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『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第一章 目覚め
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第13話『噂と騒動 後編』

「シド!こっちだ!」


廃坑道が見えた辺りでオルカが声をかけてきた。


「支部長から聞いたが、一人でいくのか?」

「ああ、俺一人なら狭い坑道で毒や麻痺使われても対処できるし、何がいるかわからないからな。」

「なるほどな。まあ、無理はするなよ?俺たちも駆けつける体勢はキープしてるからよ!」

「助かる。入口はあそこだけなのか?」

「ああ、そうだな。他は廃坑にした時に潰したらしい。抜けがないか今斥候が探ってるとこだ。」

「わかった。じゃあ行くよ。」

「…ん?」


「Aランクの英雄様は大層な自信だなぁ?」

「俺たちみたいな雑魚は目に入らないってか?」

「しかも、先輩冒険者にその口の聞き方はなんなんだ?英雄様は礼儀もしらねえのか?」


廃坑道に向かう俺の前に一人の冒険者が立ちはだかる。1班の『赤い牙』のリーダーで確か名前は…


「おい!ヤーソン!やめとけ!仕事中だろうが!」

「固いこと言わんでくださいよ。オルカさん。」

俺達(・・)が戦って追い詰めた獲物を苦労もせずに後から来てタダでかっさらうのに、一言の労いもねえって、俺は新人に先輩への敬い方を教えてるだけですよ。」

「だいたいよお、最初からAランクってどんな裏技だよ。みんな必死に、それこそ命懸けでランク上げてきてんのによぉ?」


ああ、なるほど。これが噂を信じるタイプか…


「そうだ!そ、そうだ!汚ねえ裏技でも使ってんだ!」

「お前!帝国の手先なんだろ!?」

「も、もしかして。この小鬼(ゴブリン)たちもお前の仕業なんじゃねえのか!?」


『赤い牙』のメンバーだけでなく2班の奴らからもチラホラ聞こえてくる。


「貴族でもねぇ新人がそんな高そうな装備買えるわけねえ!誰か殺して奪ったんだろ!?」


やれやれ…


「いい加減にしろ!!」


オルカの怒声が響く。


「シドは来たばかりの町の為に!知り合ったばかりの俺たちの為に!町や俺たちに危険がないように一人でいくんだぞ?」

「それなのに、てめえらは下らねえ噂に踊らされてんのか?あん?!」

「そんな寝惚けた奴は並べ!俺がぶん殴って叩き起こしてやる!!」


ヤーソンたちはその余りの剣幕に青ざめる。

単純な戦力ではオルカはAクラスレベル…

こいつらが束になっても勝ち目はない。


「シド!構わん!いけ!こいつらには俺から話しとく。」

「そうか、すまん。助かるよ。」

「おう!」


借りが出来たな。戻ったら一杯奢ろう。

俺は廃坑道へ入って行った。


……


中はかなり暗いな…

それにかなり臭う。卵の腐ったような、生乾きの雑巾みたいな…ひどい臭いだ。


「臭いの元は奥だな…」


粘り気のある魔力が徐々に膨らんでいる。


「『解析(アナライズ)』『調査(リサーチ)』『隠蔽(ハイド)』『夜光眼(ナイトビジョン)』…よし。」


空気汚染や罠の類いは無さそうだ。

気配を消し暗視魔法で視界を確保して奥へ進む。


……


バキッ…ゴリッ…グジュ…グジュ……グチャッ

ブチッッ……ゴリッ……バキッ…ゴリッ……



廃坑道の最奥にある資材置き場のような開けたところから聞こえる不気味な音の正体……それは。


「仲間を喰ってるのか…」

「ん?あれは……」


逃げた中位種が下位の仲間の死体を喰っている中、ヤツらの足元に魔法陣のようなものが見えた。


「やはり、何か呼ぶ気だな…」

「あの真ん中にいる奴が召喚士か。」

「だが、小鬼(ゴブリン)に召喚魔法なんて使えるのか?」

「上位種なのかもな…」


そうこうしてると、車座になり仲間の死体を喰い続けてた中位種に変化が見られた。


身体のあちこちがボコボコと動き出し、全身の関節が有り得ない方向に曲がる。やがてボンッと音をたてて次々と頭が弾けた。


真ん中にいる奴以外の頭が弾けたと同時に、どす黒い霧が溢れ出てきた…


「まずいな…」

「先に殺すべきだったか?」


どす黒い霧は召喚士らしき小鬼(ゴブリン)を完全に飲み込み、俺の後悔を嘲笑うように『そいつ』は現れた。


「グギギッ…グギャギャギャアアア!!!!」


体高は3メートルほど、分厚い筋肉に覆われた巨大な体躯の小鬼(ゴブリン)だが…


「王冠か?」


頭には骨で出来た王冠の様なもの、手には巨大な剣を携え、四肢が所々ぶら下がる生皮を繋いだ奇怪なマントと腰巻き。


「まるで王様だな。」

「『解析(アナライズ)』」


小鬼王(ゴブリンロード)

100体の同族を贄に顕現した小鬼の王。

脅威判定/A

属性/土

固有能力/眷属召喚、他種族交配


見たまんまだな…


「クンックンッ……ニクノニオイガ

…スル!」


その瞬間に俺の目の前に飛んで来た!


「!!?」

「うおっ!?」


思わず、横に飛ぶ。

凄まじい突進だ。俺の居た位置の岩が粉々に砕けている。あれは危ないな…


「ニク、ミツケタ、クワセロ!」

「グギャギャギャアアア!!!!」


剣が振るわれ壁が崩れる。このままじゃ坑道が持たないな…


「おい!小物(・・)の王様!」

「着いてこい!!」

「ヒトゾクガ、フケイ、ダナ」

「難しい言葉知ってるな!」

「コロ……ス!」


来た!

