君はカルシウムが足りないフレンズなんだね!(笑)
「ヤツとは?」
ホネタロウが『勇者』という闇ワードを出してきて驚いた。
まさか........
「........声に出てたか?」
「.....出てましたね。なんか、“コウキくんとヤツが会うかもしれないな(低めの声)” とか」
うわぁまじかよ。井浦ミステイク。
「で、ヤツとは一体誰ですか?」
ホネタロウすごく興味示してんな。カルシウムにしか興味ないと思ってたのに。
さて、それはそうと何と答えようか?
黙秘権でも発動するかな。
「................」
「黒幕的なやつですか? それとも、井浦さんの厨二病黒歴史的なやつですか?」
駄目だ、黙秘してるとホネタロウの中で俺がどんどん悪化していく。
「いいか?厨二病ってのは殆どが帯を着けてるんだよ。左手に包帯やら右眼に眼帯やらな(偏見)。だが井浦は帯なんて着用してませんよって厨二ではありません」
異論は認める。厨二には色々な種類があるからな。裸病厨二と被病厨二から始まって植物の分類のように別れていく。
それと決して井浦は厨二ではない。
もっと深刻な何かだ。
「そうですか........当たってると思ったのに」
何を基準に当たってると思ったんだこのホネは。
「ヤツってのは、あのでかい樹を切った奴の事だよ」
しれっと嘘ぶく井浦だぜ。
「ああ、なるほどです」
納得してくれた。
「........でも、樹を切ったのは井浦さんじゃなかったんですね。井浦さんかと思ってました」
ホネタロウ鋭いな。その通りだ。
「そか。まぁそれより、そいつにコウキくんが会うかもしれないってなると、どうなるか気になるんだよな」
「闘ったりするんですか?」
「わからん」
わからないからこそ気になる。
まあ、出会って即バトルするのはゲームだけだろうし、それなりに戦闘回避すると思うけども。
あんまし関係ないけど、コウキくん戦闘BGMとか絶対持ってるよな。かっこいいやつ。
井浦のBGMは、かわいい方面だからなぁ。
場合によってはウザくもあるけど。
「あっ、井浦さん井浦さん」
ホネタロウが何かに気が付いたような声を出す。
「なんだよ」
「あっちで煙が上がってませんか?」
ホネタロウの指差す方向を見ると、確かに煙が上がっている。
「そうだな。焚き火じゃね?」
きっと焚き火だな。うん。
緑茶缶を出して開けた。
「いやでも井浦さん、煙、だんだん大きくなってますよ?」
確かに、上がっている煙はだんだんと大きくなってきている。
しかも結構近いな。
「じゃあ、あれだよ。あの、小正月にやるやつ。........どんど焼きだよ」
どんど焼き。習字の失敗したやつを燃やしたりするやつだね。
この世界にもあるだろう。
緑茶缶を口元でゆっくり傾ける。
「今は小正月じゃないですよ。この森が燃えてるんじゃないですか?」
まぁ、言われてみればそうだな。この森が燃えてる。
「じゃあ焼畑農業だな」
焼畑農業。森林を焼き払って灰を肥料にするやつだね。
この世界にもあるのだろう。
緑茶缶を口元でゆっくり傾ける。
「なるほど。........火、こっち来てませんか?僕のカルシウム不足ですかね?」
僕の気のせいですかね?みたいに言うんじゃあないよ。
あと火はこっちに燃え広がってきてるね。
緑茶缶を口元でゆっくり傾ける。
「おう。メラメラゴウゴウ聞こえるし、もう火が木々の隙間から見えるな」
「井浦さん大丈夫ですか?僕は泉の中に逃げ込みますが」
................?
ってか何コレ? なんなの、この炎。山火事?それとも本当に焼畑農業なの?
勇者関係?
「とりあえずホネタロウよ、カルシウムやるから泉に逃げないで様子を見てきてくれ」
「わかりました頑張ります」
そう言ってホネタロウは炎の方へと向かった。
俺はまだ緑茶を飲み切っていないので、飲み切ってから行動するとしよう。
木々の向こうで炎が綺麗だ緑茶がおいしい(呑気)
そんなこんなで、すぐにホネタロウが帰ってきた。
「おうホネタロウ、どうだった」
「炎の向こうに変な人がいましたね」
じゃあ作為的な炎なのは確定か。
炎で変な人か。前に会った火の能力のヤンキーさんかな?
現実では身柄は確保されてるらしいが、ここでは自由ってのは十分あり得るしな。
「どんな感じだ?」
「変な声を上げていましたが、あんまり見えませんでした。すみません。僕がカルシウムを貰う資格なんてありません!」
ホネタロウも変な人だがそのホネタロウが変な人と言うのだから、さぞ変な人なのだろう。
「そうか」
「はい。次は井浦さんが行く番ですね」
俺の番とかあるのかよ。
あれだな、この感覚、肝試しだな。
まぁ、どっちにしろ勇者関係が否めないので自分で確認しようと思ったのだがな。
「よし、任せろ」
緑茶を飲み干し、炎へと向く。
けっこう近くまで炎は来ている。
しかも青く燃えてる部分があるので、なんか雰囲気がそれっぽくてテンション上がる。
「ほんじゃあ、行ってくるぜ」
そう言って、炎へ向かっていく。
近づくにつれて、熱気が肌を焦がすように触れてくる。
変な人ってのは炎の向こうだったよな。
つまり、この炎を越えなければならないと。なるほど、了解。
炎を避けて迂回するのも面倒だ。能力を使うか?
考えながら、腰を落とし、顔の前で両腕でバッテンを組むようにする。
能力を使う? 否だな。
こういうのは突っ込んで行くのが井浦式よ。
第1回タケノコ選手権、走り幅跳び炎抜け!
一般人代表、井浦選手ッ!
体制を低く保ったまま走り出し、炎の所で思い切りィッッっ、跳んだあぁァァ!!!
炎へ飛び込んだ井浦選手!
おおっと!?炎を抜けるか!?抜けるか!? ーーっッ抜けたァァァァ!!
『わんちゃん♪ ちゃんちゃん♪ ねこちゃん♪』
BGMも祝福していますね。
炎を纏いながら、美しく抜けました。これは審査員も驚きの表情です。
それでは、中継を終わります。
炎を抜けた時に革の手袋に少し炎が燃え移ったが、息を吹いて消す。
こちらが風下なのか、煙がかなり来ていて前が見づらい。
一応、煙を吸わないように口を缶で覆った。
そうしていると、叫び声が聞こえてきた。ハッキリと聞こえる所まで行く。
「・・・った!ハハハハっ........げほっ、ごほっ、っほハハっげほッ」
なるほど、この高笑いしながら煙にむせてる人がホネタロウの言っていた変な人か。
煙で顔がよく見えないなぁ、と思っていたら風が吹いてきて煙が後方へと流されていった。
「ごほっ........ふぅ。ハハハハッ!これが我公に眠っていた力か! 悪くないなぁ! ハハハハハッ」
関わらない方がいいな。
言ってる事を聞いただけでも薄々そう思っていたが、姿を見て確信する。
これはひどい。重症だ。
焼かれた木々の灰の上にいたのは、サボテンの服を着た見知らぬ男だった。




