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▲6六奔獏(ほんばく)

<そレで……対等となッタつもリか……>


 空間に響き渡るように聞こえるほどになった、先女郷サキオナゴウのビブラートがかりの低音からはしかし、パーソナリティやら人間味らしきものというのがどんどん抜け落ちてきているように感じる。


 一触即発の時は近い。


<だガ、もう貴様ラと遊ンでいる暇は無イ……私は飽いてキテいル……こノ狭い日本ニ、狭い『9×九』の盤上にッ……よって早期決着をこノ手デつける……>


 今や「五角形」の鱗がびっしりとその「二足歩行の半魚人」のような(見たことないが)巨大な体を覆いつくした、何ともふさわしいっちゃあふさわしい外見を呈している先女郷が、右腕を軽く掲げた途端、その掌に紫色をした「光の玉」が現出する。


<これハ、今まデに『対局』で屠っテきた人間どもノ『投了』の断末魔を集めタるエネルギー球……ソの破壊力は、半径1kmの全てのモのをなぎ倒すのダ……ッ>


 荒唐無稽感は僕より遥か高めであり、なおかつ小学生が考えた必殺技のような解説をのたまうものの、それが真実である可能性は残念ながらかなり高い。


 だが、みすみすそれをやらせるか。


<消エろ……ッ!!>


 何のタメも無く、地表に向けて放たれたその「紫の玉」は、禍々しい叫び声のような音を放ちながら、徐々に加速していく。


「ッカモンっ、イニシアチブ!!」


 切なる僕の願いは、何故か正誤不明の英語となって喉奥から放たれるものの、それがきっかけとなって、「ダイ×ショウギ×オー」の「運転中枢」らしきものに、僕の思考が直結した感覚を、確かに実感した。


「……!!」


 次の瞬間、こちらも凄まじい速度で急降下して「紫玉」の下方に回り込むと、自機の半分くらいはある直径のエネルギー球を両手で押しとどめることに成功する。しかし、


(……止まら……ないっ!!)


 ずるずると空中を滑るかのようにして、僕らの「ロボ」と「紫玉」の降下は止まらない。何ていう、重さだ。これが自ら負けを認め、それを宣言することによってしか終結しない、投了の重さとでも……いうのか。


 だが、それに気圧されている局面じゃあない。僕はシックスパックされた丹田の辺りに力を込めていく。自分の体重より重い負荷を、持ち上げるように。


「……!!」


 それでも上がらないか。ならば……っ!!


「……みん……なの……力を、貸し……てく……れ」


 食いしばった歯の間から漏れ出た僕の声に呼応するように、仲間たちの力の奔流のようなものが、僕の体内に流れ込んでくるように感じられる。


鵜飼ウガイィィィィィィっ!! これしきの玉、跳ね返さんかぁぁぁぁっ!! タマついてんかァァァァァァァっ!!」


 ナヤさんの素っ頓狂ながら、力が湧き出る罵倒を皮切りに、


「と金……お前の思考が私の中に入ってくるような感覚が非常に気持ち悪い。早く何とかしろ」


「モリくんの思考って……モリくんなんだね」


「ええやん、思春期男子の欲求パンパンで。思う存分、放出したらええのんちゃう?」


「合体アンド合体……それこそが男の浪漫だよ、鵜飼くん」


 あまり声援とは思えないような、それでも僕の背中を後押ししてくれるような、仲間たちの「思考」も、僕の脳内に流れ込んでくるように感じ取れた。


 僕らはひとつ。そしてまだ……拡張する余地があるってことを見せつけてやるっ!!



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