表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/64

様子見は悠長(あとトイレに行きたい)

 まだあちら側に動きはない。どうでもいいけどトイレに行きたい。


 そんなこんなで、もういい加減フシ呼んで攻撃を仕掛けようと思った所で、城の方に集まっている人々がざわついた。

 どうやら、ついに王様が顔を出したようだ。



 俺も王さまの顔を拝もうと、少し離れた所から見る。


 ........ああ、あれが王さまか。

 見た事あるわ。普通に知ってる。現実では、井浦たちが住む地の市長やってる人だ。

 

 市長と言っても、井浦たちが住む地区は能力者の育成、研究機関などがあることから特殊地区(東京23区みたいな感じ)に認定されているので、中々のお偉いさんである。二十年以上やってるっぽいし。



 久々に見たなぁ。


 師匠に頭を下げているのを五回くらい見た事ある。

 それと俺の能力についても多少は知ってると思う。師匠に怯えてるのか、何も言ってこないし何も言えないのだろうけど。まぁ、それはどうでもいいか。



 とにかく、市長がなんで王さまやってるんだよ。

 ってか、王さまって影街の人たちみたいに既存の人じゃないのか? 市長がこの世界の王さまに乗り移った?


 うーむ、この世界の設定が未だによく理解できない。

 特に王様が幻缶の被害者だとは思わなかったわ。



 城から顔を出した王さま(市長)が、拡声器らしきものを持つ。

 

 そして市長の隣に、思惑どおりと言うべきか、勇者(ホクロ)が出てきました。ええ。

 もう掻っ(さら)って尋問して幻を解除しろって言いたい所だが、まだ様子を見よう。



『えー、みなさん、大変困惑しているかと思います。ですが、まずは落ち着いて、落ち着いて、聞いてください』



 喋り方とかなんか普通に政治家っぽいな。王様らしさの欠片もない。さすが市長。



『これは、能力者が見せている幻です』


 !?

 


『何が目的で、このような事をしたのか、皆目見当がつきません』



 これは確実に幻缶の被害者たちに話しているな。

 幻だという事を市長に知らせたのはあの勇者(ホクロ)だろう。それは分かる。

 だが何故言った? それが分からない。


 城の方にいる人々がさらにざわめいている。



『ですが、この城の後に立っていた樹が切れる前に、大きな赤い鳥とそれに乗っている人間を確認しました』


 ああ。やっぱ見られてたか。


 ざわめく人々の中からも同調の声が聞こえる。まぁ、彼らは別の意味で取っているのだろうけど。



『この幻の犯人は、おそらく彼らでしょう』


 ........ほう。


 これを吹き込んだのは勇者だよな。

 そいつの言葉を信用する市長も市長だが。



 つまり勇者は、この幻は全部俺のせいって事にした訳か。 

 というか、勇者はとにかく誰かのせいにしたかったのだろう。きっと俺を特定して言った訳ではないと思う。俺の顔を知る筈は無いし。



『ですが安心して下さい。あなた方の安全は、この私たちが守ります。私たちが樹になりましょう。以上です』



 お前らの言う犯人がここに忍び込んでいるんだがな。どう守るんだろうな。



 結局、勇者(ホクロ)は何も言わないで市長と共に退場していった。



 うむ。なるほどなるほど。


 幻缶の被害者は、これで『なんかよく分からないけど、とりあえず鳥に乗ってたアイツを捕まえよう』ってなる訳か。

 見事に容疑者に仕立て上げられたな。



 いやぁ、一本取られたわ。



 とりあえず一応幻覚缶で姿を偽装して、どっか適当な所でフシ呼んでから市長の所にトイレ借りに行こう。



 そんな訳で幻覚缶を出し、自分の姿を他の人々と同じように見えるようにする。


 よし、これで大丈夫だ。



 あとは呼び出せそうな所でフシを呼び出そう。


 そう考えて街の通りを目立たないように歩く。どこか人目に付きにくい方がいいよな。

 


 すると突然、


「おい!アイツ、赤い鳥に乗ってたのと同じような服装だぞ!」


 と、叫ぶ声がした。


 誰かがどこかで勘違いでもしたのだろう。


 俺は知らん顔で行く。叫んだ奴は俺以外の誰かを指した筈だ。なぜなら井浦の服装は幻覚缶で偽装が................


 で き て な い 。



 ちょ、待って、なんで、っと、ッと....

 .....たぶん、ここがすでに幻だから幻覚缶での上書きができないのだ。

 という思いに至った時にはもう遅く、俺は人に囲まれてた。



 疑いの視線を感じる。冷や汗が出てくる。



『わんちゃん♪ ちゃんちゃん♪ーー』


 普通にやべえな。それとBGMが鬱陶しい。



たった1700字程度でピンチっぽくなる井浦でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