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ポケットに缶。(それとマネーを忘れずに)

 通学路のユカリヨさん。なんか怪談で話されそうな題名だな。トイレの花子さん的な。


 トイレの花子さんは確か「花子さんは、いつも筋肉隆々で、床に足跡を作るほどパワフルですが、便秘なのでいつもトイレにいます。」っていう冒頭から始まる青春トイレコメディだった気がする。


 じゃあ通学路のユカリヨさんは、「ユカリヨさんは、草の能力で、よく見ると整った顔をしていますが、そのユカリヨさんはいつも通学路で獲物(ニンゲン)が来るのを待っています。」って感じになりそうだ。超ホラー。



「おはよ、ゆかり」


 そんな事を考えていると、グラ子が爽やかにユカリヨさんに挨拶した。そんなグラ子の方が井浦にとってはホラーだ。逃げて! ユカリヨさん!



「おはよう。珍しく井浦君達と一緒にいるんだね」


 だがユカリヨさんは和かにホラーに立ち向かう。そうか! 奴にとってはグラ子などホラーでも何でも無いのか! じゃあグラ子をホラーと感じている俺は一体何なんだ? 井浦だよ!



「うん。誰かさんをわざわざ注意してあげる為にね」


 グラ子がこっちを見てる。ドキドキしちゃうなぁ。具現化ホラーに睨まれているという意味で。



「誰かさんだよ。朝からグラ子がなんか言ってきたけど、あれは注意してくれてたのかぁ〜。知らなかったなぁー」


「ハハハ....」


 俺は、苦笑するコウキの影に隠れて歩きながら言った。

 オラァ、かかってこいや。あれだぞ?コウキくんが雷帝召喚しちゃうぞ?



「ならもう一度注意してあげる。今度はもっと井浦が注意って分かるようにね」


「すんませんグラ子さんの注意はこの胸に刻み込んでありました!」



 危機回避。一瞬重力がやばかった。



「そう。残念」


 え?何が? 何が残念なのよ? と、言いそうになったが止める。その事実を聞いてしまう事自体がホラーだ。(確信)

 そう思いながら俺はポケットに手を入れる。



「何を注意したの?」


「爆発事件を起こしたこと」


 ユカリヨさんの質問に、グラ子が答えた。



「....ああ...............」



 ユカリヨさんは苦笑をして井浦を見てくる。そうだよ、昨日の爆発事件の事だよ。



「....ニュースでやってたね」


 みんな見てる朝のニュース。見てないのは俺だけしょぼん。見る時間がなかったのだよ。



「不思議な現象の原因ってやっぱり井浦くんだったんだ?」


「井浦くんの缶が原因。井浦くんは悪くない」


「同じ気がするけど....」


 全然違う全然違う。イモリとヤモリとタ○リさんくらい違う。



「この世界の悪い事は全部井浦が原因」


 まじかよ。



「やめてよグラ子さん。ガチで実話になりそうだから」


「実話にはさせないよ」


 コウキくんがかっこいい事を言う。つまりコウキくんはかっこいい。



「実話になりそうだったら私が潰す」


 グラ子さんはホラーな事を言う。グラ子は超ホラー。某ホラー映画の長い黒髪で顔が隠れてる幽霊くらいホラー。



「何か失礼な事を考えてる?」


「いいや全然」


 グラ子はたまにサイ子になるから、さらに恐ろしい。



「........」


 うわぁ、井浦、グラ子ちゃんに見られてるぅー。ドキドキしちゃうなぁ。サイ子パスに睨まれてる的な意味で。



「井浦くんもこの二人と幼馴染みなの?」


 ユカリヨさんが聞いてくる。



「幼馴染みっていうか、腐れ縁みたいなもんだな」


 小さい頃、グラ子がまだ制御しきれていない重力攻撃を俺にやってきて俺は毎日潰れそうになり、そのせいで身体が無駄に丈夫になったりしたが、あの頃のグラ子はまだ可愛かったなぁ。



「早く切れて欲しい縁ね」


 それが今ではこれである。これじゃあグラ子じゃなくてグレ子だ。絶賛反抗期中なのかな?



「そんなこと言うなよ、お隣さん同士なんだろう?」


 コウキくんはそもそも、滅多な事が無い限り人に向けて能力を使ったりはしていない。イケメンだ。イケメンがいる。



「そうよそうよ。コウキくんの隣にさっさと引っ越したいな」


 あっ、同意したのにその後つい本音が出てしまった。



「その前にくたばって」


「あらやだ!グラ子はどこでそんな言葉覚えてきたのかしら! 井浦くん悲しいわ!」


「井浦を見てたら覚えた」


 井浦には、くたばれっていう言葉を覚えさせる能力が開花しちゃったのかな? 超いらねぇ能力だなオイ。初期の俺の能力くらいいらねぇ。



「....本当に腐れ縁なんだね」


 ユカリヨさんは苦笑しながら言う。



「そうだな。でもコウキと井浦の縁は腐って無いし腐らないぜ」


「そうだな」


 ただコウキと井浦の縁は腐らなくても、腐女子は生み出されていく。腐女子ホイホイって呼ばれちゃいそう。



「そうなんだ。いいね、そういうの。井浦くんは、私が持っていないものを沢山持ってるんだね」


「当たり前だろ?俺が持っていないものをユカリヨさんは持ってるんだからな」



 何持ってるかは知らないけど。


 草の能力か。草生やす能力ってネットだったら笑わせる能力って意味になるな。面白い面白い。



「そうだね、そうだった」



 校門が見えてきたな。そういえば今日は俺が日直だったな。



「そういう事だ。それとグラ子さん、今後はもっと自重するんで爆発の件は許してください」


「....次やったら潰す」



 まじかよ。次はどうやって逃れようか。まぁそれはその時考えよう。



「じゃあ俺は日直なんで先行かせてもらうぜよ。ではまたよろしく!」


 そう言って俺は先に校舎へ向かう。





 報酬の話?ああ、さっき俺が一方的に終わらせたよ。


 俺がポケットに手を入れた時、グラ子がユカリヨさんに喋り終わったタイミングで、幻聴缶を作って、ユカリヨさんにだけ俺の声を聞かせたのだ。


『突然だけど井浦幻聴だよ。昨日の報酬は五万円って事で。詳しい話は昼休みに西校舎の屋上でしよう。それとこの事は昨日の事も含めて秘密でね。ではまたよろしく!』ってね。





 あ、それよりも今は早く日報取りに行かないと、今日もピッ○ロ....じゃなくて八頃ティーチャーに怒られちゃう。


 そう思いながら俺は下駄箱に外履き(サンダル)を置き、俺には上履きなんてものは無いので来客用のスリッパを履くのだった。


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