俺は全速力で坑道を走った。


走りながら通信をガランに送る。


「ガランさん。聞こえるか?今から小鬼王(ゴブリンロード)が外に出る!前線から全員退避させてくれ!」

「なに?!小鬼王(ゴブリンロード)だと?」

「ああ、確認済だ。申し訳ないが守りながらやる余裕はない。すぐに前線を下げてくれ。」


すぐ後ろからどす黒い魔力が迫る。


「見かけによらず、早いな。」

「だが、ファムに比べれば鈍いな。」


「ヒトオォ!ワガチニクニシテヤルウゥゥ!」

「どんどん口が達者になるな!お前!」


顕現した直後より、言語能力と身体能力が上がってるな。完全に覚醒させると面倒だな。


入口の光が見えた。


廃坑道の入口から黒い影が重なるほど肉薄して飛び出す。


ガランの迅速な指示で退避は完了していた。

離れた場所にオルカたちが見える、ヤーソン達はボロボロだが、残党にでも出くわしたのか?まあいい。今は『こいつ』だ。


「ガランさん、仕事早くて助かるよ。」

「おう!頼むぞ!」

「ああ、任された!」


百の命を贄に生まれた小鬼の王と対峙する。


「悪いな。一気に行くぞ。」

「『絶剣領域』!!」


シドの周りに無数の光の剣が現れ、乱れ飛び舞い踊りシドの背後で翼のようにひろがった瞬間、辺りに強大な魔力の波動が飛ぶ。


後方で見ていた者達はその圧倒的な光景に一様に息を呑む。


「はははっ!とんでもねえな(シド)は!ガラン支部長!」

「オルカ!お前でもそう思うか?後輩だろ?」

「無理無理!アレには勝てる気が全くしねえよ!」


暴言の罰にオルカ一人にボコボコにされたヤーソン達は己が喧嘩を売った相手の本気の姿とガラン達の会話を聞き、心の底から恐怖した。


……


「まずは挨拶代わりだ、燃えろ。『獄炎(ヘル・ファイア)』」


「ヒトオォオオオ……!!?」


呪詛を吐きかけた体が巨大な炎に呑まれる。


「グギャアアア!!」

「グゾォォ!ヒトフゼイガァァ!フケエェイィダァァ!」


全身焼け爛れた小鬼王(ゴブリンロード)が怒声を上げる。その足元からは亡者のような小鬼(ゴブリン)が大量に這い出してきた。

小鬼王(ゴブリンロード)が這い出した眷属をつまみ上げ喰らうと、焼けた皮膚が急速に回復を始めた。


「やれやれ、気持ち悪い上に頑丈だな。」


そういうとシドは手にしたトネリコの枝から作った木刀を握り直し構えた。


「俺の世界の剣術とファム直伝の魔法がどれくらい通用するかな。」

「行くぞ!!」


……


その戦いは戦いと呼ぶには余りにも一方的なものだった。大剣を振り上げ飛びかかる度に小鬼王(ゴブリンロード)の四肢は切断される。その脅威の再生力で無理やり繋げて魔法を放つも光の剣に阻まれ、縦横無尽に舞い踊る斬撃で肉が刻まれる。刃のない木刀が全身の骨をまるで枝木のように砕き折る。まさに蹂躙。


「グゾォォ!グガッ!グゾォォ!!グブォッ!グゾォォヒトフゼイガァァ!!」


