パーティーが組めない
ここナットゥーンの町はその人口の8割を冒険者が占める、その町で最近噂になっている人物がいる。
その冒険者は誰とも組まずソロで依頼をこなしてる。
曰く巨大なハルバートで魔物の首を撥ね飛ばしている。
曰くその冒険者は未だ十代の少年
曰くデカイ首を幾つも腰にくくり付け引きずりながらギルドに入って行く。
ほとんどの冒険者は酒の肴にこの手の与太話をする、そしてほとんどの冒険者は適当な法螺話として聞き流す。
一部の者を除いて。
「よう、坊主久しぶりだな、」
カール少年がいつもの様に首を引きずりながらギルドへの道を歩いて入ると突然声をかけられた。
男は180㎝程の身長と鋭い目付きをした見るからに堅気じゃない雰囲気を醸し出していた。
「・・・え〜と」
「オイオイ、ビーフンだよビーフン、マジで忘れちまったんじゃないだろうな。」
・・・ポンッ!
「やだな〜ビーフンさん、忘れる訳ないじゃないですか!」
「・・・坊主・・・オメェって奴は・・・」
「まぁまぁ落ち着いてよ、久しぶりです。お元気でした?」
「まぁな、お前さんにガチで忘れられてるの知る迄はな。」
「アハハハ、で、今日はどうしたんです、ガンツ傭兵隊の若頭が?」
ビーフンは崩れ落ちそうになる体を支えながら話始めた。
「嫌、一寸ばかりお前さんの事が気掛かりだったのさ。」
「俺は至極真っ当に暮らしてますよ。」
「あぁまぁそう思うのは勝手だけどもな、大部コッチに流れて来てる情報は違うんだな。」
「?」
「お前さんが弟のハルバートを貰ってくれて大事に使ってくれているのは嬉しいんだが、冒険者の中にはお前の事を巨大なハルバートを振り回して首刈りをするのが趣味だなんて言う奴等もいる。」
「・・・」
「そう言う噂が立つと益々仲間が出来なくなる。コイツは悪循環だ。分かるだろ。」
「・・・で、」
「頭がお前さんさえ良ければうちの傭兵隊に来ないかって言ってるんだ。なぁ考えて見ないか。」
「・・・ビーフンさん所の傭兵隊は活動は迷宮の中だよな。」
「あぁそりゃそうだ。それがどうした?」
ビーフンが当たり前の様に答えた。
「じゃあやっぱりムリだ。俺まだ8級だもん。」
「・・・はぁ?」
ビーフンはカール少年の言葉に理解が追い付かない様子だった。
「嫌、だから俺まだ8級だから森の中には入れないんです。」
「イヤイヤ一寸待て!お前今腰からぶら下げているのオーガの上位種だよな、そんな奴が8級な訳ないだろ。」
「嫌、ギルドのルールで一年に二階級以上は上げられないそうなんですよ。」
「あ〜!あったなそんなルール、だがあれは貴族の箔付けに利用されない為の処置だろうが?」
「あ〜俺勘当されてっけど一応辺境貴族の三男坊。」
「・・・ウソッ!」
「本当・・・」
「・・・マジで」
「・・・マジッス」
・・・・・・
「そうか、まぁ事情が事情だ一応隊長には話しとくよ。」
「ヨロシク」
この日を境にまた新たな噂が流れた、首刈りは未だ十代の8級の少年だと・・・益々誰も信じなくなっていった。
悪循環か〜自分でも何となくは分かってたんだ。
俺だって別にソロで殺りたい訳じゃない、出来れば可愛い女の子達のパーティーに入ってキャッキャウフフな冒険者ライフを送って見たい。
なのにギルドが紹介してくれる奴等ってゴツくてデカくて何か危なそうな奴ばっかりなんだもの。
それでも一応見た目で判断しちゃ駄目だと思い、一度は狩りに行っては見るけど、大概の場合向こうから断られるし・・・これじゃまるで俺に問題が在るみたいじゃないか・・・ハァ
実際の所ギルドとしてはカール少年にパーティーを組まそうと努力はして要る物の中々合う人材がいない。
何度か紹介して組ませても見たが、大概のルーキーは自分の実力を過大評価しているか精神的に問題のあるやつばかり、その上一度狩りに行くとカール少年の闘い方に度肝を抜かれ、その殆どが相手から断りを入れてくるか、狂信的なカールファンになってカールさんと組めるだけの実力を付けてくると行って無謀な狩りをおこない二度と帰って来なくなる。
こんな事が続きギルドとしてもカール少年の対応には困り果てていた。
実力実績共に5級にあげれるが如何せん経験年数の壁はいかんともしがたい。
カール少年だけ特別扱いすれば必ず他の貴族からも同じ扱いを望む声が吹き出すだろう。
ギルドとしては、出来れば二年ばっかし旅にでも出て時間調整をして欲しい位に思っていた。