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One's Summer  作者: 新増レン
四章「寄せ集めのカッコよさ」
18/41

-17- 『不自然な幼馴染』

 美味い……。

「どう? 美味しい?」

「ああ」

「よかった~~」

 相変わらず菜有に昼飯を作ってもらっているが、いつか俺が作ってやろう。

 そう思いつつも、箸は進んでいった。

『おいしそ~~』

 隣に浮かぶ昇格した千歳も、並ぶ料理の湯気を恨めしそうに見ている。あの体には燃料がいらないらしく、食べ物を摂取せずともいいらしい。

そもそも、物に触れられない以上、食べられないか。

しかし、これを目の前に食べられないのはきついだろうな。

「ふーくん、ほっぺ」

「え?」

「おべんと、ついてるよ?」

 そう言って身を乗り出してきた菜有は、人差し指で掬うように頬をかすめた。


「……はい、これ。あむ」


「た、食べるのか?!」

「え?」

 俺が言及したからか、菜有は段々と紅潮していき、耳まで赤くなった。

「ご、ごめんねっ!」

「い、いや。嫌だったわけじゃないけど……」

「え、えへへ」

 誤魔化すように笑って、菜有は話題を変えてきた。

「そうだ。今日は何して遊ぶ?」

「菜有は、そればかりだな」

「だって、結局さっちゃんの家でも予定決まらなかったし、ダラダラしてるだけってのもつまんないよ! 折角ふーくんが遊びに来てるんだもん。何か思い出に残ることしたいもん」

 確かに、このままでいいとは思っていない。

 俺達は結局、あの神社や誰かの家に集合するだけの日課になりつつある。

 勿論、あと二通、手紙を届けないといけないからな。



「そういえば、俺アイツらの番号知らないんだよ。教えてくれないか?」

「……! そ、それはダメだよ!」

「なんで?」

「だって、ウチが連絡するから必要ないでしょ!」

「いや、帰ってからの連絡とか――」

「ごちそうさま!」

 突然菜有は食器を片付け始める。

「お、おい」

「食器はキッチンに置いておいてね。ウチ、少し部屋にいるから。あ、洗い物は後でやるから」

 そう告げると、早々と部屋に戻っていく。

『なゆちゃん、急にどうしたのかな?』

『さあな。ところで、あれから変化あったか?』

『特に目立ったものはないです。胴体が見えただけで……あ、あと、さくちゃんともお話しできるようになりましたね』

『ああ。……それで、次はどっちにする?』

 菜有と善治。

『ぜんちゃんがいいと思うなぁ』

『また、覚えてるからか?』

『そうなの。昨日、さくちゃんに読んでもらった時から、ぜんちゃんのこと思い出したの』

『……どういう仕組みなんだ』


 しかし、難しいのはこれからだろう。

 昨日のおかげで、何か掴めた。咲楽が手紙を読めたのは、俺が咲楽の悩みを聞いた後だ。それに、五年間の溝が埋まった気がした。

 他の二人、善治とは連絡を取っていないから頷けるが、菜有とはずっと連絡を取り合っていた。にもかかわらず、あいつは手紙を読めなかった……どうしてだ。

「あ…………」

 考えれば考えるほどわからなくなり、気付けば昼食を食べ終えていた。



 食器を片付け、ついでに洗い物も済ませると、急ぎ足の菜有が階段を駆け下りてきた。

「どうした?」

「すぐに神社に集合だよ! みんな来るって」

 ははぁん。

 今まで誘いの連絡でもしていたか。なんとまぁ、高三の夏にこれだけ遊んでるのは俺達くらいだろう。

「それで、どうして急いでいるんだ?」

「食器洗いしてから用意するから……って、あれ?」

 俺はお礼の言葉を聞く前に居間から立ち去り、自分の準備を済ませることにした。

 その数秒後、部屋に菜有が訪ねてきてお礼を言ったのは、言うまでもない。


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