第17話『鎚小人族』
俺は意識なく眠り続けるアウロラを抱え、宿に戻った。宿の女将さんはニヤニヤと笑みを浮かべ、部屋に向かう俺たちを見送った。
「とりあえず、寝かせたけど…」
「んー、どうしたものか…」
意識はない。が死んだ訳ではない。なら…
「そもそも、これ。どういう状態なんだ?
アウロラの状態をまずは確認するか…」
「『解析』」
……
名前/未設定[初期化済]
種族/兎人族F型 『アウロラ』
固体識別/『自律型魔法人形』
クラス/未設定[初期化済]
天命/9210/10000
魔力/21000/21000
管理者/未設定[初期化済]
『使役の首輪』/破損
……
「んー、生きてはいるな。だが、この管理者って項目は初めて見たな。つまり管理する為の首輪が壊れたから全部初期化した感じか?とりあえずここで考えてもわからんな。」
「まあ、ここに置き続ける訳にもいかないし、わかりそうな所に直接聞くしかないよなあ。」
アウロラを女将さんに頼み、俺はアウロラの関係者を探しに出かけた。
……
「お、ここか。」
シドはアウロラの首輪に関する情報を得る為、魔道具の工房に来ていた。
「『ティエナ・エリ魔道具研究所』か魔道具の修理はここが一番って案内所で言ってたな。」
かなり小さめの扉を潜ると中は古道具屋のような雰囲気を漂わせ、外に広がる近代的な街並みとは対称的な作りだった。
「すみませーん!誰かいますかー?」
…反応がない。留守か?
ギギッ…
奥から建付けの悪そうな扉が開く音がした。
「はいはーい。いますよー。」
「あー。おまたせしましたー。いらっしゃいませー。」
奥から現れたのは子供のように小さい女の子だ。
「あ、どうも。えっと、お店の人居るかな?」
「あー。私がお店の人ですよ。ティエナ・エリ魔道具研究所の所長。ティエナ・エリです。」
……来るとこ間違えたか?
「あ。お客さんはじめて?。この国くるの。」
「あ、ああ。今日着いたんだ。」
「あー。なるほどー。じゃあドワーフも初めてかな?。」
ドワーフ?どこにいる?まさか…
「え?君が?いやいやいや!ドワーフ族って髭がこう、一杯生えてるんじゃないのか?!」
思わず、声が大きくなる。
「えーと。髭が生えたドワーフ?。それは聞いたことはないかな。」
「それはどこのドワーフ族?。私たちは鎚小人族なんだけど。」
「いや、すまない。興奮してしまって、忘れてくれ。」
俺の中のドワーフのイメージが根底から覆される。目の前に居るのは、幼稚園児くらいの女の子。髭もなければ酒も飲んでない。
「えーと。お客さん?。なんだよね?。」
「あ、ああ。魔道具の修理について聞きたくて…」
「『使役の首輪』ってやつなんだけど。」
「ああ。自律型魔法人形の?」
「そうそう。直し方分かるかな?」
「モノはある?。」
「これなんだけど…」
カウンターに壊れた首輪を置く。
「ありゃりゃ。完全に魔力回路が壊れてるね。」
「なにしたの?。魔法人形の制御をするからかなり強い魔法でも壊れたりしないんだけど。」
「んー、何と言われると原因が分からないんだけど……」
俺はアウロラが倒れるまでの状況を説明した。
「んー。魔力の波動かなー。お兄さんは魔法使い?。」
「いや、どちらかと言うと剣士?かな。」
「んー。ちょっと確認したいから。これ持ってみて。」
渡されたのは、握力計のような器具だ。
「それ握って。思い切り魔力だしてみてよ。」
「思い切り?大丈夫なのか?」
「うん。大丈夫。ほら。はやく!。」
「よ、よし。」
握力計のような物を握り、ありったけの全力で魔力を込める。
「っはあああああ!!!!」
握力計?がミシリと軋む。
「はい。おっけー。貸してみて。」
「どれどれ……」
「あー。なるほど。」
「ど、どうだった?」
「原因はお兄さんの魔力だねー。」
「お兄さんほんとに魔法使いじゃないの?。魔力適正SとかAクラス魔法使いでもなかなか居ないよ?。」
「ハッキリ言って規格外。こんな魔力を至近距離で出したら。さすがに壊れるよ。」
「そうなのか……直せそうか?」
「無理だね。おそらく。これを付けてた魔法人形も魔力逆流の影響で機能が初期化したんじゃないかな。かわいそうだけど。廃棄だろうね。」
「廃棄?!」
「うん。魔法人形は都市民と外部からの旅行者の用役補助の為に作られた魔道具みたいなものだからね。」
「助けられないのか?」
「助ける?。魔法人形を?。」
「あいつは悪くないだろ?原因は俺なんだし。」
「んー。面白い事言うね。お兄さん。」
「よし。私が手を貸してあげよう。」
「ほんとか?!助かるよ!ありがとう!」
「魔法人形を助けたいなんて言う人は初めてだよ。」
「とりあえず。その子に会いにいこうか。話はそれからだよ。」
ティエナ・エリと俺はアウロラの待つ宿に向かった…




