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アレ不足の時、奴は来る。(不足してなくても来る)

 現場の都市エリアにいます、井浦です。

 先ほど、あと一時間を告げる放送が流れ、それを活用して井浦氏とフシ氏が鬼に交渉しております。



「さぁどうする? お前ら二人共が俺達の相手をするか、俺の言う通りにするかだ」


 出来れば言う通りにしてもらいたい。二人同時に相手にするのはキツいし。



「なるほど。井浦くんの言った事に従った方が、井浦くんにとっては都合がいいのかい?」


「ああ。そうだな」


「分かった。そこまで言うなら......敢えて従わないでおくよ。その方が面白いだろう?」


 コウキくんはそう言って笑った。

 そういえば、勝負事になると、たまにイジワルっぽくなるんだよなぁ。かっこいいから許すけど。



「あらら。また交渉決裂か。......なら、仕方ない」


 えー、現場の井浦です。またしても交渉は決裂したようです。以上、現場の井浦でした。次回からこの時間は、いうらくんとふしの これなぁに?(テンション高め)をやります。お楽しみに。



 そう現実逃避めいた事を考えているうちに、コウキくんもグラ子も闘う体制になってた。多分だが、俺がハチマキを燃やそうとする瞬間を狙ってるのだろう。

 コウキくん達は早く決着をつけたいと思っているだろうから、俺がこれを燃やそうとした瞬間に、グラ子が重力で動きを縛って、その間にコウキくんが雷速でバンダナやらハチマキやらを一瞬で取るつもりだろう。


 対応する為には...どうしよう。



 フシアタックで先手を取るか。でもフシだから心配なんだよなぁ。ユカリヨさんがどこまで動けるかもまだ微妙に分からんし....

 


 そう思いながら、少しずつ手に持ったハチマキをフシの火に近づけていく。



 どうする。缶を出すか。困った時には缶を出すのが俺の定石だが、実はコウキくん達は俺が缶を出す瞬間を狙ってるんじゃないか?いや、でも........


 一瞬の内に宇宙の真理を解き明かせるくらい悩んだ末、缶を出そうと決めた。


 俺はハチマキに気が引くように動かしながらも、ハチマキを持っていない方の手を背後に隠して缶を出そうとする。




 だが、その瞬間、この場に居る誰のものでもない声が聞こえた。



「みなさんそこに立ってー、何を睨み合っているんですか?」



 コウキくん達の目線が俺の後方へ向く。


 俺も反射的に声が聞こえた方に顔を向ける。

 そして俺の目に映った声の主であろう彼は続けて言う。



「もしかして....」


 前髪を掻き上げながら。




「 カ ル シ ウ ム 不 足 で す か ?」




 ホネタロォォォオオ!!!



 なにゆえ。何故(なにゆえ)お前が来たよ? あとそのカルシウム云々が無駄に決まってて気持ち悪いわ。



「バドミントンの人だ....」


 ユカリヨさんがそう呟いた。

 そういえば、いつだったか授業でホネタロウとバドミントンしてたね。どうでもいいけど。



「ボクが燃えてるのはカルシウム不足だからなんでスかね....?」


 ほらここにカルシウム云々を間に受けるアホ鳥が出ちまったよ。



「違う、常識不足だ」



 フシが燃えてるのは存在自体が常識不足だからだな。誰だよ、こんな生き物出した奴。おぉん? 顔見るついでに一斗缶|(塗料とか入ってるイメージの直方体の缶)の角でゴツンってやってやる。



「なら仕方ないでスね」


 常識不足を難無(なんな)く受け入れたフシはもう放っておこう。

 だが、ホネタロウの登場をキッカケに、緊迫した空気が解けた気がする。


 今なら..

