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ゆるふわ系ウォーライカーとツンデレ鋼鉄の伴侶  作者: 鞘町
4章 それは、人か否か
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64話 犯罪と享楽と永久発展の王都


 いよいよ出立の日を迎え、スライプは意気揚々とテラバスの家を訪れた。

 ただ人を訪ねに行くだけとはいえ、戦闘(トラブル)が無いとも限らない。有事に備え長槍を装備し、共に歩くシャロラインも、メイド風衣装から戦闘ドレスに装いを変えていた。


 そんな彼らに巻き込まれたテラバスは、いつも通りのジャージ……では無かった。



 テラバスは赤黒いような色合いの、ロングジャケットを着ていた。

 中には薄手の黒のインナーと、下は黒のジーンズという……何とも黒々した格好であり、髪もセットしているのか、心なしかスッキリして見える。


 そんな中、首から下げたゴーグルが、唯一いつも通りの装備であった。


 服装に無頓着な、彼らしくない出で立ち……急にいい男感を(かも)し出すようになった幼馴染に、スライプは少し動揺した。


「ぅえっ、どしたのその格好」


 作業着かジャージ姿しか見たことが無いスライプは、どういう風の吹き回しかと、つい(いぶか)ってしまう。

 テラバスもそれを感じているのか、少し笑い腕組みしながら答えた。


「せっかく王都に行くんだ。ルーズな格好は悪目立ちして恥ずかしいだろ」

「それが、ジャージでデートに行く奴の言う事かね……」


 エリアと会う時も、是非それで行ってくれと心底思った。

 何だかんだで楽しみにしていたのだろうか……やたら気合いの入っているテラバスを横目に、話題は変わる。


「カルスは連れていくのか?」

「いや……せっかくだから大きい街でも見せようかと思ってたんだけど、本人が嫌がってなぁ。無理強いするのもよくないと思って、エリアにお守りを頼んできた」


 王都に嫌な思い出でもあるのだろうか……。テラバスは持ち主として気になったが、踏み込む事はしなかったらしい。


「そんで、王都まではどのようなルートで?」

「徒歩と馬車で地道に移動するしかないな。……最近は魔法でひとっ飛びだったから、なんか面倒くさいな……。アンジェの魔法でどうにかならんのかな?」


 最近、長距離移動が多かったものの、転移魔法や結界魔法のショートカットなど、比較的楽に移動出来ていた。

 いざ本来の移動手段となると非常に億劫であり、王都行きを焚き付けたアンジェスタを頼りたくなる。

 ……といっても、その本人はここにいないのだが。



「そういや……『来る時は自力で来てね! 私は転移魔法苦手だし、私の欠点は不測(・・)……。不測の事態(・・・・・)とかの不測ね! 後は言わなくても分かるわね!』って言われたな……」


 テラバスの言葉に、スライプは少し青ざめた。


「……大人しくゆっくり行こう……」


 今思い出すと、アンジェスタの魔法はたまにとんでもない方向に飛んでいく事があった。それは、アンジェスタの欠点である『不測』からなのだと気付く。

 そんな欠点を持つ彼女が、ただでさえ事故が多い転移魔法を使うなど、恐怖以外の何物でも無かった。

 四肢切断どころか全身ミンチにされそうである。


 安全に転移魔法を使える人物……エルジーナも思いついたが、さすがに迷惑だと思い()めた。

 まずは馬車が出ている大通りまで、3人は歩を進める事にした。



  ◇◇◇


 歩きと馬車移動を繰り返し、疲労でへとへとになりながら移動すること5時間。ようやく、王都らしい光景が映ってきた。


「おおーっ! 電車だ! シャロ、電車だよー!」


 馬車に揺られているスライプは瞳を輝かせ、線路を走る箱形の乗り物を見た。

 嬉しそうな声につられたシャロラインとテラバスも、王都を走る電車を見る。


 馬車とは比べ物にならない人数を乗せて走る鉄の箱……路面電車は、ここ王都でしか見られない乗り物であった。

 アンドロイドが普及しているなら電車も国中に広まってもいいはずなのだが、この(さい)の王国、アンドロイド研究に金をかけすぎて地方に線路を伸ばす余裕が無いのである。


「早く3番街(うち)にも来ないかなー?」

「しばらくは無理だろ。この国何気(なにげ)に貧乏だから、作るとしたらもっと税金取られるぞ」


 アンドロイドに関しては、十分に発達し普及している。それでもアンドロイド研究に国庫金の大半を使っているのには、もう一段階の発展があるからだという。

 それが、サラスティバル曰く、『アンドロイドの人間化』であった。

 当然、これは密かに研究されている事であり、()わば国家機密。スライプ達と国の中枢を担う……それもごく一部の人物しか知らないのである。


「そのぜーきんの使われ方がなぁ……。他の人にバラすと叩いて燃やして凍らせて、さらに過去ごと消すって言われてるからね」

「何がヤバいって、それが口だけじゃないってのがヤバいんだよな」


 スライプが本気を出すと『縁切り』が出来るように、至高の魔女たるサラスティバルも本気を出せば、人の存在はおろか経歴ごと灰のように『抹消』が出来るので、命を守るためにその秘密だけは絶対に守らなければならないのだ。


 サラスティバルの加虐性を痛いほど知っているスライプとテラバスは顔を見合せ、うんうんと頷いた。




 シャロラインが少々置いてけぼり状態のなか、不意に馬車の動きが止まった。


「あっ、着いたみたいだね」


 目的地に到着したので、よっこらせと立ち上がる。

 ずっと乗りっぱなしだったのでお尻が痛くなってしまい、立つだけでも少し苦労してしまった。


 いつの間にか乗客が自分達しかいないことに気付き、早く降りろといわんばかりに睨み付けてくる御者(ぎょしゃ)へ苦笑いで会釈をすると、運賃を御者(ぎょしゃ)に払い、馬車から降りた。


 スライプはじゃり……と、王都の土を踏みしめる。

 たったそれだけなのに、急に懐かしさが込み上げてきた。


「懐かしいな……! 何年前だっけ?」

「退役が18だったか……。だから5年振りか……」


 従軍していたのはわずか数年だが、ここで暮らしていた事を風景と共に思い出すスライプ。テラバスも懐かしさを感じているのか、ぼうっと周囲を見渡していた。


「さて、この後はどうする?」

「まずは腹ごしらえ! 揺られ過ぎて疲れたしお腹すいた! その後は、マルナトを探そう!」


 その名前に聞き覚えがあるような、無いような……。テラバスは首を(ひね)っていると、スライプがにこにこしながら答えた。


「キルスファイルのご当主さん。僕達の同期だった人だよ!」


 この後の行き先が決まったので、テラバスとシャロラインはずんずん先を行くスライプのあとをついていく事にした。




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