これからの方針
目的があり酒場に来た。
情報を集めるのは勿論として合いたい人間がいるからだ。
あいつはここにいる、絶対にいる。飲んだくれて何かをする訳でも無く、ただそこにいるだけの人間
そいつと話し合いの場を持つ為にここに来た
「ゴロツキ、話しがあるんだが」
俺の今の顔はとても二スには見せれない、今の俺は阿修羅すら凌駕する存在だから。誰かが言った「鬼が怒っている」と。
仏を蹴破る程の怒りの精神が宿っている。
今なら勇者にも勝てるかもしれない。
「……わかってる。アスミが何を言いたいか、何を伝えたいかは既に知っている。だからその顔を止めてくれ」
「知っているならお話は早い。おかげで一文無しだ」
「すげえなあれ払えたのか、金持ちだな。でもあれは仕様が無かったんだ、高いものばかり食い荒らしやがってたんだ。俺は悪くない」
普段は払える筈も無い金額なのだが臨時収入のおかげで助かったと言える
でないと今頃町の牢獄で水分の飛んだパンをねずみと一緒に齧っている事だろう
「確かに奢ると言ったよな?」
「その言葉に驕って好き放題食べるからだ。さすがに限度と言う物がある」
「ラランについては一旦いい、代金を計算してみたらお前の酒代までこっちに来ていたがこれは何だ?」
「…………まぁこれでも飲めよ。欲しいんだろ? 情報が」
「それで酒の代金については不問にしてやろう」
逃げた事については許しはしないけど。
いい加減な情報だと許さないリストに加えてやる、鬼を身に纏った俺から簡単に逃げられると思うなよ。
逃げれば苦しみと苦痛と苦渋の感情が汝を襲うであろう。
「お話は終わった? あらお酒じゃない、飲みましょう」
ラランが隣に来て言った。
我関せずと酒場をほつき歩いていたのに飲食が出ると現れた。
「お、おぉ……ラランのねえちゃん、また会ったな……」
さすがのこの男も初めて出会った時みたいにナンパする気は起きないようで、若干顔が引きつり引いた様な声を発した。
大食いでは無く少し食べ盛りなだけです。きっとね。そう思いたい。
飲んだくれて数十分。
「まさか勇者がねぇ、信じられねえなおい」
俺は勇者の悪口を言いまくっていた。
何故俺達の所だけ被害を受けて何故俺だけ家を燃やされたのか皆目検討がつかない。
恨みを買ったとか、過去に因縁があってとか、そんな物は一切無くただの初対面であの行動だ。言ってしまえばそういう災害に会って運が悪かったですねで済む話。
済む訳無いだろ。
この事があったから俺は勇者をゆるさないリストに入れ復習する事を決めたのだ。何が何でもとっ捕まえて後悔させてやる。
「それより情報をくれよ、約束だっただろ」
「ここのポテトは絶品ね、お酒と良く合うわ」
「なぁねえちゃん、少し抑えたほうが良いんじゃねえか? ていうかお前ら無一文じゃなかったのか……?」
その通り、金は無い。俺はゴロツキから貰った酒を飲んでいるのでこの酒は勿論タダ。
だがラランの今食べている食費は知らん。自分で払うんだな、俺は知らんぞ。
「金が無いならあの噂の洞窟に行って来いよ」
「洞窟?」
「あっ……」
ゴロツキがしまった、と言う様な顔をしたのを俺は見逃さなかった。
人が会話で表情を変えるのは何か感情の起伏があった時、会話の流れ的に多分やましい事があるから。
こいつは何か隠している。
「その洞窟に何かあるんだな? 俺に教えたくない何かが」
「……無い」
「嘘を言っちゃあいけねえよ、言わないとラランが食うぜ?」
「無いといったら無い!」
強情な奴だ、俺に隠し事をしようだ何て随分と舐められたな。
手段はあるから問題は無いのだ。
「ララン、そこのメニューに最上級マットマトンのステーキがあるだろ。……こいつの奢りだ」
「あら本当? 結構男らしいのね」
「おい待て早まるな! お前らそれ値段見てから言ってるのか!?」
値段を見ているから言える事だ。
0が二つ、三つ、四つ、さぁどこまで上がるかな?
「マットマトンのお肉って初めて食べるわね」
「しっかり食え、おかわりもあるぞ」
「わかったから待てって! フォークを置け! ナイフを立てるな! …………洞窟は金銀財宝が眠ってるって噂だ……」
「金銀財宝……」
金銀財宝。宝の山。
わざわざ危険な洞窟に誘う魔法の言葉。
冒険者が洞窟に入る理由ベストスリー。
第三位、クエストの為。
第二位、ロマンの為。
第一位、宝の為。
男を狂わせる凶器の四文字。
これは期待が上がる、……がだとしたら一つ違和感がある。洞窟には宝があり、噂がこんなならず者の耳に止まる程知れ渡っているのに、なぜこいつは洞窟に行っていない?
