よし。」
ティエナがアウロラに魔力を込めてからアウロラのパジャマの胸元を開いた。
「な!?なにを…」
「ここに手を置いて。私の言う通り復唱して。」
「あ、ああ…」
言われるままにアウロラの胸に手を置く。
「『おはよう。アウロラ。』」
「『おはよう。アウロラ。』」
そして、眠り姫は目覚める……
「おはようございます。貴方が新しい所有者ですね。」
「そうだよ。彼はシド。大切にしてもらいなさい。そうだシド。彼女に名前を付けてやってくれないかな。」
「名前か…」
「そうだな…よし。君は『ラビ』だ。」
「私の名前はラビですね。ありがとうございますシド様。」
「ははっ!様はいらないよ。俺はラビの友達だ。」
「ですが。私の所有権はシド様のものですので。」
「んー、まあ。少しづつ慣れていけばいいか…」
「あの……シド様。」
「ん?どうした?」
「なぜ私の胸を揉んでるんですか?」
「え?!いやいやいや!すまん!ごめん!申し訳ない!!」
慌てて手を離して土下座した。
「ふふっ…」
「まったく。親の前で大胆だねー。シドくんは。」
「すまなかった!ラビごめん!」
「ふふふっ…責任とってくださいね♪」
「え?!」
顔を上げるとラビがニコニコと笑っていた…
可能性と自由を得た、『夜明け』と呼ばれた自律型魔法人形の少女は朝日のような優しく暖かい笑顔だった。




