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ゆるふわ系ウォーライカーとツンデレ鋼鉄の伴侶  作者: 鞘町
4章 それは、人か否か
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71話 エンカウンター


 3000字投稿するとか言っといて4000字いきました。

 この勢いで完結目指します!





 背後から気配を感じる━━苛立(いらだ)ちの気配だ。



 テラバスが怒るのも無理はない。

 さんざん付き合わせて振り回して、挙げ句の果てに邪魔者扱いされたのだ。本当は八つ当たりしたり、舌打ちの1つでもしたいだろうが、あいつの事だから色々考えて衝動を抑えているのだろう。


 言い方こそ悪かったが、シャロラインの調子を見ていて欲しいのは本当だし、危険が及んだら一目散(いちもくさん)に逃げて欲しいのも本当だった。


 それに、テラバスの眼は探知と確答……いわば解決の魔眼だ。もしかすると窮地の際に、血路を開く道筋をも視る事が出来るかもしれない。


 彼の存在は、実は言うほど邪魔ではなく、むしろ切り札であると考えていた。それを伝えないのは、あまり能力を使いたがらない彼への配慮というか、遠慮というか……なんとなくだった。




 それでも、訂正する気や、謝る気は全くない。



 彼は、ただの人間(・・・・・)だ。

 自分のように、戦闘のためにあれこれ(いじ)られた人間ではなく、妻のようなアンドロイドでもない。


 生まれや育ちに不幸こそあれど、何の変哲(へんてつ)もない人間なのだ。

 当然、生きて幸せになる権利がある。


 あいつには待っている人が……帰りを信じている人がいる。必ずや、彼女のもとへ帰さなくてはならない。



 やんわりした言い方をしてしまえば、有事の際に彼は(とど)まってしまうだろう。だから、このくらいキツ目に言って少し怒らせておいた方が、こちらを気にせず逃げてくれると信じた。



 巻き込んでしまったのなら、(責任)は最後まで背負わなくてはならない━━━━


 そんな思いで、甘んじてテラバスの苛立(いらだ)ちを背中に受ける。


 もしかしたら、今は小さなヒビでも大きくなって……取り返しがつかなくなるかもしれない。決定的な瞬間がやってくるかもしれない。

 それでもきっと、テラバスなら分かってくれると信じている。


 …………そう信じて、前を向き続けるのだ。






  ◇


 城の中は、歩けば歩くほど不思議だった。

 氷結した床に足を取られる事は無いし、灼熱を帯びる壁は触れなければ特に脅威にはならない。そして……あっても不思議ではない妨害や罠も一切存在しなかった。



 3人は一言もしゃべらず、先頭を歩くスライプは、どこに向かうとも伝えずに歩き続ける。

 城に来たのなら向かうべき場所は1ヶ所であり、後ろにいる2人も行き先の見当くらいついているだろうと思っていたので、あえて口に出す事はしなかったのである。


 それに分岐点はなく、進む道も一本道なので迷う事なく辿り着けるだろう。



 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 そうしてごく普通に、何の障害もなく目的地に辿り着く事が出来た。


 凍りついた寒々しい景色が広がる、王の居住まう空間。

 そして、座る者を失った(から)の玉座が、3人の目の前にあった。



 しかしあるのはそれだけで、依頼主(国王)から聞いていた魔人の姿はどこにも無かった。


「……あてを、外したみたいだね」


 他に道も無かったのでエンカウント確定の場所だと思っていたが、どうやらそれは安易な発想だったようで。

 同じくここが終着点だと思っていたテラバスも、残念そうに頷いた。


 1度戻り、他の道も探そうと(きびす)を返した瞬間。




「なんだ。帰るのか」



 ━━ゾクッと総毛立つような感覚に襲われた。


 背後に感じる、早急に排除が(・・・・・・)必要な敵の気配(・・・・・・・)

 瞬間、スライプは歯を食い縛り、振り向き様に槍を投擲(とうてき)しようと振りかぶった。


 力強い左足の踏み込み━━後は手を放し渾身の一撃を投げつけるだけ……なのだが、槍は手から離れる事なく、叩きつけられるように床へと穿(うが)たれた。

 氷を割る音をたて、氷と床の細かい破片がパラパラと散らばっていくのと同時に、ギィィィィンと槍が反動する音が響いた。


 思い切りはいいのに不自然な攻撃軌道に、心配したシャロラインは下を向くスライプの顔を覗き込む。

 スライプも、額に汗を浮かべながら目を見開き信じられないという表情で、床を(えぐ)った槍の先を見ていた。




 その始終を見ていた声の主は、満足そうに大笑いした。


「敵を早く討とうとするその判断は正しい。……そして、投げなかった判断も正しいぞ。久々の客は……ふむ、3人か。わざわざ横道(ふさ)いで着きやすいようにしたんだから、ありがたく思えよ。愚民ども」


 明らかに侮蔑(ぶべつ)がこもった声音に、スライプは床に刺さった槍を抜き、顔をあげその正体を見た。


 玉座にどっかり座っている男は、金髪をハーフアップに束ね、鋭利な金眼でスライプ達を見据えている。そして、古い時代に着ていそうなやたらゆったりした白い衣服をまとっていた。


