第14話『亜人の国』
「おう!シドじゃねえか!」
「…ん?ああ、オルカさんか。」
「お前何してんだ?こんなとこで…?」
「あ、いや。新しい武器を探してるんだよ。」
「は?武器?お前ここ鉱石素材の店だぜ?」
「知ってるよ。剣の材料を探しに来たんだ。」
トネリコの森で作った木刀。森に居た時から相棒として頑張ってた愛用の武器。
この前の『小鬼騒動』で無理させたせいか今日の鍛錬中に寿命を迎え、折れた…
「で、新しい『武器を作る』為に材料を探してた、という事か。」
「そうだな。」
「武器屋で買えば早いだろ?」
「まあ、ね。」
「俺さ、こっち来るまで刀工の仕事してたんだ。」
「トーコー?なんだそれ?」
「ああ、刀鍛冶…んー、鍛冶屋だな。」
「おお!鍛冶屋か!それならわかるな。」
「なるほど、それで材料探しか!」
「あ、それなら!ちょうどいい仕事あるんだが手伝わねえか?」
「仕事?なにするんだ?」
「へへっ実はよ……」
……
「土砂崩れ?」
「ああ、この前の地震で南に抜ける街道が埋まっちまってよ。交易に支障あるから何とかしてくれって依頼だな。」
「どの辺がちょうどいい仕事なんだ?」
「南に抜ける街道の先には世界一鍛冶屋が集まる国、ベスティア共和国がある。」
「ああ、なるほど、そこなら素材はたっぷりありそうだな。」
「はははっ!だろ?」
「分かった、やるよそれ。」
……
土砂崩れは全長2キロに渡って起きていた。
現場にはオルカ達『バスタード』のメンバーと俺の6人で来ている。
「まじか…」
「これを手作業…?」
「はははっ!そのようだな!」
「さすがの『漆黒の英雄』もお手上げか?」
「恥ずかしいから、やめてくれ…」
『小鬼騒動』のあと、町の人たちが俺の事を『漆黒の英雄』などと呼ぶようになっていた。理由は簡単。黒髪に伝説級の黒狼のコートを着た黒づくめの剣士姿だからだ。まあ、他にも『暗黒騎士』とか『闇の狩人』とか恥ずかしい候補があったが全て却下した。この世界じゃなきゃ唯の『黒歴史』だ。
「まあ、土魔法使えば…いけるかな。たぶん。」
「オルカ達はデカい岩をどかしてくれ。土は俺がやるよ。」
「おう!任せとけ!んじゃ、はじめるぞみんな!」
「「「「おうよ!」」」」
オルカ達は手分けして岩をどかし始める。
「さて、俺も始めるか。『変質化・粘土』『物質圧縮』」
土砂を粘土に変え、圧縮してブロック状にしていく。
「あとは焼いて、組み上げるか。『熱風』」
ブロック状に変えた粘土を焼き煉瓦を作る。
これを袖壁と床になるように敷き詰めて行けば完成だ。
「はははっ!相変わらずすごいな!生活魔法か?これ?」
「ああ、鍛冶場を作りたくていろいろ調べたらちょうどいい魔法があったんだよ。」
「はははっ!なるほどな!」
……
結局、丸一日かかって作業は終了。片付いた街道をみた町の土木職人から熱烈な勧誘をされたが、丁重にお断りしておいた。
そして次の日、俺はガラン支部長の部屋に来ていた。
「ベスティア共和国までの護衛任務?」
「おう!王都の商隊なんだが、途中怪我人が出て護衛の数が足りんらしくてなあ。」
「護衛隊長が馴染みでな、お前の話をしたら是非にと頼まれちまった!ガハハハ!」
「まあ、報酬もデカいしな!南の街道を直した話もオルカから聞いてたからちょうどいいだろ?」
「まあ…ちょうど武器を新調したいとは思ってたから構わないですよ。」
「よし!決まりだな!出発は明日だ。たのんだぞ!」
素材探しから始まった新しい刀造り計画は新天地へ舞台を移す。
ドワーフやエルフの住む亜人の国か…
商隊の行き先はベスティア共和国の首都でもある世界一の工業都市『メルカトス』だ。




