表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/69

△6五左将(さしょう)


「おおおおおっ、フロントダブルバイセップスッ!!」


 両腕を天高く掲げ上げ、上腕二頭筋を誇示するポーズを脳内にイメージした瞬間、僕らの駆る「六棋合体ロボ:ダイ×ショウギ×オー」も、それに従い、かなりの高さになった空中に浮かびながら、その巨体をみしりと軋ませる。


「……何故ッ!! 勝手に動く……ッ!?」


 困惑が声に出てしまっているミロカさんの声が、斜め後ろから響いて来る。合体した流れなのかそれもお約束なのか、各々の操縦席がロボ体内のどこをどう通ったのかは不明だが、六人を乗せたシートはジェットコースターばりの絶叫速度で驀進し、胴体部中央に集結していた。


 五角形のそれぞれの頂点に5人。そしてその中央には自らが中心、みたいな感じで悦に入っている波浪田ハロダ先輩が鎮座している。まあそこはどうでもいいんだが。


「サイドチェストっ!! アブドミナルアンドサイっ!!」


 次々とポーズをキメていくロボ。その度にボディは謎の光を発し続け、内部に意味不明の「力」が沸き起こるイメージががんがん来ている。僕の「オマジュネイション」に共鳴してくれている……っ、このまま力をため込むことが出来れば、奴……先女郷サキオナゴウへ対抗しうる力を得られるはず!!


「と金、お前か」


 そこまでだった。ミロカさんこと「スカーレット鳳凰」のスーツに包まれたすらり長い脚が伸び、ヒール状の踵部が、僕のマスクの後頭部を貫かんばかりに押し込まれてきたわけで。


 その鋭利な切っ先は、あやうく中枢に達してしまいそうなところで何とか留まるが、その恐怖感に支配されつつある僕の大脳は、イマジネイションを止めてしまっている。


 せっかく「力」を増幅していたのに……っとの切なる想いは無視され、イニシアチブは完全にミロカさんに奪われてしまったわけで、巨大ロボは一転して軽やかな体裁きで目指す相手に向かっていく。


 しかし相手は既に「黒雲」形態だ。どこを狙ったらいいのか、全くもって分からないはず。しかしミロカさんはピンクの虎が変形した「右手」に力を集めるかような動作をするや、その掌に鋭利なやり投げの「槍」のような、光る「武器」を顕現させる。「武装化鋼」……と言っていた「相手駒を武装へと変化させる技」を、いま、触媒なしで自在に操っている……っ。これもまた、「オマジュネイション」の為せるわざ、なのだろうか。


 思い切り後ろに振りかぶってから、黒雲の中心部あたりに渾身のフォームで投擲するミロカさん主導のロボ。「光の槍」は暗闇に一瞬飲み込まれたかに見えた次の瞬間、その強烈な回転が、周りに立ち込めていた「黒雲」を霧散蒸散させていく。


 すさまじいね。こういう手段もあるんだねーと、バルクアップ一辺倒で作戦を組み立てていた僕の崇高なオペレーションが、呆気なく瓦解していくことを自認する。


<……>


 青く澄み渡った空の中央に現れたのは、先女郷が変貌した「化物」の姿だった。黒・銀・金の五角形の駒を色とりどりに鱗のように纏ったその体躯はしかし、僕らのロボの三倍くらいの大きさでしかなかった。何だ。この程度か。僕にまた天啓のような「オマジュネイション」が舞い降りてくるのを感じている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