 そして顔立ちは、現国王陛下に似ている。


 スライプは意識的に息を1つ吐くと、睨みつけながら顎まで流れていた汗を(ぬぐ)い、唐突に現れた人物の素性の確認をした。


「あんたが、魔人ってやつ?」


 その問いに、玉座の男はつまらなそうにため息をつく。


「全く、久々に来た客人の言葉に耳を傾けてみたら……この国の祖たるオレに聞く事かそれは。……それより、どうだ? オレの子孫は。オレに似て、さぞ品性(あふ)れる、立派な王に育っているであろうな?」


 後半は期待しているような、わくわくした口調をしてくる自称建国の古代王。


 瞬間、3人の表情が抜け落ちた。

 思い出すのは、服を脱ぎ散らし開放的な姿になっていたあの王の事……慌てふためく王と、怒る側近の姿だったからである。


 急に表情を変える3人に、どうした? と古代王は首を傾げた。


「いや、別に……」

「玉座の隣で全裸になってるような人でしたよ?」

「どちらかというと、側近の方がしっかりしていたな」


 口々に子孫(現王)の実情を話していく。

 それを聞いた古代王は、玉座から乗り出すようにわずかに腰を浮かせた。


「なにぃ!? シラルガン(あいつ)の子孫がか! ……クソッ、どこでだッ、どこで血を間違えたッ!」


 魔人……もとい古代の王はギリッと歯軋りをする。

 なぜか自身の子孫の現状より、側近の子孫の現状の方にショックを受けていた。



「はあ……そっか……。アホなやつはいつまでもアホではなかったか……。ところでお前、何か感じるもの(・・・・・・・)はないか?」


 再度椅子に腰を落としながら、王は鋭い眼光をスライプへ注いだ。正確にいうと、スライプの「目」に視線を向けている。

 不敵に笑う古代王に、スライプも好戦的な微笑みを返した。


「ああ、全くどうしてだろうな……懐かしい(・・・・)と感じてしまったよ」


 スライプは目を細め笑う。

 右目が青、左目が紫という虹彩異色症(オッドアイ)。物心ついた時からこうだったので気にも止めていなかったが、本当に小さい頃……赤ん坊の時の写真は両目とも青色だったのは印象的(しょうげきてき)でよく覚えている。


 王はスライプの事情など知らぬはずなのに、彼を(あわ)れむようにため息をついた。



オレのせい(・・・・・)で左目が変色してしまっているな。昔は両目とも、さぞ綺麗な青色だったろうに」

「……別に、あんたのせいだけじゃないぞ。それに気付いた時からこうだし、僕にとってはこれが普通だ」


 血液の入れ替えなど、意図的に戦闘特化型人間を作ろうとしていたハーテリア家のお家芸だ。拒絶反応や健康被害は特に無いし、(いじ)られた以上どうする事も出来ないので、スライプは黙って受け入れていた。


 ……まさか、こいつのも入っていた(・・・・・・・・・・)とは思ってもみなかったが。






「さて、そろそろ本題に入らせてもらうよ」


 ここへ来た理由は、婚約者へこの城をプレゼントしたいという国王直々の依頼があったからである。国王のご先祖さんと呑気(のんき)におしゃべりしている場合ではない。


「僕達はあんたを追い出さなくちゃ帰れないし。是非、早急にご退去願いたいんだけど……」


 出ていけ、と言われた古代王は不快そうに顔を歪めた。


「どんな理由でここに来たかは知ったこっちゃないが、お前達の話を聞く限り、しょうもない理由なんだろう。…………ここは、オレとあいつが最後に過ごした場所だ。誰が何と言おうと、この場から去る気は無い……!」


 そう言って立ち上がると、おもむろに両手を広げた。



 ━━突如、強烈な爆風が空間を包んだ。その風はやがて雪や氷を交えて荒れ狂うようになる。


「ぐ…………ッ!」


 スライプとテラバスは腕で顔を覆い、腰を落とし突風をかろうじて耐える。風や寒さの影響をさほど受けないシャロラインは、敵の動きをじっと凝視していた。


「オレは王族だった。将来の王でありながら、突如宿った精霊のせいで城から追い出され、やがてスラムにまで追いやられた。その憎き王族へ復讐するために、オレは力をつけた━━!」


 氷雪を伴う風は、王の感情と同調するように、さらに吹き荒れる。


「そして、かつて腕に宿っていた精霊は……何百年経とうとオレに力を貸してくれる……!」


 スライプは腕の隙間から、それが作られるのを見た。

 吹き荒れていた暴風が弱まったと思いきや、氷雪風が王の腕に凝縮されていく……そしてその手に収められたのは、氷で造形された一振りの剣だった。


 古代王は数度(くう)を切ると、氷剣の切っ先をスライプ達へ向けた。

 それと同時に、再び風は狂いはじめる。

 室内だというのに吹き込む突風は、肌を撫でるだけで皮膚を切り裂いていきそうな、本物の怒りの冷気だ。


「やれるものなら、やってみせろ……」


 怒気がこもった一言で、火蓋が切って落とされる。


「…………」


 スライプは、冷気に当てられ少し凍りついた銀槍を構える。

 そして無言で、久々の上物(じょうもの)だといわんばかりの舌なめずりをした。






 次回も頑張ります

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