出動、特殊缶部隊 (団員は井浦のみ)
「.......さて、どうしようか」
俺は、奴等の本拠地である熊谷商業の貿易用倉庫を一定の距離の場所から眺めているのだが、ある問題があった。
熊谷商業の貿易用倉庫は、学校の体育館程の大きさで、周りの貿易用倉庫と比べると一回り大きいのですぐ見つけられたのだが、俺が見つけると同時に、ユカリヨさんが連れ込まれていたのだ。
『この娘、中々良い身体してるっすねぇ。やっちゃいましょうよ?』
『それは後だ。それよりもまず大麻草を出してもらう。』
『嫌。出さない』
盗聴缶から、団員Aの声と炎の能力の奴の声、そしてユカリヨさんの声が聞こえて来る。中にユカリヨさんが居る以上、爆発缶を蹴り込んで怪我をさせたら、グラ子にシバかれる。
かと言って考え無しに乗り込んだら、返ってユカリヨさんが危険になるかもしれない。
『威勢の良い娘だな』
『助けに来てくれるもん!』
いや、助けたいとは思うけど、どうしようか悩んでるんですよ。警察呼ぼうかな。警視庁特殊能力課総長の瀬田さんに連絡しようかな。しないけど。したらしたでもっと面倒。
『誰がだぁ?あぁん?もしかして昨日の奴か?』
『そうよ』
そうなんですか。ところで昨日の奴って誰なんでしょうね(汗)ワカラナイナァ。
『そうか。じゃあケータイでそいつを呼べ。あいつには鼓膜のお礼をたっぷりしてやんなきゃなあ!』
鼓膜のお礼って.......誰にするんでしょうね。
『いいわよ。後悔しない事ね。』
断れよ! そこは「だが断る!」って言うのが普通だろ!
「わんちゃん♪ ちゃんちゃん♪ ねこちゃん♪」
ポケットに入っていた俺のスマートフォンが着信音を鳴らす。俺は、盗聴缶を持っていない方の手で俺はスマホを手に取り、
電源を切った。
『おかしいな。コール鳴ったのに通じなくなっちゃった』
ソレハカワイソウデスネ。誰だよ、電源切った奴は。顔が見てみたいね。きっと冴えない顔してる奴なんだろうな。
『....そうか。もう一度かけてみろ』
........
『ダメ。繋がらない。』
『....』
.....
『....』
『もう一度かけ「グシャ」
盗聴缶を握り潰した。悪意は無い。無意識にそうなってた。
............
........よぉし、爆発缶。
俺は奴等が居る倉庫に近づき、爆発缶(小)を出す。多分この缶の中には火薬やら不思議物質やらが詰まっている。指パッチンで爆発するし。
そして倉庫の正面にある、シャッターに爆発缶を置く。
それと他の缶も色々な所にセットしよう。
....よしOK。後はこいつらを発生させてユカリヨさんを救出するだけ。んじゃ行きます。逝ってらっしゃい!
俺は指をパチンと鳴らす。
チュドオオォォォン!!!!
爆発缶は一瞬輝き、それから打ち上げ花火が暴発したような音が鳴り、地面が揺れる。
『何だ!何があった!』
『正面のシャッターが爆発しました!』
『そんな事は知ってるんだよ!』
中からそんな声が聞こえる。
そんな中にいる人たちに朗報!まだ終わってないぜ!
シュウウゥゥゥゥ
爆発により大量の煙缶が発動。今度は視界が悪くなる程度の濃さで、持続性があるもの。つまりだんだん前が見えなくなっていくのだ。
『何だよこれは!』
『煙です!』
『んな事は知ってんだよ!』
そろそろ幻覚缶も発動する頃だ。
俺は銀色の鬼の仮面を付けて、爆発により空いた穴から進入する。
中に入ってみると、煙はある程度充満していた。そして、ユカリヨさんは中心にある柱に縛り付けられていた。
それと中にいた団員達は、まるで恐ろしい者が沢山入って来たような目でこちらを見ている。使徒でも襲来してきたのかな?
はーい、ここで幻聴缶入りまーす。
「う、うわぁあああ!!!!」
団員達は逃げ出したり、ただ座り込んでしまっている者もいる。咆哮でも聞こえたのかね? 井浦くんには聞こえなかったよ。
俺は煙が濃くならない内に、壁際に爆発缶をセットして、ユカリヨさんの元へ行く
ユカリヨさん超怯えてる。ユカリヨさんも怪物達の幻覚を見てるからか。
「はいどうも、缶屋でーす」
俺は仮面をずらし、ユカリヨさんに言う。
「ぅえ?」
ユカリヨさん涙目。俺はとりあえず自己紹介も終わったので縄を解く。
「歩けるか?」
「ううん」
「そか」
俺はユカリヨさんの体を持ち上げ、担ぐ。
「ぅええ?」
「どうした」
乱暴に担ぎ過ぎたかな?
「お姫様抱っこじゃないの?」
「馬鹿か」
いや、それだと両手がふさがるから。担いだ方が早い。
俺はまた入って来た方向へ向かう。
「おい! 怯むな! 」
炎の能力の奴が団員に何か言っているが、無視して脱出する。
俺は外に出た後、ユカリヨさんを一旦安全な所に置いて、爆発缶を出した。
中は煙が濃くなってきており、何やら叫び声が聞こえてくる。
だがそんなものは気にせず、俺は中に向けて爆発缶を蹴り込み、指を鳴らす。
ドォォォォンンン!!!!!
蹴り込んだ爆発缶は、先ほどセットした爆発缶と共に爆発する。
そして爆発により建物は崩れ落ち、中から粉塵と煙が勢い良く噴き出された。
ふぅ、今日も平和だ。
「井浦くん」
ユカリヨさんの声が後ろから聞こえる。
「井浦くんだよ?」
俺は鬼の仮面をしまう。
「色々言いたい事はあるけど、まずは、........助けてくれてありがとう」
「........まぁ、依頼だからな」
「そっか........」
報酬は高く付くぞ?と言いたかったが、井浦くんは空気を読める人間、そんな事は言わない。
「歩いて帰れるか?」
「うん....」
そう言ってユカリヨさんは立つが、足が震えている上に、ふらふらしている。
俺はユカリヨさんの体を支える。
「えーと、お姫様抱っこをして欲しいんだっけ?」
ユカリヨさんはこちらをじっと見た後、ゆっくりと頷く。
「ああー、えー、ほら、お前自分の能力で何とかならないのか?」
「うん」
絶対嘘じゃねぇか。面倒なだけだろ。顔を逸らすな、わかりやすい。
「お前な.....分かったよ。この依頼の報酬は今日の事と、缶屋の事を誰にも言わない事だ。約束できるか?」
ユカリヨさんはもう一度頷く。
これ以上何を言って無駄な気がした俺は、諦めて支えていたユカリヨさんの体をそっと持ち上げる。思ったより軽いな。いやいや、ユカリヨさんが重そうだと思った的な意味じゃなくて。
「......いつまでやってればいいの?」
「私の家に着くまで....お願いできる?」
まじかよ。ユカリヨさんは控えめな声で馬鹿げた発言をしてきた。
「あーはいはい。喜んでお送りいたしますよ。お姫様。」
俺はそう皮肉を込めて言いながらも、俺の腕の上で満足そうな顔をしている少女の笑顔を見て、ため息を一回してから帰路についた。
この小説はアクションです。
ローなファンタジーのアクション小説です。
ラヴ♡コメディなんて始まらないんだからねっ!(必死)