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One's Summer  作者: 新増レン
二章「思い出の箱」
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-11- 『拝啓、未来の自分へ。』

 

 一応、記憶は全て戻ったはずだ。

 しかし、解決できていない案件がある。

 それ自体を俺は持って帰り、部屋で開けてみた。すると、錆びたタイムカプセルからは手紙が五通出てきた。


「手紙しか入れるものなかったのか?」

『入れるもの決めたの、ふーまくんだよ?』

 このように、俺が思い出してから頻繁に頭の中に声が浮かび上がる。

『千歳じゃなかったか?』

『えー、そうだっけ?』

 こちらが念じれば、会話が成立する。奇妙な話だ。

 俺は適当に手紙を拾い上げる。偶然にも、それは俺のものだった。

『あ、何を書いたのかな? 無垢な小学生君は。うふふ』

「……」


 未来の自分へ

  夢を追いかけていますか? 散っているのならば、それもまた人生。

                                          瞬瀬またたせ楓馬ふうま


「何考えてんだ。小六の瞬瀬楓馬……」

『この頃から、少しばかり残念ですね』

『残念って言うな!』

「――て、あれ?」


 部屋の中には、俺しかいないはずなのに、生首が浮いていた。


「ぎゃああああああああああああああああああ!」

『な、なになに!?』

 生首が驚いている。何だ、何が起こっている!


「どうしたの?! ふーくんっ!」


 叫び声を聞いた菜有が駆けつけてくれた。女子に助けてもらうのは少しカッコ悪いが、この際関係ない!

「み、見てくれ! そこに生首が!」

 俺は生首を指さした。

 部屋の中央に浮いていて、何が起こっているのかこちらが訊きたいとでも言いたげな生首。頭にリボンをつけた黒髪の……あれ?

「何もないよ?」

「え? だってそこに、今も浮いてるだろ!」

 菜有は目を凝らして、擦って、何度も見てくれるが目視できていない様子だった。

「ふーくん、疲れてるんだよ、きっと」

「あ、ああ」

「今日は早く寝た方がいいかもね。あ、もう少しで夕飯だからね~」

「わかった……」


 菜有が行ってしまった。しかし、俺には生首が見える。空中に浮く生首と俺とのシングルルーム二人使用。あれを一人と数えていいのだろうか。

『もう、驚かせないでください』


 俺は確認した。脳に響く声と生首の口の動きがシンクロしていることを。


『俺の指、見えるか?』

 人差し指を生首に突き付ける。

『え? さっきから見え……る⁉』

 当人がようやく気付いたらしい。

『あれ? どうしてふーまくんの顔が見えるの? それに、どうして私、首しかないの? 手は? 足は?』

『落ち着け。俺の手紙を読んでから、生首千歳が見えるようになったんだ』

『な、生首千歳って……』

『つまりこうだ。理屈はどうあれ他の手紙を読んだら、お前は全身を取り戻すんじゃないか?』

 勿論、霊体だろうけど。

『そ、そうかもしれないです! 早く、片っ端から読んでください!』

「よし!」

 残る手紙のうち、二通を読んでみる。善治と菜有に当てたものだ。

『どうだ!?』

『……全然だめです』

 生首が、未だに浮いていた。

「そうか……。しかし、どうして俺の手紙だけなんだ?」

『もしかして、本人に読まれないと意味がないとか、ですかね?』

『……それもそうか。本人宛だったな』

『でも、私は手が無いから読めませんね』

「……」


 つまり、他の連中にこの手紙を渡す必要があるのか。

『でもどうする? いずれ渡すつもりだったとしても、渡し方ってあるだろう?』

『手紙の内容は、私が担当したはずです。できるだけ、一人の時に読んでほしいですね』

『それじゃあ、手っ取り早く菜有に渡すか』

『いいと思います』

 俺はもう一度菜有を呼んだ。彼女は疑うことなく健気に階段を上がってくる。

「どしたの?」

「これ、お前宛だ」

「……? ただの、紙切れ?」

「よ、よく見ろ! 字が書いてあるだろ!」

「ん~~」

 渋い顔をしている。まさかとは思うが、読めないのか?

「ふーくん、早く寝てね。あと五分で夕飯出来るから」

 そう言い残すと、悲しげに立ち去っていった。


『どういうことだ……』

『なにか、他にも条件が必要なんでしょうか? 普通のインクで書いたはずですけど……』

『……まあいい。とりあえず指標は決まった』

『え?』

『元々、これはあいつらに渡すつもりだったんだ。勿論渡すさ。だからそのために、あいつらと離れていた分の時間を、取り戻す』

『ど、どうやって?』

『さあな。俺のやるようにやる。でも、この町に戻ってきて、ようやくやりたいことが見つかった』


 夏が、ようやく動き始めた。


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