カールハーレム
翌朝俺はチームサーガと合同で森の周辺部に出発するため集合場所の南門に来ていた。
そろそろ到着時間なのに誰も来ない。
まぁ急ぐ仕事でも無いし最初から揉めたくもない。
俺はじっと門の前で立ち続けた。
待ち始めて5分位経っただろうか門にナニやら砦の様なゴツイ建物が近付いてくる。
うん疲れてるんだな、最近色々あったからな、砦は勝手に動かない、まったくこの年で神経やられちゃった?
勘弁してよ。
俺は目を瞑り幻覚を振り払う様に首を振った。
"ガラガラガラガラガ"
あぁ嫌だ砦の近付いてくる音まで聞こえ始めた。
"ガラガラガラガラガラガラキィキ~ゴドン"
あぁ等々目の前で停まる幻聴迄、チームサーガが来たら訳を言って今回はパスさせて貰おうそれが良い。
俺が幻覚と戦っていると、
「カール君待たせて済まない」
ヤマトさんの声が聞こえた。
あぁヤマトさんが着いたんだな、さぁ目を開けなきゃ、俺は閉ざしていた目を開くとそこには草食竜に引かれた砦が建っていた。
「・・・ヤマトさん」
「なんだいカール君」
「ヤマトさん達は毎回これで移動してるんですか?」
「あぁうちは女所帯だからね。」
「そうですか。」
そう言や受付嬢が言ってたっけ、このチームサーガは輸送専門なのに魔物との遭遇率が低いって。
そりゃ大概の魔物はこいつが近付いて来たら逃げるわな。
全長10メートル、全高横幅共に3メートルを超えている。
このアホな砦を引っ張ってるのは複数の草食竜、こいつを見て襲ってくる魔物は森から出れないでしょ、何で誰も突っ込まないの?
俺が砦を見ながら物思いに耽っていると、
「カール君、皆車内で待っている、さぁ行こうか!」
ヤマトさんはさわやかな笑顔で言った。
-二日後-
「ふ~今回も討伐は無理か、カール君の引きの強さに期待してたんだが、」
ヤマトさんが溜息をつきながら言うと、それに便乗するようにガールズトークが始まった。
「ねぇやっぱり大物喰いの話って眉唾なんじゃ無い?」
「駄目よカール君にそんな事を言っちゃ。」
「そうよ毎回大物に出会える訳けないんだから。」
コイツら昨日もこんな事言ってたが、俺は突っ込まんぞ~これがどれ程大がかりなボケだとしても、突っ込んだら負けな気がする。
否、あえて言おう敗けであると!
俺は二日間自分の脳内でひたすら自分を励まし続けた。
「そうだな、後一日この辺りに居て駄目そうなら一旦街に戻ろう。」
ヤマトさんの提案に女性陣が頷いた。
「そうね、どうしても野宿はキツイものね。」
野宿じゃねーし
「私は街に帰ったらお風呂入りたいな。」
この砦シャワー完備じゃねぇか
二日間この脳内突っ込みを続けてる俺としても帰る選択をしてくれたのは凄く助かる。
もう持ちそうも無い。
そんな事を考えていたら、見張り塔に登っていたナナさんの声が聞こえた。
「皆、前方の森から魔物の群れが出現、急いで!」
おっ!
此れで帰れる、俺としては大満足なのだが、この砦に喧嘩売る魔物って・・・
俺は考えながらも皆にくっついて見張り塔に登った。
俺が見張り塔から見た光景は・・・
「オークですね。」
「オークだね。」
そこには森からぞろぞろと出てくるオークの団体だった。
「ねぇあれってハイオーク?」
「それだけじゃないよオークロードもいる。」
「それもうじゃうじゃ。」
・・・・・・
間違いなくオークロードは大物だ、でもオークロードが複数体いる群れなんてあり得ないでしょ?
俺が考え込んでると、
「アイツ等の持ってる武器を見て。」
「花?あれって花だよね?」
「何か鬣を撫で付けてるのがいるよ。」
「そうね、あれなんて明らかに口臭気にしてるみたいだし。」
「意味分かんない。」
「まるで集団お見合いみたい。」
・・・・・・!
「それか~やっと分かった!」
俺の声に回りにいたガールズが一斉に振り向いた。
「カール君何が分かったの?」
ヤマトさんの質問に僕は答えた。
「アイツ等皆さんに求愛しにきてるんですよ。」
「「「はぁ?」」」
「オーク種はメスがいないんですよ。その為に他種族のメスを腹を借ります。通常はゴブリン何かが被害に会うみたいですが今回は皆さんが嫁候補見たいですね。」
「イヤイヤイヤイヤ無理だから。」
「ムリムリムリムリあり得ないでしょ。」
「ダメダメダメダメきもいから」
「ナイナイナイナイマジで無い。」
「どうするのどうするのよ。」
「僕はあれとするなら自決するから。」
最後にヤマトさんが変な事を言ったが、オークは繁殖の為に来てるのでオスはただの食べ物ですよ?
「ヤマトさんオークにとって我々男は餌ですよ。」
俺が当たり前の事を言うと皆が変な目で俺を見た。
「あ~カール君もしかして僕の事、男と思ってる?」
ヤマトさんがそう言うと、ガールズ達が騒ぎ出した。
「マジ最低~」
「これだからお子ちゃまは」
「無いわ今のは流石に無いわ。」
「カール君謝ってとにかく謝って。」
「カール君ってヒドイ」
「???」
俺が混乱してるとヤマトさんが苦笑いを浮かべながら言ってきた。
「僕は女だよ。」
「!!!!!!」
女の子、ヤマトさんが女の子、じゃあここはヤマトハーレムじゃなくて俺が夢見たカールハーレムだったの?
気づいて無かったのは俺だけなの?
幸せの青い鳥は最初から砦の中にいたの・・・
俺が感慨に浸っていると外のオーク達が騒ぎ出した。
"グゥオ~"
その鳴き声をを聞いたガールズはきゃあと可愛らしい声を出して俺の方を見た。
「カカカカール君どどどどうしよう?」
不安に怯えちゃってるヤマトさんに
「オッケーハニー落ち着いて。ハニーには俺がいるじゃないか。」
「「「はぁ?」」」
照れ屋なガールズが連れない返事をしてきたが気にしない。
だってここはカールハーレムなんだから、後は俺のハーレムに手を出そうとしてる豚を肉にするだけだ。
俺は武器を手に取り見張り塔から外に飛び出した。
豚共が俺の登場で何か騒いでるが俺の一言で静かになった。
「テメエ等何を仲良しこよしで分け合おうとしてるんだ。
寝ぼけてんじゃねえぞ。
俺の女は俺のモノ!勝ったヤツの全取りに決まってんだろ。
テメェ等全員生姜焼きにしてやるよ!」
カール少年が叫びながら目の前のオークに斬りかかるとその場にいたオーク達にも意味が通じたのでしょう。
砦の前ではオーク達による大乱闘騒ぎが発生しました。
勝ったオスがメスを得る。
実にシンプルで分かりやすい自然の掟。
こうして大勢の豚と一人の馬鹿による醜い戦いが幕を開けたのでした。
"ボキ、グシャ、ピギー、メキ、ズバッ、オラオラ、キシャオ"
数時間後、死屍累々の中、首のもげたオークロードの腹の上でテンションアゲアゲで吠えている馬鹿が一人
「カールハーレムの勝利じゃ~!」
一人両の拳を振り上げて騒いでいるカール君の横を一台の砦が横切って去って行きました。
中にはドン引きのガールズが六人、カール君を残して街に帰って行きました。