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ジャガイモを粗末にするな。(投げるんじゃない。使うんだ!)

 よぅし、井浦くん道に迷っちゃったから、今来た道、戻っちゃうぞぅ。コウキくん達の所まで戻っちゃうぞぅ。


 そう思った井浦は肩で風を切るようにして、180度ターンをする。

 すると、半眼でこちらを見るユカリヨさんが視界に入ったので、さらに180度ターンを追加して、無事に360度の一回転を遂げた。


 ふぅ、ユカリヨさんの眼、やばかったぜ。

 あれは『井浦よ、まさか戻るなどとは言わないだろうな?』っていうような眼だ。

 ....いや、あれは『井浦よ、まさか道に迷ったなんて事はあるまいな?』って眼か。

 どっちでもいいわ。

 

 とにかく、道をそのまま戻っていく事はなんか非常にしづらい空気なので、回り道をしてコウキくん達の所へ行こう。そうしよう。



 側から見れば、道の真ん中で急に立ち止まって、ダイナミックに一回転するという奇行に走ったように見えただろう。実際、その通りなんだがな。

 だがそんなことは忘れて、俺は再び走り始めた。


 あまり遠くない所から怒号のような闘争者達の声が響いているので、回り道しても、どこらへんにあるかは分かるから、すぐに向かえる。


 

[][][][][]



 回り道を走っている間に、響いてくる闘争者達の声はどんどん小さくなっていった。

 そして『バチン』と電気が走ったような音が響いて、ついにその声を消した。


 今聞こえてきた音で、大体どうなったか分かる。さすがコウキくんと言うところか、と考えながらも、しかし走るのは止めない。

 最後に響いてきた声の発生源に向かって走る。

 この裏路地を曲がれば行けそうだ。そう思って入っていった。


 だが....


「あら......行き止まりか」


 くっそ。なんでこう、こんな時にこうなるのだろうか。これが噂の井浦補正か。


 ある程度まで戻って、また進む。



 ほんの少し走った所に、また曲がれば行けそうな裏路地があった。


 こっちの裏路地は....うん。次こそ行ける。


 そう確信して裏路地へ曲がり込んで走った。よし、向こう側の通りが見えた。おそらくあの通りから声が響いてきただろう。


 もう少しで抜けられる。


 そんな時に、黒く長い髪と、白いハチマキを巻いた彼女が現れた。



「あら.......行き止まりか」


 くっそ。なんでこう、以下略。仕方ない、また戻るか。


 

「待ちなさいよ」


 この井浦、呼び止められてしまいました。この井浦に一体、何が起こるのでしょう? ドキドキが止まらないわ。いやマジで。



「うっわ。おもしれー、この行き止まり喋るぞ」


「あんたが連れてた喋る火だるま程じゃないわ」


 フシの事か。


「その火だるま、どうなったんだ? 見当たらないんだが」


 確かフシメテオであいつらとの闘いに参戦してた筈だが。



「落ちてきた後、しばらく飛び回って、トイレに行くって言って飛んでいったけど?」


 あいつ(フシ)自由過ぎだろ。そもそもトイレなんて行ってどうするんだよ。あいつ鳥じゃん、しかも燃えてる状態なのに。もういい、茶碗蒸し作ってやらねぇ。



「コウキくんは?」


「雷速であの人達のバンダナを全部持ってったわ。もう一つのハチマキを取り返しに行くついでにって言ってたけど」


 つまり、あの場にいた闘争者(あいつら)は全員捕まったのか。



「で? あんたは何しに来たの?」


 グラ子は腕を組んで聞き返してきた。



「ちょっと道に迷ったからな。どこへ行けばいいか教えてもらいに戻ってきた」


「なら、教えるわ」



 うむ、今日も元気だ 身体が重い。


 やっぱこうなるか。ここ最近いつもこうなるんだよなぁ。



「そういえば、お前なんでそんな機嫌悪そうなの。最近いつもそうだけどさ。今日は特に悪そうじゃん?」


 そう聞くと、グラ子は俺にかかる重力を増加させながら答える。


「あんたがムカつくからよ。最近、今日は特に」


「今日は特にって、午前のアレの事か? アレは事実を述べただけだろ? 今だってそう、お前は重力かけてるだけ。いつになったらどこ行けばいいかは教えてくれるのかい?」



「そこがムカつくのよ。いつもヘラヘラするようになった。こうしても、まだヘラヘラしてる」


 ............



「それと、なんであんたはこうしても反撃しなくなったの? なんでやり返さないでっ、ただやられてるだけなの!? そこもムカつく!」


 ............



