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△6九走車(そうしゃ)


「……チェエエエエエエンンジ、リィィィィィィングっ!!」


 脳からは、それ系の物質がどぱどぱ出てきているように感じる。狂騒の真っただ中にいる自分。それを少し高みから俯瞰するかのような自分。


 頭蓋骨の内部に熱血を促す脳内物質が満たされていき、それに脳全体が揺れ浮かんでいるような、そんなパーフェクトにキマった状態で僕は腹筋の奥底から叫び声を上げる。


「……!!」


 それに呼応するかのように、僕らのロボの背中側に縦列縦隊していた108体(推定)のサポートメカ達が、ふわりと離れていき、僕らのロボと、化物と化した先女郷サキオナゴウが空中でがっぷり四つに組んでいるその下方へ展開していく。


 眼下には新宿駅周辺の、無機質で雑多な建物の群れ。胸までの高さのビルに囲まれながら、怪獣との一騎討ちタイマンレスリング……そんな魅惑に溢れたシチュエーションを一瞬夢想した僕だったが、いやいやそれはあかん。


 ……戦いの場は、僕が造る。僕の「オマジュネイション」はっ、宇宙だ!!


 煩悩の数と同数のサポートメカ達は、空中で変形して、五角形の「将棋駒」然とした形態に戻る。お互いがお互いと、平面を形作るように連結し……


 60m四方くらいの正方形が、中空に浮かんだ状態で形成する。その四隅にもメカ達は散っていき、天空へ向けて屹立するコーナーポストへと変形合体、さらに変形といっていいかその機構も謎だったが、何体かのメカはそのボディを紐状にばらけさすと、3本に張られたリングロープへとその姿を変貌させていく。次の瞬間、


 ……巨大なリングが新宿駅南口上空に現れていた。


 無法なほどに色とりどりのサポートメカたちが「合体」したものであるため、統一感の無い、ちょっと目と精神に来るモザイク模様のような混沌配色だったが、形態はプロレスのリングの佇まいそのものが、現実感のなさそうな中空に鎮座していた。


 これもオマジュの力か、その正方形のマットの上空には抗えない重力が発生しているとでもいうのか、組み合ったまま、僕らのロボと半魚人型怪物は、その正方形の真ん中あたりに降下していくと、ずしりと降り立つ。


「っらああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 刹那、僕は組み合っていたロボの右腕を抜いて、左に泳いだ怪物の体を後方へと向けて渾身の力で投げ放った。


<!!>


 先女郷は思考の埒外だったのか、それとも抗えない「何かの力」がこの場に働いているのか、リングを巡るロープに向けてあっさり走らされていくと、これも何かの「力」なのか、その直前でくるりと体勢を変えて背中で受け止めつつも弾き返され、再びリングの真ん中に戻って来る。


「くらえあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 それを待ち構えていた僕は、ロボの巨体を宙に躍らせると、ケレン味たっぷりな、それでいて威力も死んでいない、芸術的なドロップキックを相手の鎖骨付近に浴びせてやる。コーナーに吹っ飛ぶ化物。


「……ノリノリやぁん、新人くんはプロレス畑のヒトなんやなー」


 一同六人が会したロボの操縦席。斜め前の「グリーン反車」フウカさんが、こうなったら私ら傍観者やな、と呟く。どこか面白がっているかのような口調で。


「え……サッカーやってた頃の面影とか……無い」


 右隣の「ピンク盲豹」沖島オキシマは、そんな感情の抜け落ちたかのような、幻滅感を滲ませたというくらいでは生ぬるそうな、温度の無い発言を漏れこぼしているが。


 チャンス到来。ここで決めてやるっ!!



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