-32- 『泣いた夜』
花火大会の夜。
つい、ウチは想いを言葉にしてしまった。
「ふーくんは、好きな女の子とかいるの?」
何を訊いているのか、自分でもわからなくなっている。
「……なんだ、急に」
「いーじゃん。まだ始まらないみたいだし」
誤魔化しきれない。
「だからって、異性と恋バナなんてしたくないぞ」
「つまんないな~~。ね、ホントはいるの?」
聞きたくないのに、ウチは、ホントに馬鹿だ。
「……いまは、いないな」
ホッとしている自分が、憎らしい。
「そう、なんだ」
「菜有はどうなんだよ?」
まさか、こうなるなんて思ってなかった。
「ウチ? ウチは……いるよ」
そして、自分に嘘をつけなかった。
「――! 本気か?」
「うん」
「そ、そうか……」
この驚きは、誰の為なのかとか、どうでもいいのに……。どうして、期待しちゃうの?
「あのね、ふーくん」
「な、なんだ」
ウチは、言いたかった。
もしも、これがキッカケで思い出してもらえるなら、と浅はかな妄想を抱いて、ちーちゃんのことを無視しようとしていた。
駄目なのに。また、あの言葉を聞くことになるかもしれないのに、言いたかった。
「ウチの好きな人は、ふーくんだよ?」
「……………………は?」
「だからウチはふーくんを、友達とかじゃなくて、一人の男の子として好きなの」
ドオオオオオオォォォォォンッッ!
言ってしまったことへの後悔よりも、期待感の方が大きい。
会わなかった五年間は、ウチの自制心を支配している。
「あのね、ふーくん」
「――!」
「返事、聞きたいなぁ……なんてね」
……もう、ここで玉砕してしまえば、未練は残らないのかな。
そう思っても、やっぱり、好きな気持ちに変わりはない。
あの日、初めてその想いを告げた日から、変わらないどころか、増していた。
「俺は――菜有のことは好きだ。でも、これが恋なのかはわからない。だから、答えは保留にしてくれないか?」
「保留?」
その答えは、あの時と同じで……。
「突然すぎて、答えられそうにない。だから、待ってくれないか。気持ちを整理したい」
「……わかったよ。ふーくんの言うことだもんね、信じるよ」
本当は信じたいのに、もう叶わないかなって、思ってしまいそうになる。
このまま、ウチの気持ちは、一方通行なのかも。
「菜有……」
「でも、ウチの気持ちは、そうだから……」
「……ああ」
夜、家に帰ってからゼンくんと会った時のことを訊かれても、ウチは何も考えられなかった。
どうして、あんなことを言ってしまったのだろう。
後悔からか、涙が、止まらなかった。
「うぅぅ……」
大きな声で泣けば、みんなが気付いてしまうから。
枕で声を殺すように泣いて、涙は、枕に染みついた。
その時、声が聞こえた。




