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BGMよ、今こそ働くのだ!(フッ、わんちゃんラップを見せる時が来たようだな....)

 井浦、こんなに人に囲まれたのは初めてよ(白目) 


 おい主人公補正、仕事しろ。

 井浦、捕獲されそう。まるでハイエナの群れに囲まれた屍肉。いうら屍肉。



 そしてこんな状況でも、BGMは陽気に『わんちゃんねこちゃん』と流れていて正直ウザい。


 そう思っていたのだがーー



「この音楽はッ!? まさかこいつ、専用BGM持ちか!?」



 などと驚かれて、困惑している。

 

 何よ。専用BGMを持ってるのは珍しいの?携帯電話の着メロ感覚でみんな持ってるんじゃないのか。

 まぁ、考えてみれば確かにゲームとかでは強敵とかボスくらいしか専用BGMは持ってないけど。


 だが、わんにゃんうさちゃんのBGMは要らん。



「くそっ!カワイイ音楽しやがって!」


 全くその通りだ。



「くまさんはいないのかよ!」


 いません。残念でした。



「こやつ、相当やりおるぞ........!」


 わんにゃんメロディーの中でそんな事言われても、説得力に欠ける。


 だが、俺を囲っている全員が数歩、後ずさりした。

 


 こうなった場合、俺はどうすればいいのだろうか。

 ここで暴れるという手もあるが、学校の人が見ている場合がある。



『わんちゃん♪ ちゃんちゃん♪ ねこちゃん♪ーーーー』



 ここはBGMを上手く利用した方がいいだろう。




[][][][][]





 BGMに合わせてHey! 歌って踊ってうらいうら Let's go!



「『わんうさ二番の主役はワン!そうこのオレわんちゃんあるアナザーワン!(So(ソー)!)ラップで吠えるワン!』」



 わんちゃん主役のBGM二番(ラップ調)を歌い、それっぽく身振り手振りしながら、俺は一方向へ歩く。

 俺を囲んでいた人たちは、わんちゃんラップの迫力なのか自然に道を開けてくれている。


 このまま逃げよう。



「『弱い犬ほどよく吠える?(No!)弱い犬は逃げるだけだze!勇気ある犬が吠えるのさ!(foo!)だから一緒にエビバリセイ!わんちゃん ちゃんちゃん わんちゃん!』」



 もうそろ井浦は逃げるだけだze、使うのはこれだze煙幕缶! 四次元空缶の容量の煙、誰もが井浦を見失うyo!(ラップ調)


 


 そんなワケでさらばだ。



 缶は、サービス精神旺盛に七色の煙を出す。

 一応、煙を出しているのが俺の能力で出した缶ってことは出来るだけ分からないようにしよう。

 少しの間、それを持ったまま走った。そして煙が本調子になったところで背後に蹴りつけて逃走。



 よう、BGMも消えた。



「神獣召喚」


 走りながらフシを呼び出す。登場シーンはスキップで。



「どうもでス」


 フシは相変わらずデカく、走る井浦の横を低空飛行する。



「よう、さっきぶりだな。休憩時間は終わりだ。あの城に行きたい」


「了解でス」


「おう」


 井浦は走る勢いを利用し、ホップステップでフシに飛び乗った。



「随分と騒がしいでスね。どうしたんでスか?」


「かくかくしかじか」


「なるほどでス」


 よし、一言で状況説明が完了した。



「城にはレーザーで消し飛ばした所から入るぞ」


「いえっサー」



 フシはどんどん速度と高度を上げてゆく。


 だが井浦はそんなフシの背の上で腕を組んで立っている。

 この行為に意味は無い。スリルを楽しむだけである。高速道路で走る車の上に乗った感じ。風圧とかしゅごい。それと普通に怖い。



『わんちゃん♪ ちゃんちゃん♪ ーーー』


 なぜ鳴り始める? なんかこれのせいでスリルを感じない。


 そう思って仁王立ちをやめて、低い体制にすると、さっきまで自分の体があった場所に何かが通り過ぎていった。



「下に弓構えてる人いまスね」


「まじで?」


 ってことはさっき通り過ぎていったのって矢? あぶねぇ。BGM、それと主人公補正グッジョブ。



「井浦さん、ファイトでス」


「まだ来るっぽいな」


 BGMはまだ鳴り続けている。というか、BGMが敵意察知の役割をしてくれている。

 今までかっこいい感じのシーンの妨害しかしなかったのに。



「あ、ボク狙われてまスね」



 まじかよ。


 そう思った途端、フシの両羽が燃えた。



「すごいでスね。二本同時打ちでシたよ」


「なに呑気に解説してんだよ」


 水が入った缶を出して、なんとかフシの両羽を消火する。

 すごいのはフシの両羽には傷一つ残っていない事である。


「........痛くなかったのか?」


 矢は確かにフシの両羽を貫いていった筈なのだが。


「燃えた時は微妙に暑かったでスよ」


「ああそう」


 まあ、フシだからな。



「矢はどこから来る?」


「お城の庭っぽい所からでス」



 あそこか。誰かまでは井浦の視力を以ってしても特定できないが、確かに矢っぽいものを構えてる人が見える。


 くそう。幻覚缶さえ使えれば楽なんだがな。


 

「来まスね」


「ああ。分かってる」

 


 あまり見えるワケではないが、矢を放つような動きをしたのは分かった。

 今度はフシではなく井浦を狙っているな。

 

 この集中力をひたすら削いでくるBGMの中であれだけ正確に矢を放ってくるのだ。相当の腕だ。

 そして、何故かはわからないが急所は狙わないと見た。

 矢が飛んで来る。


 右肩ッ!

 左手に四次元空缶を出し、右肩に構える。


 そして、飛んできた矢は見事に四次元空缶が呑み込んだ。

 フハハハ、四次元空缶は飛び道具を受けることも可能なのだ。井浦、この子の将来が楽しみだわ!


 よしおっけ。もうキャッチボール感覚でいけるわ。



 と言っても、もうレーザー缶で屋根を消した塔の上なのだがな。ここから入り込める。


「ここでスね」

 

「ああ」



 従業員っぽい人がいるが、気にしないで降り立つ。



 井浦参上!


 城の内装を見回してから上を見上げる。

 いやぁ、いいね。いつでも青空が覗けるね。屋根が無いもんね。



 さぁ、BGM(わんうさ)が鳴り止まないんだが、何故だろうな。


 まぁ従業員っぽい人が数人いるが、たぶんそのせいだろう。


「その鳥....まさかお前はッ............何の用だ!?」



 警戒されてるな。先ほどのように、わんちゃんラップで切り抜けたい所なのだがーー



「あのー、トイレ、どこですか?」

 

 もう漏れそうなんだよ。

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