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△6一大将(たいしょう)


 空中大決戦。言葉にすると陳腐感が否応増してしまうものの、新宿駅周辺上空には、そうとしか形容できないくらいに、臨戦態勢の大小さまざまな「駒」たちが群れて浮遊している図が確かにあるわけで。


 あいだ30mくらいの距離を取って、先女郷サキオナゴウを中心とした、その五角形物体の集団と対峙する。彼我の戦力差はざっと600対6と、見積もってみると百倍。気が遠くなりそうな数値ではあるが、僕の心は、不思議と諦めや絶望感には支配されてはいない。


 ただ、存分にやってやるとの高揚感がでんと腰を据えているだけだ。


「みんな、気合い入れていくぞ」


 口から自然について出たのは、そんな湧き上がる気合いをいい感じで抑え込んでいるような、そんな余分な力の抜けた言葉だった。やはりリーダーたる者(と自分では思っている)、最終戦への狼煙は上げたいものであって。たいして声も張っては無かったが、その投げかけた声に対して、仲間たちは振り向き、そして頷いてくれる。よぉぉぉし。


「……こいつが正真正銘最後っ!! 最後の戦いだからなぁぁぁぁぁああああっ!!」


 腹からの声をさらに被せてみた。決まった。ここ一番のキメが炸裂したのを自認すると共に、今度こそ一番槍いただき、とばかりに、敵陣の厚そうなところを敢えて選んで突っ込んでいく。


「おおおおおっ!! 『獅鷹シオウ=リーオー=翼止力としての全体奇襲攻撃』」


 ネーミングセンスは残念ながら枯渇してしまったようだが、イマジネーションの方はどばどば涌いて溢るるほどに来ている。鷹の翼を持った獅子、グリフォンのような姿へといつの間にか変貌していた僕の騎乗する「メカ」は、銀色に輝く金属の双翼をがぱりと展開すると、次の瞬間、先ほどのミロカさんの「鳳凰」よろしく、その「羽」一枚一枚を拡散させつつ放射していった。うん、技のオリジナリティも枯渇していたね。まあいいだろう、この際。


「!!」 


 放たれた「羽」は空中で僕らにも読めない軌道をそれぞれが描くと、金・銀・黒の各種敵駒たちに突き刺さっては爆散させていく。相手の着手を待つことも無く……これで決める!!


 しかし、


「おやおや、いいのかな? ここはもう君らの世界ということを忘れてやいないかい?」


 穏やかで低いが、何故かこの場に鮮明に響く先女郷の声が、少しの笑いを含んで響き渡る。何だ?


「……破片が、罪も無い人々に降り注ぐぞ? とんだ正義の味方だぁ」


 しまった。上空で破砕された駒たちの残骸が、重力に従い、地面に次々と落下している。その下には未だ避難が遅れていて泡食っている人たちがいるわけで。上がる悲鳴。だが、


「……『ゲイン=鯨飲=吸おうぜ呑もうぜ夜明けまでの=ブラックボーラー』」


 素早く地表すれすれまで下降していた緑の双球戦士、フウカさんの謎技名の詠唱は完了していたようだ。掲げた両手に漆黒の「球体」が発現したかと思うや、その「双球」は激しい振動を見せながら、降り注いでくる駒の破片を全て引き寄せ吸い込んでいく。


「……」


 少し先女郷の余裕づらが歪んだようだ。何というかフウカさんがいちばん自由だわー。水を得た鯨が如く、のびのびとした発想力に脱帽しつつ、僕は徐々に開けて来た、敵の総大将までの道を突っ走り始める。


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