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『並行世界の概念崩壊(パラダイム・シフト)』  作者: 寝兎
第一章 目覚め
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第11話『噂と騒動 前編』

「そっち行った!」

「おう!任せとけ!」


ザンッ!


「ピギィイイイ!」


「これで目標の数集まったかな。」

「よーし!『E難度依頼/角兎(ホーンラビット)の納品』完了だな!」

「うん。町に戻るか。そういや、シドさんそろそろ戻るってギルドの人達が話してたな。」

「そっかー。今回はけっこう長かったな。」

「2ヶ月くらい?Aランクって忙しいみたいだからね。」

「俺たちも早く強くなりてーなー。」

「そんな事言ってると、またガラン支部長に怒られるぞ。」

「あの人おっかねえからなー。」


獲物を担いで意気揚々と歩を進める二人組。

順調にランクをあげてもうすぐDランクの昇格試験を控えた王国最果ての町ポロコで活動中のミアとテトだ。


当初はデコボココンビの二人だったがある『騒動』を切っ掛けにシドに弟子入りし、メキメキと頭角を表し支部長のガランも認める期待の新人となっていた。


その『騒動』が起きたのは三人で登録を済ませてしばらくしてから起きた…


……



最高でもBランクはおろかCランクまでしかいなかった自分たちの住む町に英雄級とも言われるAランクの冒険者が席を置き、活動をはじめた。それは、最果ての町を震撼させるには充分過ぎる話題だった。


曰く、ドラゴンすら切り伏せるらしい。

曰く、一発の魔法で城を落としたらしい。

曰く、目に入る女は年齢問わず襲うらしい。

曰く、帝国が送り込んだ秘密兵器らしい。

曰く、死の森から人を滅ぼしに来たらしい。

曰く……


噂は尽きない。

誇張され勢いを増した噂はやがて人々の望む『偽りの真実』として完成する。


「おい、聞いたか?例のAランク冒険者の話。アイツの正体、竜殺しの魔王と死の森の魔女の息子だってよ。」

「まじかよ!?俺たちヤバいじゃねーか。」

「領主様が軍を動かして討伐に乗り出すらしいぞ。」

「町を戦場にする気か?!」

「どうする?逃げないとヤバいな。」


……


ギルドから呼び出されたシドは冒険者ギルドの2階にあるガランの部屋にいた。


「…って感じに噂が暴走してるみたいだな!」

「なんで、そんな噂が…」


ガランから俺に関する奇妙な噂が町に流れてると聞いていたが、まさかここまでとは…


「まあ、良くも悪くもAランクっつー肩書きは目立つからな!」

「何か思い当たる節はねーのか?」

「ありませんよ!」

「だろうな!ガハハハ!!」

「これは俺の個人的な独り言だがよ。」


そう区切ってガランはいつになく真剣な顔になる。


「まあ、たかが噂だが弱い奴はてめぇの都合のいい話に飛びつくもんだ。良からぬ事を企む奴も出てくるだろうが相手にしたら負けだ。」

「ギルドとして個人を庇う事は出来ねーが、俺個人としては、お前は弱い奴を下に見たりしねーし、ランクを傘に着ない気さくな奴だってのは知ってるからな!」

「ちゃんとわかってる奴もいるって事だ。誰もやりたがらねえ依頼を受けたりしてんだろ?」

「ランクてのは力だ。良かろうが悪かろうが怖がる奴もいる。相手にして倒すのは簡単だろうが、相手にしたらお前の負けだ。わかるな?」


この人なりに励ましてくれているのだろう。

声の裏に手を貸せない悔しさが見える。


「支部長。」

「あん?ガランでいいって言ってんだろ!」

「ガランさん。心配かけて申し訳ない。」

「俺にはやらなきゃならないことがある。行かなきゃならない場所がある。守らなきゃならない約束がある。」

「だから、噂なんかに負けてる場合じゃないんですよ。心配しなくても大丈夫ですよ。」


本音だった。この世界のカレンを見つけ、太刀花 可憐を元に戻す方法を見つけて無事に連れて帰る。母さんや鍔沙やじいちゃんの待つ、俺たちの世界に帰る。その為にこんなとこで止まる訳には行かない。


転移してからずっと漠然としてた目標が定まった瞬間だった。


「そうか!なら俺は何も言わん!以上だ!」

「わかりました。ガランさん。ありがとうございます!」


礼を言って部屋を後にした。


……


そして翌日、『噂』が『騒動』にかわることになる。

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