表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第一章 目覚め
17/61

第16話『シドとアウロラ』

「いろいろお世話になりました。料理すごいうまかったです。ありがとうございました。」


「いえいえ、またいつでも食べに来てください。うちは強い隊員はいつでも募集してますから。はははっ。」


クライフと王国商隊の面々に別れを告げた俺はメルカトスの検問所を抜け、ビル群が建ち並ぶ都市の中に入った。


……



「ある意味別世界だな…」

「そして、人がすごいな。こんなに種類居るのか…」


エルフ族、ドワーフ族をはじめ、獣人族も犬科系統、猫科系統、肉食系、草食系、爬虫類系、雑食系と本当に都市内は様々な種族が入り乱れ生活する坩堝だ。


車こそ走ってないが、しっかりとした石畳が隙間なく敷き詰められた馬車道と色味の違う石畳の歩道が整備されており、魔石灯と呼ばれる街灯が等間隔に設置され何と信号機まである。


都市の中心に建つ、一際目立つ巨大な塔から放射状に整然と広がる都市のビル群。


「いろいろ規格外な町なのは理解したが…」

「とりあえず、宿の確保と冒険者ギルドに行かなくちゃな。しかし、道がわからん…」


背後に近づく気配を感じ、振り返った。


「う、うさぎ…?」


そこに立っていたのは美しい顔立ちに透き通った白い肌。シンプルな白いワンピースを着て、緩くウェーブした薄いピンク色の髪にぴょこぴょこ動くうさぎの耳が付いた10代後半の女の子だ。


「何か、お困りですか?」

「え?あ、あの。宿と冒険者ギルドを探してたんだけど、場所わかります?」


「はい。宿はこの道をまっすぐ200メートル進むと右手にホテル等の宿泊施設がございます。冒険者ギルドへは歩道上に設置された乗り場から乗合馬車の都市中心部行に乗って頂き、冒険者ギルド前で降りていただくと目の前にございます。随伴が必要な場合はお申し付け下さい。」


恐ろしく丁寧な説明をしたうさぎ耳の少女は礼をして、更に続ける。


「説明をもう一度聞かれますか?共通言語以外の説明がご希望の場合は、都市内案内所へご案内致します。」


「は、はあ…」


少女は笑顔を固定したまま、俺の横を通り抜けスタスタと歩き出した。


「あ!ちょっと!」


思わず肩に手をかけた。


「申し訳ございません。私は性的な接触行為や交配欲求による性行為等の用役は提供しておりません。性的な用役をご希望の場合は専用の機能に特化した者、または都市外周部に専用の施設がございますので、そちらをご利用下さい。」


