第10話『Aランクの新人』
俺たちはポロコの町の外れにある宿屋の食堂にいた。目の前には馬車で話しかけてきた二人組。
騒がしい方がミア、よく謝る方がテト。
二人とも15才で、冒険者に憧れて上京したようだ。
「ミアとテトか。俺はシドだ。よろしくな。」
「シドか!で、シドはどっから来たんだ?俺たちより先に乗ってたよな?」
「シドさん。すいません…こいつも悪気はないんです。」
「ああ、いいよ気にすんな。俺は町に来るのは初めてだから、色々教えて貰えると助かる。」
二人は何度かポロコに来てるようで、激安なこの宿屋も彼らが教えてくれた。
「出身は二人とも知らないような遠い国だ。最後に住んでたのはトネリコの森だよ。4ヶ月近く居たかな。」
「「え?!」」
二人が驚愕の目を向ける。特にミアは固まってしまった…
「どうした?」
「あ、あの…シドさん。シドさんて人族…ですよね?」
「ああ、そうだよ。見えないか?」
「い、いえ!そういう意味ではなく!すいません…」
「あの森って『迷いの森』とか『魔女の森』て村では呼ばれてて、Bランク冒険者ですら入らない恐ろしい魔獣がいる所ですよね?」
「魔女?」
「はい。森の近くで怪我とかして、血が出ると血の匂いで魔女が攫いに来るそうですよ。」
思い当たる節があるが、なるほど。いろいろと誤解があるようだな。
「まあ、いろいろと歪曲して伝わってるんだな。まず第一に魔女って言われてるのは森を守るダークエルフだ。悪い奴じゃない。第二に森で迷いやすいのは奥へ行けないようにする結界があるからだ。最後に怪我したら攫われるんじゃなくて安全な住処で治療するからだ。わかったか?」
大人しくなっていたミアが口を開く。
「あ、あのさですね。も、森の魔獣って街道とかのより強いって聞いた事あるけど。そ、そんなとこを無事に出て来るって事はシド…さんはつよいんす…ですか?」
「話し方、無理に直さなくていいぞ?」
ミアは俺が凶悪な魔獣犇めく森から来たとんでもない奴だと勘違いでもしてるのかもな。
「まあ、強さはわからんが剣術と多少魔法は使えるな。森の中は静かないい所だよ。確かに危険な魔獣も居たけどこっちが何もしなきゃ襲って来ないのがほとんどだからな。」
二人ともかなり真剣に聞いてたな…
「なるほど。シドさん。知らなかったとはいえすいませんでした。」
「すんませんした!」
二人ともテーブルに頭をぶつけそうなくらい頭を下げてきた。
「いいよいいよ。気にすんな。ところで、冒険者ギルドはどの辺にあるんだ?」
「町の真ん中くらいすね!俺らも場所くらいで入ったことはないんすよ!」
「シドさん。例の件なんですけどー…」
「ああ、一緒に行くよ。安心しろ。」
「よかったー」
「「ありがとうございます(あざす!)」」
……
「へえ。これが冒険者ギルドかー。」
西部劇の酒場みたいな外観だが、想像より小さいな。
冒険者ギルドっていうと、中にはガラの悪い奴がいて、足をひっかけたり絡んだりって感じのファンタジーものにありがちな定番イベントがあるけど、恐らくテトが心配してるのはその事だろうな。
「じゃ、行くか。」
「はい!」
「うす!」
カランカラン
ドアベルを響かせて中に入る。中は右手に受付カウンター、左手に依頼が貼られたボードがある。ボードの前にはテーブルがいくつかあり、チラホラ冒険者の姿がみえた。
「登録受付けを頼みたいんだけど。」
「あ、あとこれ推薦状です。」
出発の時、ファムからギルドで渡すように言われた紙を受付嬢に渡す。
「はい。ありがとうございますー。新規の方は青い紙、復帰引退の方は赤い紙にお願いしますー。」
俺たちは必要な情報を書き込み渡した。
「はい。ありがとうございますー」
「手続きしますのでお座りになってお待ちくださいー」
