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夢幻のファンタジー世界が現れた!( いうらは どうする? )

 カズマさんの廃屋に寄ったのが、昨日だ。


 そして先ほど、学校で昼休みをのんびりと過ごしている時に『幻缶(仮)、いきまーす』とカズマさんからメールが来た。


 その直後の事である、周囲にいた人達がバタバタと倒れていった。

 それに驚く暇も無く、俺も何かに包まれるような感覚に陥り、自分の体が倒れてゆくのを感じた。




 さあ、そして今である。学校で倒れたと思った瞬間、周囲の景色が変わった。俺は倒れておらず、ここは学校でもない。



 俺は、見知らぬ森の中で、立ち尽くしている。


 周囲には木や(ツリー)(バーム)などがたくさんある(錯乱)

 それと湖っぽいのもある。



 服装も、先ほどまで来ていた制服とスリッパではない。

 黒革製のブーツと手袋、謎の生地でできた濃い灰色の作業服という格好で、片手には斧、腰にはノコギリとナタがある。


 もう一度言うが、そんな格好の俺が森に立っている。

 

 この井浦、完全に木こりスタイルになっている。


 はぁ。



 まず、これは現実ではないだろう。それは断言できる。何故なら心当たりしかないからだ。絶対、幻缶(仮)のせいであり、これは幻缶(仮)の幻だ。現実では寝てるから、幻と言うより夢と言った方がいいだろうか。


 頰をつねっても普通に痛い。だが、その痛みすら幻なのだ。


 それにしても、幻缶(仮)の効果範囲やばくね?カズマさん廃屋(ハウス)からここまで数キロあるで?まぁそれは置いておこう。



 問題は次である。なんで俺、木こりなの?

 

 もっと他に無かったのか。ほら、村人とか缶屋とかあるでしょうに。なんで木こりスタイルなの。なんで井浦は木こりってるの?無関係かつマニアック過ぎるだろ。



 まぁ木こりでも何でも、井浦はいつも通り缶さえ作れれば、宇宙だろうが夢幻の中だろうが生きていけるのよ。


 缶を出す。うむ、能力は普通に使えるな。



 あとはここの世界感だな。これは重要。

急に機動戦士が出てくるかもしれないし。

 

 まぁ、この林業装備にチェーンソーが無い時点で大した機構は無いとは思うが。

 よくあるファンタジー世界っぽい感じか。



 他になんか参考になりそうな持ち物はあるかな。


 ポケットを探ると、万年筆の下位互換みたいなものと、個人情報帳と大きく印刷された手帳が出てきた。


 個人情報帳って何よ。中に個人情報でも........何も書いてねーな。



 ただ、一番最初のページに名前を書く欄があったので、とりあえず万年筆っぽい物を使って[いうら]と書いた。


 すると、何も書かれていないページににどんどん文字が浮かび上がってきた。

 おお、ハリー・○ッターっぽい。なんかテンション上がるわ。


 浮かび上がってきた文字を軽く読み流す。



名前 いうら、職業 伐採者、能力 缶生成 レベル五千七十、専用戦闘BGM わんちゃんうさちゃん、おまけ 神獣解放、主人公補正........


 なんだこれ。


 個人情報ってステータスみたいなやつの事かよ。この世界での住所とかじゃないのか。



 そしてこのステータス、どうかしてる。


 職業が名前だけ強そうだったり、能力のレベルの桁が地味に大きかったり、専用戦闘BGMが俺の携帯電話の着メロだったり、おまけの存在感がすごかったりと。


 神獣解放は、フシが出てくる未来しか見えない。だからスルーまでいかなくても後回し。

 そして謎の主人公補正である。なんで俺が主人公の特権を持っているのか。俺が幻缶(仮)を作った本人だから? じゃあ使った奴も持っているのだろうか。

 まぁ分からない事を考えても仕方ない。



 はぁ。どうするかな。



 せっかくだし、木、切るか。



 伐採伐採ィィ!!!


 斧を持ち上げる。重いが、まぁ振れなくも無い。


 木の伐採方法など知らないが、あれだろ? 斧でズバン!ってやればいいんだろ?


 そして俺は本能のままに、野球でよく見るホームランバッターのように構える。



HEY(ヘイ)HEY(ヘイ)! ほぉん!!」


 HEY!HEY!の所でリズムを取り、ほぉん!!の所で思い切り振った。


 そして、その結果ーーー



「ほぉん........ほぉん........」


 斧が木の幹に当たった瞬間、斧を持つ手にかなりの衝撃が走り、手が痺れたので情けない声が出る。そして斧はどっかへ弾き飛んでいった。


 やっぱダメだったか。今のは完全にバカやったわ。職業が伐採者だったからもしかしたらうまくいくかと思ったんだが。


 この井浦、感覚でなんでも上手くいくようなタマではないのだ。



 ................



 ......というか、タマ(・・)が無いのだが。



 先ほどから謎の違和感があったのだが、その正体に今気がついた。


 男性の誇りであり証であるモノが伐採されている。

 ちょっと待ってどうしよう。



 まさかと思い、近くにある湖を覗き込むようにして、湖面に写った自分の顔を確認する。



 よかった顔はいつも通りだ........いやよくないけど。どうすんのタマがないとか洒落にもならないんだが。



 そう思っていると、声をかけられた。

 そして同時に思う。俺が覗いていたのは湖では無く、泉ではないか、と。


 何故なら........かけられた声がーーー



「あなたが落としたのは、金のタマですか?」



 ーーーなどと述べたからである。


 某童話の木こりが泉に斧をアレすると女神が出てくるアレだよな。うん、なんとなく分かってたよ。

 だけど今言われたセリフは色々とアウトじゃん。満十五歳未満の健全な男子レベルでアウトだろ。




「それとも、金の斧ですか?」



 ........ん? ああ、斧も泉にポチャンと入ってたのね。本来のセリフが来てびっくりしたよ。

 よくもまあ、金のタマ発言をした後、何事も無かったように言えたな。



 だが、まずは金のタマを返してもらおう。ってか返せよ泣くぞ。

 そう考えながら、質問に答えようと顔を上げるが、そこで答える気が途方にサヨナラした。


 何故ならそう、この次に言う言葉がわかってしまったからである。



「それとも、カルシウムですか?」



 ほらやっぱりな。


 なんでお前が泉の女神やってるんだよ、ホネタロウ。




「あ、井浦さん。この世界に来てたんですか。........金のタマは無償提供しますね。いくらなんでも可哀相なので」



 夢幻の中で、女神ホネタロウに慈悲をかけられた。



 だがそれでも、まだこの夢から覚めることはできないようだ。

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