「え?いやいやいや!?そんなつもりじゃないよ!!」

「えっと、ふつうに会話をお願いしたいだけだから。わかる?」


「かしこまりました。どのようなご要件ですか?」


何か変だ。まるで、機械と話してるみたいな錯覚がある。


「質問がある。」

「君は何者?都市案内する仕事か何か?」


「私は、兎人族(ワーラビット)F型の自律型魔法人形(オートマタ)です。主に都市内の誘導、案内、各種施設の説明と随伴を担当しております。」


自律型魔法人形(オートマタ)?」

「はい。自律型魔法人形(オートマタ)は工業都市メルカトスが誇る魔科学分野の最新技術を投入し製作された個体の総称です。」

「都市内には用役の種類別に現在60体配備されています。外装を見分けるために使役の首輪を私たち全員が付けております。」


簡単に言うと獣人族そっくりのロボットか…

しかも、コントローラ付きの超高性能

道に迷ってた俺に反応して案内の説明業務がはじまったんだろう。この国の科学レベルは元の世界より発展してるかもしれないな…


「君は名前はあるのか?」

私達(・・)兎人族はアウロラと呼ばれています。」

夜明(アウロラ)か。」

「決まった行動以外は対応出来るのか?」

「そのご質問にはお答え出来ません。」

「そうか。」


まあ、いいか。とりあえず宿とギルドにいこう。


「案内ありがとう。あとは一人で大丈夫だよ。」

「かしこまりました。お役にたてて光栄です。またのご利用お待ちしております。」


礼をして、少女型の自律型魔法人形(オートマタ)アウロラは雑踏の中に消えていった。


……


その後、宿を確保した俺は案内通りに乗合馬車で冒険者ギルドに向かった。


カランカラン…


ギルドも近代的な建物だ。

中に進み、受付にいく。


「すいません。レムリア王国から来たんですけど、滞在拠点更新をお願いします。」

「はい。ポロコ支部からですね。手続き用の書類に御記入いただき、かけてお待ち下さい。」


……


無事に手続きも終わり、メインの目的である鍛冶屋と鉱石屋を探して街を散策する事にした。


「なるほど、案内表示の看板があるのか。」


道路の上部に通りの名前や施設名、距離が書かれた青い看板はあった。


「それにしてもすごい文明レベルだな。」


建ち並ぶビルは高いものだと10階建てほど低いものでも3階建て、中心部に建つ塔に至っては恐らく30階はある。


「えーと、鍛冶屋街は……」


工業地区の辺りを軽い迷子になりながら歩いていると…


…ん?あれは…さっきの。


「おら!こっちだ!こいよ!」

「申し訳ございません。私は性的な接触行為や交配欲求による性行為等の用役は提供しておりません。性的な用役をご希望の場合は専用の機能に特化した者、または都市外周部に専用の施設がございますので、そちらをご利用下さい。」

「ごちゃごちゃ言ってねえでこっちこいよ!」

「へへっ『お手伝い』してくれんだろ?」

「気持ちいいこと『お手伝い』してくれや。」

「申し訳ございません。私は性的な接触行為や交配欲求による性行為等の用役は提供しておりません。性的な用役をご希望の場合は……」


「あー…こういうのバカはどこにでも居るんだな。」


アウロラと呼ばれる兎人族の自律型魔法人形(オートマタ)が育ちと頭の悪そうな奴に路地へ連れ込まれていくのが見えた。


「やれやれ…なかなか鍛冶屋街に行けないな…」


……


薄暗い路地の奥に二人は居た。

どうやらアウロラはまだ無事なようだ…

しかし、反応や抵抗する様子がない。


「おい。」


「?!……誰だお前!」


「誰でもいいだろ。その子を離せ。」


路地の奥へ進み向かい合うように立った。


「関係ねえだろ!引っ込んでろ!」

「ガキが!怪我したくなきゃ回れ右だ!」


座り込むアウロラにはやはり反応がない


「お前がその子を離して謝ったら、今なら許すぞ?」


「なんだと?!クソガキが俺様を誰だと思ってんだ?ああ?!!」


男は座り込むアウロラの耳を乱暴に掴み、立たせたアウロラを無理やり抱き寄せようとする。


「こいつぁ、俺が可愛がってやるんだよ。」


下卑た笑い声を漏らし足元に座り込むアウロラを欲望で満ちた目で舐め回す男。


「今更ビビったって逃がさねえぞ?ガキが!」

「てめえは許さえねえぞ?俺様を怒らせたから……な!!」


男が隠し持っていたナイフを投げて来た。

ナイフは俺の顔の真横を抜け、薄く切れた傷から血が一筋流れる。


その瞬間。どす黒い魔力が辺りを埋め尽くす。それは目に見える程に具現化した怒り。


アウロラを掴んだ男は突如様子が変り禍々しい気配を帯びた『ソレ』を見た。


みるみる膨れ上がる魔力の波動。肌が焼けるような痛みが走る。目の前に居たのは若い男だったはずだ。だからちょっと痛い目に合わせようとした。ほんのそれだけのはずだった。


「な、なんだそれ……おまえ…なんなんだ?」


「調子に乗りすぎだ。まったく。お前みたいな奴はどこの世界にも居るんだな…不快だぞ?」


得体の知れない恐怖にガタガタと震える男の台詞を引用して返す。


「お前は俺を怒らせた…痛い目に合いたくなきゃ、回れ右だ。わかったか?」


殺される。向けられたどす黒い殺意にそう男は直感する。兎人族の事など最早どうでもよくなってた。男は走る。

まさに脱兎(・・)のごとく…余りにも滑稽な姿だった。


「ひ、ひぃいいぁああああ!!!」


……



「大丈夫か?」

「立てるか?」


シドはアウロラに声をかける。


「あ…ありがとうございます。」

「こ…怖かったです。ただ一点問題があります。」

「え?怪我でもしたか?」

「いえ、身体は無事ですが。『使役の首輪』が破損したようです。」

「首輪?ああ、これか…」


シドが無意識に少女の首輪に手を触れた瞬間…


パキンッ……


「「あ…」」


バタッ……アウロラが崩れるように倒れた。


「お、おい!どうした!?大丈夫か?」


首輪壊したからか?いやいや、壊れかけだったし。うん。俺のせいじゃない…はずだ。


「ったく。どうすんだよこれ……」


突如意識を失ったアウロラを抱え、シドは途方にくれるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