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とつぜん、勇者がやってきてツボやタルをこわし出ていった  作者: おいしいカレー屋さん
勇者スタート
5/47

 ラランと出会ってすぐモンスターと遭遇した.


「ブルルルルゥ……」


「ん、あれはモンスター……ブルゥですね、まぁ弱いのでなんとかなるでしょう。私は後ろから援護するので前、お願いします」


 男は夢を追いかけるために一切の努力を惜しまないことがある、努力すればそれが手に入ると信じて疑わないからだ。

 今回の風の魔法が必要なのも例に漏れずその夢を追いかける為、手に入れる為に必要な行動。

 そして自らの心の傷を癒す為。


「よっしゃ、任せろ」


 正直モンスターと戦ってる暇は無いけれど、闘争心は人の奥底の感情を活性化させる効果がある。

 それに便乗でき思い出せれば御の字だ。

 ……あ。

 武器折られたんだった。柄だけどうにか……、ならないよなぁ。


「素手じゃ無理だ!」


「逃げ回ってくれれば十分なんですが。武器は、まぁこの木の棒でいいでしょう。どうぞ」


 それ俺の家の残骸じゃねえか、燃やされた上に武器にまで代用するとか可哀相だろ。

 とは言ってもモンスターもぶち切れていて他に探す時間も無いし、贅沢は言えない。

 燃えて直ぐにに武器にされてしまうなんてごめんな……最後に俺を守ってくれ。


「お、危な!」


 待ち切れず突進してきた猪型のモンスターを横にかわす。

 突然変異で生まれた好戦的で異常な生物を”モンスター”と総称。これも猪から生まれたモンスターで角が発達している種、雑魚と言えど食らえば大変な状態になる。


「そうです、その調子で撹乱して下さい。 火炎を出しますよ」

 

 火炎? あぁ、魔法が達者なのか。

 ならラランの魔法の出し方を見れば思い出せるかもしれない、魔法の出し方と使い方。手順だけでもわかればそれで儲けだ。

 魔法を唱えたラランから火の玉が飛び出し、直撃はしなくともモンスターを掠める一撃となった。

 しかし普段なら術式が浮かぶはずなのに、ラランの周辺に術式が浮かぶ事は無かった。

 見逃したわけではない、術式が浮かばない魔法だったんだ。法略と言い、高等な魔法使いにしか出来ない芸当。

 だとしたらラランは高等な魔法使いと言う事になる。そうは見えないけどな。


「ララン、今のは……」


「あっ! ……えっと、あなたの名前なんでしたっけ?」


「は? アスミだけど、名前を忘れん、なぁ゛!?」


 自己紹介している最中に横腹にハンマーで殴られた様な衝撃が走る。

 いきなりの事で完全に油断していた、モンスターの突進をノーガードで受け止めてしまった。

 そりゃ敵の方を見ていなければこうなるのは当たり前だろうに、何も考えてなかったせいで防ぎ様が無かった。余所見駄目、絶対。物事は、かも知れない運転で安全運転が大事なのです。


「大丈夫ですか?」


「わ、わかってたなら……教えて……」


 多分、アバラ二本は持ってかれた。

 いくら雑魚モンスターとと言えど「モンスター」の攻撃、目も当てる事を躊躇う大変な状態となった。

 肘擦り剥いちゃった。


「教えようとしたんですが、すみません名前がわからなくて」


「いや、気をつけてとか……危ないとか……もっとあるでしょうよ……」


「え? あぁ、なるほど。 ふふ…………、あはははは!」

 

 何の前触れも無く糸が切れたようにケタケタと笑い出した。

 面白い事を言った訳でも無いのに。


「何故笑う!? 情緒不安定か!」


「あふふ……それは迂闊でした……、先に言えば良かったですね」


「回復魔法とか無いの!? お前のせいですっげー痛いんだけど!」


「あはは! ふふ……、あぁ回復ですね……、えぇと……ブフッ! ええと……駄目です、集中出来ません。いい加減にして下さい」


「お前がいい加減にしろよ!?」


 くそ! なんて役に立たない魔法使いだ!?

 駄目だ、ここは俺一人で乗り切るしかない。

 こんな痛みなんぼのもんじゃい……。膝よ、お前まで笑うのか。

 ガクガクガクガク揺れやがって……、しっかりしろよ、頼れるのは膝しかいなんだ。

 頑張れ膝! 立ってくれ膝! お前なら出来る! 諦めるな! よし、セコンド! ワン! ツー!

 よし! よし良くやった膝! 俺の仲間はお前だけだ! 一緒にあいつを倒すぞ!


「待たせたな猪野郎……、ここからは手加減無しだ、本気で行くぜ!」


 決意と意思を固め宣戦布告の大義名分として言葉を放つも虚しく、既に猪型のモンスターはいなかった。

 いつのまにか、会話している間に逃げられていた。

 この場に残ったのはまだ燃え切っていない木のパチパチと弾ける音と、女性の切れた呼吸だけだった。

 痛みを伴ったのも、モンスターに逃げられたのも、これも、それも、もうラランのせいだ。


 その後、魔法の使い方やらなんやらをラランに教えて貰って、微かにある魔法の記憶から搾り出してなんとか一つ思い出した。運が良い事に、一番使いたかった風の魔法を思い出すことが出来た。

 術式から発動までに実践では使えないレベルで遅い事を抜けば、文句の無いレベルの魔法を文句の付け様が無い場所に撃てる事が出来た。

 放つ魔法の滅茶苦茶意に威力を抑え、少し強いそよ風程度にして、撃った先はラランの腰に巻き付けている一枚の布切れ。

 

 これがなんとびっくり、驚く事にスパッツを履いていたのだ。

 スカートっぽい衣装だから捲れると思って風の魔法使った。

 ちゃんと問題無く捲れた。

 見えたのはパンツの代わりにスパッツ履いてる女性の脚、光を受け付けない様な真っ黒のスパッツ。

 下着を盗られたって言うから、一体全体どんな常態か確認したかっただけなのだ。


 こうして実験してみてわかった事が一つある、考えても見たらノーパンで外を出歩く変態なんかいる訳無かったんだ。尻を追いかけるばかりで、知りに巻き付いている布を見ることが出来ていなかった。

 けれどこれは失敗ではない。

 次に来る成功の為の、水先案内人を務めたのだ。

 男と言う生物は、好奇心が働いてしまうと無心となり、物事を追求してしまう生き物だから。

 こればっかりは、仕方の無い。

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