「あ、シドさん。シドさんはランク査定するので手続きが終わったら奥の部屋に行ってくださいー」
手続きを待つ間にボード前にあるテーブルに移動するとチラホラいた冒険者の姿はなくなっていた。
どうやら定番イベントはなさそうだな。
「人がまばらだな。いつもこんな感じなのか?」
「Dランク以下だと、この辺りの依頼は薬草採取とか街道警備くらいしかないですからね。」
「新規はFランクからなんすよ。」
「なるほどな。」
「新規受け付けの方ー。カウンターに起こしくださいー」
そうこうしていると、手続きが終わったようだ。
「はい。では、ミアさんとテトさんは年齢と経験値からFランク冒険者に登録されましたー」
「シドさんは適正検査を受けてからランクの決定ですー」
「んじゃ俺ら待ってるっす。」
「ああ、すまん。行ってくる。」
二人に見送られ、適正検査を受けるため、奥に続く扉を開けると
そこは建物裏手の訓練場だった…
進んだ先には一人の大柄な男がいた。
「おう!お前が適正検査の申請者か!」
「俺は王国冒険者ギルドからこのポロコ支部を預かってる。支部長のガランだ!」
見た目同様に声もデカいな…
「どうも、はじめまして。トネリコの森から来たシドです。」
「おう!シドか!トネリコの森から来たってのは本当か?」
「ええ。本当ですよ。生まれは別ですけど、4ヶ月近く住んでました。」
「そうか!なら早速始めるか!」
「よろしくお願いします。」
適正検査は自己証明に改竄魔法が使用されていないかのチェックや犯罪歴のチェックなどをしてから実技テストって流れだそうだ。
「『自己証明』」
「どれどれ…」
「!!?」
ガラン支部長の目が見開かれる。
そういや、ファムも最初こんな感じだったな。まあ、今はかなりの部分を不可視にしてるけど、全部見せろって言われたら面倒だな。
そんなことを考えてると…
「おい!お前すごいな!ホントに人族か?!」
「人族ですよ。」
「あの『守護者』様からの推薦もどうやら本物みたいだな!」
「ああ、ファムを知ってるんですね。」
「おう!現役の頃に森で世話になってな!」
「ああ、昔、迷子を助けたって聞いた事あるような…」
「ガハハハ!確かに迷子だったな!あれは本当に死ぬかと思った!」
「あの?自己証明に問題なければ、次は実技テストですよね?」
「おう!自己証明で見た内容は漏らさんから安心しろ!んじゃ実技テストやるか!」
「シド!ここにいろ!試験官を連れて来るからな!」
「あ、はい。」
そうして、現れた試験官と呼ばれるそれは案山子の姿をしてた。
「か、案山子ですか?」
「木人システムってんだ!ちと不格好だが性能は折り紙付きだぞ!」
「解析してみればわかる。つかえるだろ?」
「ええ。」
「『解析』」
「なになに…」
『木人システム』
『破壊不能効果付き能力計測システム』
なるほど、これなら確かに適任だな。
「おう!理解したか?なら、遠慮はいらん!全力で攻撃してみろ!」
「わかりました。」
……
「やり過ぎた…か?」
「ケ…ケイソ…クチュ…ウ」
あちこちから煙をあげてボロボロになった案山子。
何とか計測はできそうかな?
「ガハハハ!凄まじいな!さすが守護者様が推薦するわけだ!」
「やっぱり守護者はすごいんですか?」
「当たり前だろ!世界の聖域を守護する程の存在だぞ?勝てる奴なんて人族はもちろん、亜人や魔族でもなかなか居ないからな!ガハハハ!」
「なるほど。」
「お!出たみたいだな!」
「おお!Aランクか!まあ、納得だな!ギルドの歴史上初じゃないか?Aランクの新人なんてのは!ガハハハ!」
「よし!適正検査は以上だ!」
「何かあればいつでも遊びにこい!」
「ありがとうございました。」
無事に適正検査と登録を終えた俺は待ってる二人の元に向かった。
……




