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がふっっっ!(やらかした)

 飴玉が大きすぎたのか、しばらく待ってもフシはまだ、ちゅぱちゅぱと言ってそれを舐め続けている。

 だが、いつまでもフシが舐め終わるのを体育座りで待っているわけにもいかない。


 やる事や、やっておきたい事も大体考えたし、もうそろそろ行動した方がいいだろう。



「フシ、俺を乗せてあのでかい樹の周辺を飛んでくれ」



「ちゅぱ」


 こんな(飴玉を)舐めている返事しか出来くても、ここでは貴重な飛行手段である。

 まずは樹の周辺の地形などを上空から確認しておきたいのだ。


 安全性が皆無だから命がけではあるが。


 フシに乗って、飛んでる最中に落ちた場合、井浦はパラシュート缶とか出せたりするのかね? 主人公補正さん、そこらへんどう思います? ....えっ、無理そう? まじかよ。

 


 まぁいいや。乗ろう。スリルを求める心が井浦にはあるのだよ。


 

「ちゅっぱちゅぱ」


 相変わらずフシが何言ってるのかわからん。

 ただ、羽根で自分の背中を指しているので、さっさと乗れよとでも言いたいのだろ。



「念のため言おう。ゆっくり飛んでくれ。遷音速とか出されたらマジ死ぬから。あと燃えないでくれ。マジ死ぬから。やめろよ? 絶対にやめろよ? 頼むから俺を安全に運んでね井浦との約束だよ」


「ちゅぱ」


 フシが頷いたのを確認してから背中にまたがった。


 井浦、二度目のフライトである。




[][][][][]




「...でけぇな。一発で切れるかな」


 フシに乗りながら、近づいてきている樹を改めて見る。太さだけでも百メートルありそうなんだが。まぁ切れるよ。たぶん。



「ちゅぱちゅぱ?」


「ああ。だがまだ切らない。切り倒す方向とか考えなきゃいけないしな。とりあえず、この樹の周りを回ってくれ」



 あれ? フシは今なんて言った?あれだよな。「これ、切るんでスか?」みたいな事を言ってたよな。......でもフシはまだ飴を舐めてる .....まぁいいや。



「ちゅぱ」



 樹まで接近していたフシは二時の方向へ曲がった。


 結構な高度だが、びびってはいられない。地形を確認する。


 今は、森の上を飛んでいる。というか、先ほどまで居たあの街が森に覆われている。隠されているように。



 ちなみに、樹の影ができている方向を北と仮定すると今は樹の北西側を飛んでいるような感じだ。

 そう考えると、樹の西側は、ほぼ森だ。



 だが、だんだんと、南側に進んでいくにつれて森が途切れている。


 樹の真南が見える所まで来ると、その樹の麓には外国で見るような王城っぽいものが建っており、さらには南東部から南西部にかけて、城下街が広がっていた。

 

 なるほど、樹の影にならない、日の当たる場所には王城や城下街があるってことですか。




「ちゅぱ」


 フシもいい加減日本語を喋って欲しい。



「もう飴捨てろよ。勿体ないけど」


「........ちゅぱ」



 .............



 捨てないんかい。



「それはそうと、この城の上飛んだら、なんか目立ちそうだな。........まぁ、大丈夫か」


「ちゅぱちゅぱ」



 フシは何の躊躇いも無く、城の上を通過し始める。


 うわぁ、この城やべぇ。屋根の模様までオシャレ。しかも、その一部がステンドグラスになってるんだが。大丈夫なのかね?

