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E缶は最後まで取っておいた方がいいと思いました。(E缶=井浦缶)

 デデドン。



 井浦は目覚めた。


 マイルーム、マイベッドの上。


 時計は〔12:23〕の数字を表示している。


 ........


〔12:24〕に変わった。



 カーテンの隙間から、青い空が見える。


 そこから差し込む光が、昨日、帰ってすぐ脱ぎ捨てた制服を照らしている。



 あー、制服を洗濯しなきゃ。それとシャワーを浴びよう。



 昨日、事情聴取されて帰れたのが深夜過ぎ。そして俺は力尽きた。


 トゥ ビー コンテニュー。俺は、ゆっくり起き上がる。

 そしてまた倒れた。


 E缶を使おう。そう思いながら青色の、真ん中に大きくEと書かれた缶を出す。

 E(イー)ってのはあれだよ。井浦の(イー)って意味でのE(イー)だよ。井浦缶だよ井浦缶。毎朝飲もう、井浦缶。井浦缶、翼を授ける。


 体力全快。これに神経活性の追加効果が付けると、EE缶(井浦缶EX)になるが、その必要は無いので普通のE缶にした。



 よし、今日は学校を休んでるし、動物缶の実験でもするか。


 今頃、瀬田さんは昨日の後始末に追われているだろうし、能高の奴らは能力テストに勤しんでいるだろう。


 能力テストは明日もあるらしいので、今日学校を休んでる俺は、明日のテストで今日の分も受ければいい。勝った。

 


 井浦くん頑張る。



 ....その前に洗濯して、シャワー浴びて、なんか食おう。そんでから動物缶の実験を頑張ろう。





[][][][][]




 今回の実験はコレ! 動物缶!


  \拍手パチパチ/



 昨日!なんと! 缶の中から筋肉ムッキムッキの犬が出てきました!

 

  \喝采ワーオ/



 なので、なんと! 家の中では使えません! というか、使いたくありません!


  \ブーイング/



 ブーイングをやめてください! 缶を投げないでください! ってかこの歓声はどこから来てるんだ。メタ発言をやめてください!




 ....という訳で、俺は空き地で実験をすることにした。



 近くに、人目につかない空き地があるので、そこに行こうと思いながら玄関を開けると、ちょうどヒナキちゃんが家の前を通っている所だった。


 これは、運命か。



 ヒナキちゃんはこちらを見て、何か嬉しそうに笑いながら話しかけてきた。


「井浦さんだ! どうしたんですか?」



 ヒナキちゃんが視界に入るだけで、背景に向日葵(ひまわり)の咲く草原的なものが見える。これがヒロイン補正。(確信)



「ああ、ちょっと新しいタイプの缶を試しに空き地へ行こうとな」


「新しいタイプの缶!凄いですね!........学校はどうしたんですか?」


 ヒナキちゃんは首を少し傾げながら言う。


「休んでる」


「そういえば昨日の夜、お兄ちゃんが、『井浦くんから連絡を受けた』って言って家を飛び出して行きました。何かあったんですね?」


 鋭いですね。



「まぁ、そうだな。ヒナキちゃんはもう学校終わったの?」


「はい! 今日は早く終わりました!」



 なるほど、つまり井浦が、ヒナキちゃんとここで出会えるように学校は早く終わらせてくれたのか。ありがとう、学校。

 君の事は忘れても忘れない。今高校サボってるけど。



「そうなんだ。良いね」


「はい! 良かったです。井浦さんはこれから新しいタイプの缶の実験に行くんですよね?私も行きたいです!」


 うおお。ヒナキちゃんが来ると、危ないし見苦しいからムッキムッキの犬が出せない。

 だが! 井浦紳士(ジェントルメン)として断る訳にはいかない!


「もちろん来てくれて良いぞ」



 よぉーし、ヒナキちゃんが来てくれるなら、井浦くん張り切っちゃうぞぅー。

 

 そう思いながら俺とヒナキちゃんは空き地へ向かって歩き始める。



「やった! どんな缶なんですか!?」


 ヒナキちゃんは目を輝かせながら聞いてくる。可愛い。



「動物が入っている缶だ。ヒナキちゃんは動物とか大丈夫?」


「はい! 動物は好きな方です! どんな動物が出せるんですか?」


「今出せてるのは....鯖と.......犬だな」



 うん。鯖と犬だ。偽りは無い。



「鯖と犬ですか!?どっちも缶に入る大きさじゃないですね?」


 そうだな。特に犬の方な。


「もしかして、大きい缶に入って出てくるんですか?」


「いや、どっちも普通の鯖缶くらいのサイズの缶から出てくる」


 まぁ、物理法則とか微妙に捻じ曲げてる缶とか普通にあるし、不思議に思ったら負けである。



「凄いですね! ...井浦さんに勝てる気がしない....」


 不思議に思っちゃったか。



「ヒナキちゃんが俺に勝ちたいなら俺はいつでも負けるよ?」


「そういう問題じゃないですけど....」


 ヒナキちゃんはそう言って目を逸らす。

 違ったっぽいね。お歳頃の女の子の心情は永遠の謎である。



 そう考えているうちに、空き地へ到着した。



「よし、空き地に着いたし、好きな動物の名前でも言ってくれ」


「えーと、ウサギとか」


 ウサギか。ムッキムッキじゃなければ良いのだが。

 普通のウサギをイメージすればいけるか。



「ほい」


 とりあえず缶は出せた。



「私、開けてみたいです!」


 うーむ、これは俺が開けた方が安全なのだろうか。

 だけどポチの時は開けたトキサの指示を聞いてたし、ヒナキちゃんが開けた方が安全なのかもしれないな。



「ああ、開けてみてくれ」


 そう言って缶を渡す。



「では開けます。えいっ!」


 おう、躊躇なく開けたな。


 だが、出てきたのは普通の白ウサギだったので、安心した。


「わぁ! すごいですね! 本当にウサギですね!」


「そうだな。何か指示を出してみてくれ」


「わかりました。お手!」


 ヒナキちゃんは、しゃがみ込んでウサギに手を出すと、ウサギはヒナキちゃんが出した手に前足を置いた。


 お手って言った瞬間、少し身構えちゃったよ。

 ポチのお()が、ここに来てトラウマになったな。



「可愛いですね」

 

 ヒナキちゃんはこちらを見て嬉しそうに笑う。


「うん、可愛い」


 可愛いは正義。可愛いは鉄則。ヒナキちゃんは最強。


「井浦さんもどうですか?」



 そういえば、開けた人以外の指示は聞くのかな?


 そう思いながら、屈んで指示を出す。


「おいで」


 するとウサギはこちらをじっと見た後、地面を抉りながら跳ね、俺の腹部に突撃してきた。


「らびっっつ!!」


 そんな俺の呻き声が上がった後、一瞬だけ俺の身体が宙に浮いた。



「ひぃ、ひぃ、ふぅ〜」


「だっ、大丈夫ですか?」


 ヒナキちゃんが俺を心配して来る。ああ、井浦、この人生に悔いは無い。



「ちょ、戻れって指示して....」


 全然普通じゃないわこのウサギ。

 この突撃を受けた腹が証明してる。

 それとウサギが跳んだ時に出来た、ウサギの足型に抉れた地面がそれを証明してる。


「戻れ」


 ヒナキちゃんの指示を聞いて、ウサギは缶の中に戻っていった。


 ああ、腹痛え。井浦じゃなかったら、意識飛んでたわ。良かった井浦で。


「ちょっと休憩させて....」


「は、はい」


 ふぅ、どうやら、動物缶から出る動物は、普通じゃない個体が出るようだ。

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