小鬼の王は為す術もないまま呪詛を吐き続ける。


「まだ息があんのか?!タフだな。お前。」


戦闘感覚はだいぶ戻ったし、こいつの力も理解した。そろそろ終わらせないとこっちの魔力も持たないな。

醜い肉塊のオブジェになりつつある小鬼王(ゴブリンロード)から距離をとる。


小鬼王(ゴブリンロード)!」


「グガァ…イテエ…イテェエ……」


小鬼の王は濁った目でシドを睨みつける。


「これが今の俺のとっておきだ!」


シドは旅立ちの前夜に(ファム)が教えてくれた魔法(とっておき)を放つ。


「『顕現せよ。天を埋め尽くす断罪の火の矢。天より降り注ぐ神罰の炎の(つるぎ)。全てを討ち滅ぼす火焔の槍……神焔(メギド)!!』」


断罪の火は肉体を焼き尽くし、神罰の炎は魂を灰に変え、討滅の焔は小鬼の王を灰すら残さず消滅させた。








「「「「す、す、す、すげええぇぇぇ!!」」」」


その場にいた全ての者が驚愕の声をあげたのだった。


……






そして現在…







「「「「すいませんでしたあああ!!」」」」

「いや、いいよ。別に気にしてないし。」


小鬼(ゴブリン)の掃討作戦も無事に終わり、町に戻った俺たちはギルド2階の支部長室にいた。


「ガハハハ!見事に小鬼王(ゴブリンロード)と一緒に『噂』まで消し飛ばしたな!!」


「支部長の言う通りだぜ!全く最後までとんでもねえなお前は!」


俺の足元には突入前に絡んできたヤーソン達がいた。床に額がめり込む勢いで土下座中。


「だから、本当に気にしてないし。誤解がとけてくれれば、それでいいから!」


「ガハハハ!お前ら!これに懲りたら下らねえ与太話に踊らされんなよ?」


「「「「はっ…はいぃぃ!!」」」」


やれやれ…


……


宿に戻るとミアとテトがいつになく真剣な顔で待っていた。


「おかえりなさい!シドさん!」

「めちゃくちゃすごかったっす!!」


「お、おう…」


二人は立ち上がってテトが代表するように頭を下げ、ミアも続く。


「「俺たちを弟子にしてください!!」」

「は?!」

「今日、シドさんの戦いを見て二人で決めたんです!」

「俺たちも修行しっかりやるっすよ!」

「まだまだ弱いですけど、がんばります!」

「いや…でもなぁ。」

「「お願いします!師匠!!」」

「あ…いや、まあ俺の鍛錬に付き合うくらいなら。まあ、いいけど…」


「「ありがとうございます!!」」

「俺たち師匠の名に恥じない冒険者になります!」

「どんなシゴキも耐えるんで、よろしくお願いしゃっす!」


「あ、はい…よろしく…」


こうして、俺に弟子ができた。


……


その後、町に広がった俺の変な噂もヤーソン達の奮闘?で終息していったのだった……

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