 

 そう思った時、突然『バリィン!』という音が何十にも重なったように鳴り響き、思考を遮った。

 周囲の建物の窓ガラスが割れた音だ。



「「ゆかり様、井浦さん、 下がって!」」


 路地裏から聞こえた叫び声を聞いて、理解した。

 これはホネタロウが出てきた事も含めて、行動班の奴らがやっている事だ。いや、迎撃班をやっていた奴らも来ている。

 ホネタロウは相手を油断させる為にわざわざ正面から来たのか。なぜホネタロウになったんだ。逆に才能を感じるわ。


 割れた窓ガラスの破片が俺達とコウキくん達の間を断つように降って来た。

 それぞれが、距離をとる為に(うしろ)へ跳ね退く。

 ガラスを操れる能力の奴がいたのか。それとも、これは合体技みたいな感じでやっているのかな。


 操る力は微弱なのか、降ってくるガラスに大した勢いは無い。でもガラスは、ボクシングのリング程度の広さでコウキくん達を囲むように降っている。


「今だ!やってくれ!」


「任せて!」



 そんな声が聞こえたと思うと、ガラスの破片はコウキくん達を取り囲む壁のように形を変えていった。壁の高さは二メートル程度だ。


 そして、いつの間にかガラスの壁の内側にはコウキくんとグラ子の他に、闘争者達が幾人か入っている事に気がついた。


 まさかこいつら、この壁の中で闘うつもりか。

 


 ガラスの壁は少しずつ、誰かの能力によって金属に変わっていく。


 いい連携だ。でも......



「あの二人を壁で囲った中で闘うのは効果的じゃあないぞ!? いくら多勢でも、相手が悪い!」


 金属へと変わりゆくガラスの壁を叩きながら、その奥にいる闘争者の奴に言う。



「ゆかり様、井浦さん、行って下さい!ここで俺達が時間を稼げば井浦さんは残れる!」


 なにいってんだ。


「おい正気か? 俺がここで逃げたって、俺が残ったって、お前らにとっては意味は無いぞ?」


「いいんですよ! 見たでしょう? 井浦さんの缶詰を食った奴ら、みんな能力の調子が良いんですよ!」


「!!」


「だから、また缶詰食べさせて下さい!」


 なにいってんだよこいつは。なんでお前ら、こんな無駄にカッコイイんだよ。



「分かった! 安く売る!」


 お前らのこと、缶詰をまた食ってもらうまで忘れないからな。



「金取るんですかぁぁ!!?」


 その言葉を最後に、ガラスは金属へと完全に変わり、中の様子が見えなくなった。



「金取りますよー!」


 俺は精一杯、壁に向かって叫ぶ。



「井浦くんブレないね.... それはそれで、どうするの? 逃げる? 」


 うーん、逃げる....か。出来ればこの壁の内側に入って奴らと共に闘いたい。



「根っこでトンネル掘って壁の内側に入るとか、できるか?」


「あれは結構、時間がかかるから...」


 まじか。



「じゃあ逃げるしかない....か」


 この壁が邪魔で手助けはできない。いや、その為の壁なのか。


 内側から、『全力で行くよ』と、コウキくんの声が聞こえてきた。



「....フシ、この壁の中にメテオだ。あくまで援護としてだぞ?」


「了解でス。井浦さんもブーンを祈りまス」


「ああ、ブーンを祈る」


 敬礼してから上へ飛んでいった。



「よし、逃げるぞ」


「....うん」


 

 唇を噛みながら走る。

 これはただの遊戯(テスト)だ。いくら勝負形式でもガチになる事じゃない。自重しろ。心の中でそう言い聞かせた。


 ............



「ユカリヨさん、二手に別れて逃げよう」


「....わかった」


 少し考え込むように黙っていたが、分かってくれたみたいだ。


「ありがたや」


「ちゃんと逃げてね?」


 念を押すように言われました井浦です。



「もちろん。超逃げる」


 逃げる逃げる。超逃げる。



「じゃあの。また会おう」


 そう言って路地を曲がり、ユカリヨさんと別れた。



 ........ふぅ。




 あんれー、道に迷っちゃったなぁー。どこに逃げれば良いかわっかんないなぁー。(棒読み)



 おおっとぉ、あのフシメテオが落ちてる方向に行けば、道を教えてくれる人がいそうだなぁー。(棒)



 もうこれは行くしかないなぁー。道を聞きに行かなきゃー。(ぼ)

 

 この迷子(まいご)の井浦くんはどうすればいいかを、教えてもらいに行くかぁー。



 井浦、迷走中。

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