喋り方は個性である。(個性的なら良いと思うな)
「うぉう! そこの男ぉ〜、我公の力の片鱗を見てしまったか〜ぁんん〜?」
このサボテン男には関わらない方がいいと思って退散しようとしたら見事に見つかった井浦である。
もう喋り方が守備範囲を遥かに外してるわ。某日曜の夕方アニメに出てくるア◯ナゴさんを上回ってるな。
「おぉおい、そっこんの缶を口に当ててぇる、オ・マ・エどぅわぁ〜」
何言ってるか全然わからんが滲み出るウザさとイタさは分かる。
「お☆い☆お☆い、我公が呼ぉんでいるのだッッから応答くらぁいしrrrrrrろぉ(巻き舌)よぉおほぉーん」
ぉおほぉーん(SAN値チェック)
どうしよう。
できればグラ子と交代したい。できないけど。
「んん〜、そうかオマエぁー我公の真なる力に怖れおののぉーいたきゃぁ〜ん?」
おのの ォー\(^o^)/ ーイ たきゃぁーん。
フシを呼ぼうかと思ったが駄目だ、悪化するだろう。
だって何このサボテン。職業サボテン?
「ぬぅん...!」
腕組んで、ぬん....!って言ったよ。
一言でも言葉を交わしたらやられそうだよ。
『わんちゃん♪ ちゃんちゃん♪ ねこちゃん♪ ちゃんちゃん♪ うさちゃん♪ ーー』
逃げようと思ったところでBGMが流れた。流れてしまった。
「フッ........なるほどぉ。つぅまりこの音楽はあっれだなぁ? この我公と戦おぅ〜という意思だぬぁーはぁ〜ん?」
戦闘不可避かよ。やだトゲトゲ痛そう。
「ほぉら見ろよあんの炎!酸素を操る我公にかかればちょろいもんよほぉ!」
酸素を操るのか。教えてくれてありがとう。力に溺れてるっぽいし、この世界限定の力なのだろう。
まぁ、やっぱ能力は単純なものを操れるだけで十分強いよな。
だが井浦は無酸素にされても酸素濃度100%(毒)にされても、どっちにしろ缶を口に付けて呼吸してるから問題は無い。
「ふっ、オマエ、呼吸はその缶でしているようだな」
うん。まぁ、最初の目的は煙を吸わないようにやってただけなんだけど。
「だっがぁ〜、そっれんがうぃいー↑つまで保つくわなぁああ?」
『うぃいー』の所で声が裏返ったね。
「おぅらぁ!!」
うわぁ、サボテン服の針を抜いたよ。しかもけっこう鋭利だし1メートルくらいある。あの服の仕組みが気になる。どう刺さってんの針。
あれで闘ってくるん? ダセぇ割に厄介だな。
「ふっっ、はぁっは〜! どこまで踊れるか確かめてやるよっうおぅ!」
サボテンが針を構えて突撃してきた。
サボテンの割には速い。てか普通に速いわ。しかも微かに笑ってやがる。
「ほぉぅ!」
針を剣のように振ってきた。
刺してくる程の度胸は無いか。まぁ、遊びみたいなものなのだろう。
缶を口に当てる手を右手に持ち替え、左手に出した缶でサボテン針を弾くようにして受け流す。
あれ?なんで持ち替えたんだ俺。右利きなのに左手で闘ってるよ俺。
まぁ、針の振り方とかは素人で馬鹿正直だし見切れなくもないけど。
これは反撃しないと終わらないパターンか。
だがサボテン服のせいで関節部や鳩尾とかの急所が分かりづらいな。トゲトゲも地味に怖いし。
投げ技は無理だし、打撃系も一撃目を決定打にするのは難しいな。
「おうるぁ!」
「!」
サボテンがもう片方に持った針を振ってきた。
二刀流か。いつの間にもう一本抜いたんだか。
そう思いながら一歩引いて避ける。
「おらおらぁ!オマエは片手だけで二本の針をっ! 捌き切れるかなっ!?」
二本の針を目茶苦茶の出鱈目と言っていい程に振ってくる。
しかし井浦は一流ではない。これらを片手で捌くのはつらい。
かと言ってもう片方の手を使う訳にもいかない。呼吸用で口に当てている缶を持たきゃだしなぁ。
なんとか捌いてるがのだが、そろそろダメだ。
