冤罪
「冤罪とは、無実の罪、濡れ衣、詰まり今の私の状態である。」
「な〜にが冤罪だ、街の代官ボコボコにした挙げ句、馬車まで曳かせるって普通なら死罪だぞ。」
「まったくだ、お前の場合、街からの特別指定依頼が掛かってたゴブリンライダーの群れを全滅に追いやったから入牢30日と鞭打ち10回で済んでるんだぞ。」
「クソ〜牢番二人掛かりとは・・・ 大人は分かってくれない。」
カール少年は現在牢屋の中で牢番の二人がかりで代わる代わるお説教を喰らってる真っ最中でした。
こうなったのも全部あのクソ親父が悪いんだ。
今回の一件によりカール少年の身元が調べられその結果辺境貴族の三男坊と云うことが判明した。
本来であればいくら三男坊と云えども貴族は貴族、身元が分かった段階ですぐに釈放されるはずだったが、連絡と取った父親であるはずの男爵から死にさえしなければ厳しく罰してくれとの知らせがあり代官と裁判官の話し合いの結果今の状況に落ち着いたのである。
「クソ〜いつか絞める、ガルルルル〜」
何処から見ても見事に負け犬の遠吠えだった。
-1ヶ月後-
ビシッ・・・7・8・9・10回 ビシッ!
冒険者カール二度とこのような事にならぬ様に・・・それではこの者を解き放て。
"ドサッ"
クソ〜痛って〜な、容赦なく叩きやがって、
「月の明るい夜ばかりじゃないぞクソが覚えとけよ!」
などと三流の悪役のような台詞を呟きながら、釈放されたカール少年は傷付いた身体を引きずりながら街中を歩き出した。
取りあえず身体を休める場所が欲しい。
そう思ったカール少年はとある建物の中に入って行った。
「と云うことで休ませてくれ。」
「ふざけるな、ここは冒険者ギルドであって宿屋じゃねぇ、休みたければ宿屋に行け!」
頭の血管がキレそうな程真っ赤な顔をしたギルマスが怒鳴りつけた。
「落ち着けアナ〜・・・」
「ゴーモンだ!」
きれいに被せながら突っ込みを入れて来た。
「うん、サスガだ。」
一体ナニがサスガなのか分からないがカール少年は満足そうに頷いた。
「今日はゆっくり休憩するためにもこの前のクエストの依頼料を受け取りに来たのだ。」
「それならそう言え、まったく。」
ギルマスはブツブツ言いながらそれでも受付の職員に命じた。
「オイッこの馬鹿の報酬を持って来てやれ。」
「ハイッ!」
受付の職員が已に用意していたらしくすぐに袋を渡された。
「クソガキ、さっさとギルドカードを寄越せ。」
カール少年が職員にカードを渡すと、職員は受け取ったカードを机の上に置いてあった読み取り機に差し込んだ。
「よし、これでお前さんは9級冒険者だ。」
「えっ? 俺まだ1回しかクエストしてないんですけど?」
「仕様がないだろ、お前さんが殺った相手が指定依頼だったんだから、俺だって嫌だよ、ずっと10級のままこき使おうと思ってた奴の級を上げなければならないなんて。」
「ほーそんな風に思ってたのかケツの穴の小いせぇ野郎だなクソコーモン。」
「コーモンじゃねぇゴーモンだ!まったく通常の依頼だったら時間切れで契約無効になってる所だ。クソガキ次からは依頼達成したらさっさと交換に来い。」
「来たくったって冤罪で投獄されてたんだから仕様がないだろったく!」
カール少年はそう言いながら袋の中身を確かめた・・・
「オイッギルマス」
「何だ、用が済んだらさっさと出てけ。」
「袋の中に銀貨6枚しか入ってないんですけど。」
「あぁそうだな。」
「そうだなじゃねぇよクソギルマスが!」
そう言うとカール少年はギルマスに襲い掛かった。
しかし一瞬でギルマスによって取り押さえられてしまった。
「こうなると思ったゆえワシがお前さんの対応をしたんだよ、まったく予想通りにも程があるわい。」
「放せ、暴力反対!」
「やれやれ、どの口でその言葉をほざくんじゃ、暴れず話を聞くと約束すれば離してやる、どうする?」
「・・・する。」
カール少年がふて腐れた様子で返事をするとギルマスはゆっくりとカール少年を起こして話始めた。
「先ず持って銀貨六枚の内訳じゃがゴブリン一匹銅貨10枚で30匹それに狼がやはり一匹銅貨10枚で30匹合わせて銀貨六枚じゃ。」
「安過ぎだろうゴブリン、一応指定依頼だろ?」
「ゴブリンはウジャウジャ増える上に支払いがお国だからな、まぁ料金安い分、級を上げる貢献ポイントが高い。それに同じ殺るにしても通常は討伐した獲物の部位を持ち帰って売ることで金額をかさ上げする物だ。お前さんは殺っただけで、な〜んも持って帰らなかったんだからしょうがない。」
「グゾ〜ちなみに何を持って帰えったら買い取ってくれるんだよ。」
「ふ〜そんな事も知らずに討伐に行くかね・・・云いか、ゴブリン等の魔物は心臓の横にある魔石と云われる石が売れる。
狼等の獣は皮だな、まっ、そう言うことは依頼を受ける時にはキッチリ聞いてから行け。」
「・・・分かった。」
カール少年は幾分落ち着いた様子で返事をした。
「それとな、お前も早く仲間を作れ、そうしなければ手に入れた素材をみすみす捨てて帰る事になるぞ。」
「仲間か・・・考えとく。」
そういってカール少年はギルドを出て行った。
貨幣
1銅貨→10円
1銀貨→1000円
1金貨→10000円
1白金→100万円
こんなイメージで書いております。