 


 そう思っていると、フシが急に咳き込むような声を出す。


「ちゅぱ........がふっっっ!」


 

 そして同時に飴玉を吐き出し、その飴玉は見事にステンドグラスを、パリンッと盛大な音を立てて破った。



「おっま、馬ッ鹿!やらかしおって!」


 くっそ。ステンドグラスを見た時にこうなる事を察知しかけたのに。



「いやぁ、あの飴、舐めても舐めても無くならなかったので驚きまシた。ふしぎなアメでスね」


「いやその飴を舐め切ってもレベルが上がったりなんかしないからな! っッていうかそれは後だ。急げ逃げろ、俺が死なない程度の速度で逃げろ!」


 とにかく、ここで見つかるのはマズい。



「了解でス」


 フシが加速する。それに合わせて、俺はフシにしがみつくようにして、体制を低く低くした。





[][][][][]





 ふぅ。


 樹の東側には平原があり、城から一キロほど離れた所に着地した。

 城は、半分樹に隠れているが見える。破れたのはたぶん、あの一番高い塔のやつだろう。



「飴自体はおいしかったでスよ」


「知らんわ」



 もう飴なんて知らん。


 それより、やらかしてしまった以上、騒ぎが広がりきる前に次の行動へ移りたい。



 まぁ、まずは城屋根パリン事件の証拠隠滅をしよう。あのステンドグラスの屋根をここから狙って全部消し飛ばす。


 そして、それにうってつけの缶(兵器)がある。


 名は、対重装甲融解用光線缶だ。レーザー缶とよんでオッケー。



 前から試したかったのだが、サイズが今のフシくらいでかい上に、名前が読みづらいので試したくても試せなかった缶だ。


 こいつなら、ここからでも余裕でステンドグラスくらい溶かせるだろう。


 どうでもいいが、その缶を手に持てるサイズにすると超長いライトセーバーみたいになる。レーザーが出た時間は約三十秒間。テレビと壁と石の塀が犠牲になった。



「とにかく、証拠隠滅したいからあの屋根を狙撃して消し飛ばすか」


「できるんでスか?」



「任せんしゃい」



 まずはレーザー缶を出す位置を決めよう。当たらなきゃ意味がないし。


 少し傾斜になっている所に膝立ち、そこから半身になり、左腕を水平に伸ばし、親指を立てた右手の拳をその左腕に乗せる。

 そして遠近法を使って見えている城の塔と親指を重ね、眼の位置から親指の先までの角度と、地面の傾斜の角度とを見比べる。

 以下略。

 



「........ここら辺だな。ふん!」



 横倒しになったキャップ式の形の缶を出した。

 大きさは、四×二メートルくらい。中々の巨砲である。


 キャップの部分が発射口になるので、そこの延長線上に標的物があるように出したのだ。

 当たるかどうかは撃たないとわからん。



「すごいのが出てきまシたね」


「お前が言うなよ。それより、あと少し右にずらしてくれないか?」


「こうでスか?」


「....よしいいぞ」



 設置完了。念のため、その隣に爆発缶も置いた。

 


「次だ。フシ、俺を乗せて、ここから樹の反対側に行ってくれ。そこで樹の枝を切り落とす。樹の重心をできるだけこっち側に向けたい」


「この缶は撃たないんでスか?」


「それは枝を切り落とすタイミングで撃つ」



 東側からの砲撃と西側で樹の枝を切り落とすのを同時にやる。なんかその方が面白そうだし。

 そんで、西側の枝を切り落とされて重心が東側に向いた樹の幹を断つ。


 不確定要素などはあるが、上手くいかない事や誤算も計算の内に入ってる。まぁ上手くいくに越した事はないのだが。



「行くぞ。死なない程度の速度でな」


「了解でス」



 先ほどのように、体制を低くして乗る。



 フシに乗るのも大分慣れてきたな。かなり加速されているが、問題無い。



 顔の前に片腕を置いて風よけにしながら、少しの間だけ前方を見たりして、フシに指示を出し、一分ほどで樹の西側にある枝の中の一つの上に到着した。

 


 ふぅ、樹がでかいだけあって、樹の枝も中々太い。高い位置にあるが、余裕で立てる。まぁ、これらを今から切るのだが。



「いくぜ。フシ、枝を切った後、救出を頼む」


「いいでスよ」



 よし。


 筋肉増強ジュースを飲んでから、四次元缶から金の斧に取り出す。


 一気に決めるぜ。

 レーザー缶発射の掛け声と共に、金の斧を全力で一振りする。


「スリー、ツー、ワン、ファイア! (良発音)」


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