捕まりましたが、井浦は元気です。(全て作戦通り!)
井浦、都市エリアに参上。
ここが捕獲された人達が閉じ込められる場所、捕獲者場があるエリアか。
確かにビルとか本格的に建っててなんか都市っぽい雰囲気はある。
監視カメラを見つけては、死角になりそうな所に缶を置いてゆく。
爆発缶と言いたい所だが、それだと爆発が監視カメラに映ってしまうので、今回は監視カメラに映らないものが缶に詰まってる。
革命の初手はこの缶達にドンと決めて貰うのだ!
「コウキさんが近づいてきてまス」
俺に付いてきたフシが教えてくれた。ちなみにユカリヨさんは別行動をして貰っている。
「コウキくん以外には誰かいる?」
「いないでス」
「よし、じゃあ会おう」
「そうでスか。この交差点っぽい所を曲がればすぐでス」
「おう。じゃあフシは、ユカリヨさんに『井浦くん捕まりました』って伝えに行ってきてくれ」
「了解でス」
フシはそう言うとすぐ飛んで行った。俺も行くとしよう。
俺は車道っぽい所の真ん中に出て歩く。
交差点を曲がるとフシの言った通り、コウキくんが歩道っぽい所を歩いていた。
「おっ、井浦くんだ。やっぱり堂々と歩いてるね」
コウキくんは、いつも通り普通に話しかけてくる。カッコいい。
「井浦は、もう逃げないって決めたのよ」
井浦は、ドラマチックに言ってみたのよ。
「最初から逃げてないだろう?」
見抜かれてしまったのよ。
「逃げなくても捕まらなかったからな。だから俺の入るべきブタ箱を探しに来ちゃった訳だよ」
「なるほど。捕獲者場の前に脱走対策で見張ってる鬼がいるけど、せっかくだし僕が捕まえておこうか?」
コウキくんは少しだけ笑った。
「ああ頼む。このバンダナを取ってくれ」
「了解。バンダナ取れたら先生が来るから、その先生について行ってくれ」
コウキはそう言いながら俺のバンダナを取った。
「これでいいのかい?」
普通に取っちゃったけど?って顔をしてるコウキくんもステキ。
「ああ。全部うまくいってる」
俺はただ、事実を答えた。
そして、それを聞いたコウキくんは、一回瞬き程度に目を閉じてから、爽やかな感じに笑った。
「....なるほど。それでも僕は普通にしていればいいかい?」
コウキくんは俺が何かを企んでいる事が判ったのだろう。
ここで『何を企んでいるんだい?』などと野暮ったい事を聞いて来ない所とかがクール。
「そうしていてくれ。だが、小さい炎が天井に上がったら、ちょい普通じゃなくなる前兆かもしれない」
「分かった。気に留めておくよ。じゃあ、先生が来たから僕はお先に」
「うむ」
そして俺は、先生に連れられて捕獲者達の元へと向かった。
しばらく歩くと、先生が立ち止まる。
「....ここだ」
先生がそう言って指差した場所は、周囲より大きい建物だ。
その前にはメガネを掛けた男が立っている。頭にハチマキを巻いているので、奴が見張りの鬼なのだろう。
俺のバンダナは奴の隣にある大きな箱に入れられた。箱にはすでに、沢山のバンダナが入っている。
それらを横目で確認しながら、俺は捕獲者場へ入っていった。
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『十二時を過ぎました。現在の逃走者は四十五名です』
順調に、逃走者が減ってますね、おにーさん。
「うぉぉぉ、腹減ったッタぜぇーー!!」
「そうだなぁぁァァ!!昼飯は無いのかぁぅうぅうーーー!!?」
順調に、捕獲された奴らの腹も減っています。
捕獲者は大広間のような所に、捕まった全員が閉じ込められているので、他クラスのキチガイが騒いでいてうるさい。
だが、全員が同じ所に閉じ込められているのは、ほぼ脱出の作戦会議でもして下さいと言われているようなものだ。
「うぉぉぇおぉォっフぅー!!!!メシはどこだァァるる(巻き舌)れンロォォー!!」
それと、多分だがこのテスト中は昼食など出ない。
だが、かの井浦はこう言った。『飯が無いなら作ればいいじゃない。能力で。』と。
つまり........
「メシなら、ここにある!」
俺がそう一喝すると、キチガイが鳴き止んだ。
「今、メシがあると言ったのは誰だ?」
「ご存知の方にもご存知でない方にも等しく知れ渡れ! それを言ったのは、この井浦くんだ!」
なんか注目を集めているので、とりあえずポーズをとっておこう。
そう思って、咄嗟に俺がとったポーズは、『ウラークイーンのポーズ』と呼んでいるものだ。某ジョ○ョ立ちっぽいが、ちょっと違うから。肘の角度が違う。
「俺は、缶を作る能力(おいしい)だ!」
ドドン!!!
最近は詰まらないものまで缶詰になって出てくるけど気にすんな。
「つまり、メシが食いたいなら俺が缶詰という形でメシを出せる」
米の缶詰と、焼き鳥の缶詰を出して置く。
フシがいれば、鳥が焼き鳥を焼くという図が出来たのだが、まぁいいか。
米の缶詰は、普通に炊けてる米が入っている。一人暮らしの味方。
「それは、食えるのかっ!?」
みんな空腹なのだろう。缶詰を凝視している。
「食いたいか?」
俺は缶を開けて、こんな事もあろうかと持ち込んだマイ箸を持つ。
食欲をそそる匂いが立ち込める。
「もう腹減って死にそうなんだ!」
なるほど、そうかそうか。
「よぉし良いだろう。ただし! 条件がある」
「条件?」
「ああ」
俺の両手から新しく米缶と焼き鳥缶を量産され、積み上げられてゆく。
早い話、と続けて
「これあげる代わりに、ここを脱走して『闘争者』になってくれない? 」
理解が追いつかないって顔をされた。もっと要約して言おう。
「鬼退治、しようぜ?」
顔の影を濃くして、ニヤリと笑いながら。
捕まった人達のノリが良いですが、話をスムーズにする為なので気にしないで下さい。