缶使って反撃するしかないか。
こんなサボテンに特殊系の缶を使うのは少しアレだが仕方ないな。
二手で終わらせよう。
「っと」
地面に積もっている灰を蹴り上げ、サボテンにかける。
「うぉぐぉっ! ゴホッグォっゲホらっ!」
なんか予想以上に効いた。もろに吸ったのか。
奴が怯んでいる間に距離を取る。
どうせ出すなら実験的な意味も含めてやる。
出すのはレーザー缶、大きさは握れる程度。
だが、その握れる程度の缶という器に、四次元空缶(Lサイズ)を使用。
本来の大きさと変わらない程度のエネルギーを内蔵させ、約三十秒でその全てを消費。
できるかできないかは問題ではない。
ただ出すのみ。
「ふぅ、なぁかなっかぁ やーるーでーはーないか男よぉ〜................!?」
奴が持っていた二本サボテン針が、一瞬で燃焼、気体となった。
左手に持つ缶から出る、強烈に輝く青白い光の線。
発射口が小さく光が収束している分、王城の塔を溶かしたそれより威力は高い。
これぞ井浦式ライト◯セーバー。
一点に集中させていると全てを溶かして遠慮なく光が進んで行ってしまう為、常に動かしている。
空にやると目立つから駄目だし。
『わんちゃん♪ わんちゃん♪ わんちゃん♪........』
BGMが二番に差し掛かるという所で止まった。
「........フッ、まぁこぉーこぉーまでにしておこうじゃぁはーないか」
鼻水垂らすな。驚き過ぎだろ。
「........」
まぁ、こんなん見れば戦意も失せるか。所構わず高熱にする光線を振り回されるってなんかヤバいもんな。
お、レーザー終わった。
「ところぅでその得物、ビーム◯サーベルというものではぬゎいか!?」
ビーム◯サーベルちゃう。それ某機動戦士のやつや。
「.......すまぁん。もう普通の空気どぅあぁー。喋っても大丈夫だずぅ」
本当だろうか?
「我公に二言っは、んなぁ〜い!」
ああそう?ならいいけど。
あら、いつの間にか森の火も消えてるじゃない。
「どっちかって言うとライトセ◯ーバーだろ」
おっけ。普通に呼吸できるし喋れる。
「それだぁん」
「欲しいか?」
「............でも、お高いんでしょう?」
急に口調変えるなし。
まぁいいや。酸素を操れるのは強い。是非とも勇者と闘わせよう。
「いや、タダでやるからあっちの方にいる勇者と呼ばれる奴と闘ってくれ」
「いいだるぉう。共に行こうではな〜いかぁ」
なんでだ。共に行きたくなんかねえよ。
そう思っていると、ホネタロウが来た。
「井浦さーん........うわ、井浦さんがサボテンに! そんな....あれ程カルシウム取れって言ったのに........」
「ちげえよ」
はっ!とホネタロウがこっちを見た。
「井浦さん! いや、サボテンが井浦さんに化けているかもしれない!?」
「ねえよ」
どうしたらそんな考えに至るんだよ。
「我公っが イ ウ ラ さんどぅぁよう。助けてたまぁーえそこの男よぉ〜」
悪ノリするならもっと頑張れサボテン。
「どっちかって言うとサボテンの方の喋り方が井浦さんっぽい!」
うそん。
「もういいわ」
「そうだぁぬわ〜。そこの男も我公らと共に来るぐわぁーいい」
なんでお前がホネタロウを誘うんだよ。
「病院へですか?」
そうだな。このサボテンにはそこへ行っても良い気がする。
「違ぁう。勇者と名乗り混っ沌をたァーくらむ輩を ☆こ☆の☆我☆公☆ が討伐ラッタラッツドゥるん、だ、よ」
色々と新しい設定が出てきたな。
討伐ラッタラッツドゥ(早口)るのか。
「なるほど、行きます。カルシウムの為に」
「 来ぅ る ぎゃぁ ぃよ い !」
ああ、もう勝手にしてくれ。
白旗を上げるように天を仰いだ。




