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One's Summer  作者: 新増レン
六章「駒羽田菜有」
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33/41

-32- 『泣いた夜』

 

 花火大会の夜。

 つい、ウチは想いを言葉にしてしまった。


「ふーくんは、好きな女の子とかいるの?」

 何を訊いているのか、自分でもわからなくなっている。

「……なんだ、急に」

「いーじゃん。まだ始まらないみたいだし」

 誤魔化しきれない。

「だからって、異性と恋バナなんてしたくないぞ」

「つまんないな~~。ね、ホントはいるの?」

 聞きたくないのに、ウチは、ホントに馬鹿だ。

「……いまは、いないな」

 ホッとしている自分が、憎らしい。

「そう、なんだ」

菜有なゆはどうなんだよ?」

 まさか、こうなるなんて思ってなかった。

「ウチ? ウチは……いるよ」

 そして、自分に嘘をつけなかった。

「――! 本気か?」

「うん」

「そ、そうか……」

 この驚きは、誰の為なのかとか、どうでもいいのに……。どうして、期待しちゃうの?

「あのね、ふーくん」

「な、なんだ」

 ウチは、言いたかった。

 もしも、これがキッカケで思い出してもらえるなら、と浅はかな妄想を抱いて、ちーちゃんのことを無視しようとしていた。

 駄目なのに。また、あの言葉を聞くことになるかもしれないのに、言いたかった。


「ウチの好きな人は、ふーくんだよ?」


「……………………は?」

「だからウチはふーくんを、友達とかじゃなくて、一人の男の子として好きなの」


 ドオオオオオオォォォォォンッッ!


 言ってしまったことへの後悔よりも、期待感の方が大きい。

 会わなかった五年間は、ウチの自制心を支配している。

「あのね、ふーくん」

「――!」

「返事、聞きたいなぁ……なんてね」

 ……もう、ここで玉砕してしまえば、未練は残らないのかな。

 そう思っても、やっぱり、好きな気持ちに変わりはない。

 あの日、初めてその想いを告げた日から、変わらないどころか、増していた。

「俺は――菜有のことは好きだ。でも、これが恋なのかはわからない。だから、答えは保留にしてくれないか?」

「保留?」

 その答えは、あの時と同じで……。

「突然すぎて、答えられそうにない。だから、待ってくれないか。気持ちを整理したい」

「……わかったよ。ふーくんの言うことだもんね、信じるよ」

 本当は信じたいのに、もう叶わないかなって、思ってしまいそうになる。

 このまま、ウチの気持ちは、一方通行なのかも。

「菜有……」

「でも、ウチの気持ちは、そうだから……」

「……ああ」



 夜、家に帰ってからゼンくんと会った時のことを訊かれても、ウチは何も考えられなかった。

 どうして、あんなことを言ってしまったのだろう。

 後悔からか、涙が、止まらなかった。

「うぅぅ……」

 大きな声で泣けば、みんなが気付いてしまうから。

 枕で声を殺すように泣いて、涙は、枕に染みついた。


 その時、声が聞こえた。


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