こんな話しがあれば我先にと向かうはずでは……?
「情報が行き交う酒場でそんな話しがあれば狂喜乱舞で酒場と洞窟はごった返してるはずだ。……お前、嘘を吐いていないか?」
「…………余計な事だけ頭が回る奴……」
「本当に情報を持っているんだろうな……?」
宝は無いにしろ何かを隠しているのは確実。根掘り葉掘り聞いて全てを聞き出すまでだ。
「お察しの通り噂は広まって結構の人数が既に向かったぜ」
「その噂嘘じゃないのかよ!」
「大声上げるなようるせえなぁ。けど洞窟に向かった奴は誰も帰ってこなかったんだよ」
「人数が多いなら宝の取り合いでそれなりな殺し合いでもしてるんじゃねえの」
「それか宝を守る魔物に全員殺されたか、ね」
俺とラランはそれぞれ思った事を言った。帰ってこないなら死んでいる可能性が高いのだからこういった考えにもなる。
「二人して物騒な事言うなよ……あの洞窟今おかしいらしいんだ、今回の事から帰らずの洞窟とか言われてるらしいぞ」
帰らずの洞窟て。この周辺は弱いモンスターばかりだから帰れない状況って相当だぞ。
こんな始まりの町の近くにある洞窟で強い何かがいるってのは考えにくい、誰かが宝に近づけたく無いからってついた嘘っぱちじゃないか?
だとしたら行ってみる価値はありますぜ。
「よーしララン! 俺達も後に続くぞ!」
「クエストでお金稼ぎしに来たんでしょう?」
「そんなはした金知った事か! 一生働く必要の無い金とそれに伴い明日を見れる豊かな心を手に入れられる、言わばこれはチャンスなんだよ!」
「それと、洞窟で龍の声を聞いたらしいぜ」
「龍て、ドラゴンの事か?」
はるか昔に絶滅したと聞く伝説の謎の生物、ドラゴン。
尻尾が生えているとか翼があり十メートルはあろう巨体で飛んだりするらしいのが本で書かれている。
ただ、洞窟にそのドラゴンがいるのかというより他の事が頭で突っかかった。
「それ、誰に聞いたんだ?」
「あの爺さんに聞いた、中に入って見てきたらしい」
「帰って来てるじゃない」
ラランが言った。
何が帰らずの洞窟だよ、生還者いるじゃねえか。
ゴロツキの指差した先にはよぼよぼの拗れたお爺さん。ゴツい斧を持ち、体中傷だらけで、まさしく戦場を渡り歩いた老兵の姿だった。
「うわぁ……凄い見た目だな……」
「何だ知らないのかよ、あの人は凄い人なんだぞ。数々のダンジョン、争いを潜り抜けてきたにも関わらず必ず戻ってくる事から付いた二つ名は「いのちをだいじに(ライフソーサリー)」!」
「うわぁ……凄い名前だな……」
「ばっか! お前あの人に聞こえたらお命説かれるぞ! 俺はもう帰る! じゃあな!」
何かを恐れて凄い勢いで走っていった。
しまった、やりやがったあいつ。
「待てここ会計どうすんだ! ララン! あいつを魔法で焼いてくれ!」
「ここじゃ無理よ、法に引っかかるわ」
「何やってんだよ国王! 何のための法律だ!」
国法第十一条。 人に向けて魔法を唱えてはならない、治癒目的ならばこの法は適用されない。という法がある
国法第二十三条。 物資との引き換えに代金の支払いは必ず行わなければならない。という法もある。
つまりあいつは今をもってして犯罪者だ。
「そうだ! 犯罪者になら魔法使ってもいいんだよな!?」
「まだお店の外に出ていないのだから犯罪者じゃないわ、かと言ってお店を出られたら魔法は届かない。追いかけるならここの支払いを済ませてからでないと私達が罪人よ」
「何だって!? どうすんだよ俺達一文無しだぞ!?」
「お金は誰かに借りて今すぐ抹殺しに行ったほうがいいわね」
こんな集会所で金を貸してくれる阿呆がいるかよ!
店のスタッフに通報して国に任せるか!? いや、だとしてもここの支払いは逃れられない。あいつに引っ掛けられたんだと説明すればあるいはどうにかしてくれるか?
駄目だった場合身に付けてる物を売ってどうにかするしか……でも道具も無エ、武器も無エ、金になるもの服しか無エ、信頼も無エ、金も無エ、悲しみ感情ぐーるぐる。
「わしが払ってやろうか?」
「え? あ、あなたは……!」
目の前いたのはゴツイ斧を持ち、体中傷だらけのお爺さん。
ライフソーサリーその人だった。