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△4七猛牛(もうぎゅう)


 しかし「全員揃いぶみ変身」を噛み締めている余韻は全く無い。カラフルなスーツに身を包まれた我々6人は、撮影かっ? と、この危険な状況にも関わらずスマホを向けて来る周囲の人々の視線を置き去りに、20号を駆け抜ける。


 シャバでの戦闘は初めてだが、躊躇している暇も無い。とにかく今やることは、頭上の「次元の裂け目」的なところから、その見慣れないバカでかい図体で這いずり出て来ようとしている二次元人「歩兵」を、元いた異次元空間に押し戻すことだけだ。


「……」


 と、既に射程に入ったのだろうか、先頭を黒い翼をはためかせ疾駆していたミロカさん……「スカーレット鳳凰」が、その腰の得物を両手それぞれで抜き放ちざま、一旦、空高くへ掲げるように挙げると、一拍の時間差を置いて、左、右、左、右と、オートマチックとリボルバーを交互に投げ撃ちのような要領で射撃を開始していく。


「!!」


 その放たれた弾丸は、16ビートを刻むかのように、巨大な「歩兵」の黒いボディに叩き込まれ、その動きをくい止めている。息をつかせぬ連射。流石としか言えない。


「いくで新人くんっ、うちに続けーやでぇ」


 その出来た隙を狙うかのように、「グリーン反車へんしゃ」こと、双球戦士フウカさんは、もともとのかなりの前傾姿勢から、さらに大地を四足疾走するくらいの角度に上体を倒したまま、ぐんと加速する。その口調はいつも通りの力の抜けた自然体な声色であって、僕はその事に少し安堵と余裕を取り戻す。そして突き放されないように必死で脚を繰り出していく。


「フウカさんはそのまま『6三』まで駆けて!! そしてモリくんっ!! 『6六』から『7五』『7四』『6三』っ!!」


 沖島オキシマ……「ショッキング=ピンク盲虎もうこ」は、やはりそのキンキンのアニメ声を改める気は更々なさそうだ……変身すると視界を奪われることもあって、ナヤさん……「イエロー猛豹もうひょう」に手を引かれての後陣だが、その「指示」は的確この上ない。


 その指示通りに、フウカさんの過ぎ去った軌道から左に逸れた僕は、別角度から敵の「歩兵」目掛けて飛び掛かっていく。そのままいびつに張り巡らされている「白線」で囲われた「枡目」を、坂のように駆け上がると、目指す目標が間近に迫ってきた。


<……!!>


 図体のでかさも相まって、フウカさんの真っ向突進は何とか受け止めたようだが、所詮は「歩」。斜め右が……お留守になってるぜ!!


「おおおおおっ、『リーオー斬』っ!!」


 技名を叫ぶ必要は全くないのだけれど、嘉敷カシキ博士により没とされた僕のトゥルーネームの痕跡をっ……心が残したがっているんだっ……!!


 右手首を左手で掴み、左肩の方に引き寄せる予備動作の後、左手を離すとともに、反動をつけた右手刀で眼前の敵を切り裂く。


 いかな堅牢な外殻を持とうが、巨大な体躯に膨れ上がろうが、「獅子」の一点に集約させた力を喰らって無事な「駒」はいない。「歩兵」は「右側頭部」辺りを砕かれ、黒い破片を散らばせながら、後方、「裂け目」の向こう側へと吹っ飛んでいった。


「オーケーオーケー、いいセッションだぁ、このまま相手のフィールドまで突入としゃれこもうじゃあないかぁ」


 遥か後方から、そんな間延びした金づくめの声が響いてくるが。あれセンパイいたんですね。


 後陣も後陣、「成るまでは金、成っても素飛車」という、一向に使い道の見えない「ゴールド金飛車きんびしゃ」センパイ……囮や陽動程度には使えるんでしょうか。


 詮無い思いは振り切って、言われなくとも僕らは躊躇も見せずに、時空の「裂け目」に身を躍らせていく。


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