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-4- 『誰だ?』
『ふーまくん。おはようございます』
昨日の夢と同じだ。今度は、はっきりと声が聞こえている。
しかし、声が聞こえるだけで体の自由がきくわけでもなく、意識だけがあるといった感覚だ。
『俺の名前を、知ってるのか?』
『はい……』
『誰なんだ』
『言えないです。だって、ふーまくんは思い出してませんよね?』
『……何を』
『それでは、教えたくありません』
声しかしないのに、俺の夢は強情だ。
『ヒントもくれないのか?』
『だ~め。だって、これはふーまくんが決めたことですから』
『俺が?』
『はい。だから、頑張ってください。待っていますから……』
『待っているって、言われてもだな――』
意識がグングン遠退いていき、声は聞こえなくなっていた。
目を覚ますと、何事もない天井が視線の先にあるのみだ。
今日もまた、暑い……。
夏だな。体中の湿った感触に、季節を実感した。