「あんたを見てると全体的にイライラするのよ!」




 .............もう堪えきれねぇ。



「ぷっ! はっは!!」


 吹き出して、腹筋を片手で抱えながら前屈みになり、もう片方の手でグラ子を指差すような体勢になってしまった。



「......何笑ってんの!?」



 笑いを堪えていたせいか、些細な事でもおかしく思えてさらに笑う。


 グラ子がそう言ったので、笑う腹筋を抑えながら弁解する。


「だって、おまっ(笑) お前、そんな下らない理由でいちいち俺に重力かけてたの?(笑)」


 下らなすぎて超笑える。ツボったわ。



 もう一度思い起こす。


 井浦Q: なんでそんな機嫌悪いの?

 グラ子A: あんたがムカつくから。


「 お 前 は ガ キ か (笑) 」


 言いながら膝を軽く二回(はた)いた。



「....っ!」


 グラ子は言いたくても言い返せないような顔をしている。



「下らねぇ(笑) 下らなすぎるわ(笑) どうりでお前変わらないワケだ。ずっと脳内が小学生なんだもんな(笑) 俺はお前と同じように、能力で解決するようになったって午前に話したが違ったな。俺はムカつくだけの奴まで能力で解決はしないわ(笑) あっ、ちょ、重力強くしないで、腹筋が崩壊するから(笑)」



 \いいぞー、もっとやれー/


 おう誰だ、もっとやれなんて叫んできた奴。この井浦がお請けしましょう(笑)

 うざいうら注意報出しちゃうぞぅ。



「えっとぉ(笑)、そういえば小学生の先生が言ってただろ?ほら、アレだよ」


 今、思い出した事を言おうとして、また腹筋を抑えて前屈みになったが、なんとか声にする。


「アレ、『能力とは、ジャガイモだ』(笑)」


 なんでジャガイモになったんだよ! って今更ながら思う。これを師匠と瀬田さんに言ったら、二人共が爆笑して俺と同じ事を言ってたのを思い出して、さらに笑いがヒートアップする。


「えっと『ジャガイモは食うためにある物で、人に投げつける物じゃない。能力も、誰かの為にある物で、誰かを苦しませる物じゃない』だったっけな。ジャガイモを人に投げる奴があるかよ(笑)」


 ふぅ。とひと息ついてからまた言う。


「グラ子もそんな奴いないと思うだろ? なぁ?」


 いくらムカつくからって、それだけの理由でジャガイモ投げる高校生なんているのかねぇ?


 ああ、そういえばいるかもしれないな。

 それも結構な重症だ。


 午前中に話した事も含めて言う。


「ジャガイモ投げておけば、リンゴが手に入ると思ってる傲慢な奴が」


 もうジャガイモなのか、リンゴなのか分かんねぇ(笑) 意味すらもう不可解。



「それと何だ。なんで反撃しないかだって?この井浦が答えてあげまちゅよ(笑) 」


 重力攻撃(ジャガイモ)がさらに強くなる。



「あのな、井浦はジャガイモを無闇に投げてくる小学生に反撃する程度の井浦じゃないんだよ」


 ただただ重力が強くなるだけである。だが、集中できていないのか、大した強さはない。普通に耐えられる。


「わかるかい? なんなら英語で言ってやろうか。どぅー ゆー しぃー わっと あい みーん?」


 まだ重力攻撃は収まらない。


「まだ分からないのか(笑) じゃあ、もっと簡単な事を聞いてやる。コウキくんは滅多に人に電撃を向けない。その上でつよく在れるよう工夫していて、実際、雷速とか超つよい。だがお前は些細な事で人に重力攻撃を向けているだけ。この違いは何だ?」


「........」


 黙っているだけである。



「そうかそうか。分からないか。では答えを言おう。ズバリ、能力(ジャガイモ)を投げているか、使っているか。....グラ子は能力を使えていない小学生って事で....」


 はぁ。いつの間にか説教になってるな。道なんて教えて貰えそうにない。



「能力を使うっていうのは....」



 一瞬で両手からアルミ缶を出し、その片方を強い重力の中、下に向けて叩きつけるように投げる。


「何っ!?」


 何って、ただのアルミ缶が音を立ててアスファルトに強く叩きつけられただけだな。

 だが、グラ子は驚いた顔になり、顔を逸らして怯む。


 その隙にグラ子の頬に、投げてないもう片方の缶、水を入れたアルミ缶を当てた。

 そして、重力攻撃からも抜け出した。


「こういうこと。つまり工夫だ。そんでグラ子は工夫の出来ない小学生だ?」


 もういい加減、分かったかな?



「出来るだろ?工夫。それとも、その能力はムカつく林檎を落とす事しか出来ないのか?」

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