刺激的な夜が始まる(悪い方向で)
〜今回の視点変更〜
瀬田→浦→瀬田
能力者。それは時として、力に溺れ、悪に染まる。
そんな能力者に対する為に、警視庁には能力課がある。それらを総ているのが俺だ。
「諦めないなら、俺は強行手段に出るしかないぞ?」
そうなるまでに至ったのは、この能力を持って生まれた事が、大きく貢献している。
「ナンデ....何で........効かない?」
俺の能力は、最初は意味が分からなかった。何をどうできるのかすら分からなかったのだ。だが、この能力が解った時、大きな力を与えてくれた。
「.......作用 反作用の法則って知ってるか?」
「シラナイよ。どうでもいい」
どうでもいいと言われてしまった。
「そうか。なら諦めろ」
俺の能力は、自分に対する物理法則を書き換える能力だ。
例えば、今俺をつき刺そうとしているこの棘は、俺を突き刺す、すなわち作用すると同時に、棘にも多少の負荷、つまり反作用がかかる。それが作用と反作用だ。
俺の能力は、そこから自分にかかる力、作用を無しにする事が出来る。つまり、反作用のみとなり、棘が壊れるだけの結果となるのだ。
「俺には、物理攻撃が効かないんだ」
爆破やら雷撃やら重力攻撃も効かん。幻覚缶は勘弁だがな。
それと一度に変えられる法則の数にも限りはあるし、まだ変えられない法則もある。
だが、物理攻撃は大体対応できるようになった。
「................ハハッ、ハハハッ、そうか。そうだったんだー。じゃあ勝ち目はナイじゃないか...........」
そう言った瞬間、彼は倒れた。
「はてさて、どうするかなぁ」
思ったより時間を取られてしまった。まだやるべき事が残っている。
........あいつら、暴れてないか心配だな
[][][][][]
「よぅ食う娘だな」
「ふぁい、いふらはん、ありがとうございまふ」
「飲み込んでから言ってくれ」
コウキが連れて来た少女は、缶ごと食うんじゃないかって思えるほどの勢いで缶詰めを食っている。
「それでさっきの犬?は井浦くんの缶から出て来たのか」
コウキくんには、大まかな事の経緯を話した。
「欲しい? 好きな動物出せるぞ?」
「わん!」
ポチ、お前そろそろ缶に戻れよ。お前のせいでこの部屋に微妙な圧迫感が生まれるんだよ。せめてジョ○ョ立ちして腕組むのをやめろ。もう物理的に狭いんだよ。
「........いや、遠慮しておくよ」
「そか」
「....それより、さっきので僕達の事がバレたようだよ?」
コウキくんはそう言って廊下の方を見る。
確かになんか声が聞こえてきた。
『あら〜ワタッシ達の子羊ちゃん達がボロボロじゃな〜い』
『ん〜そうね〜、匂うわ〜あんの部屋から匂うわぁ〜ん』
『...そうっすね』
その声はだんだんと近づいてくる。
三人........そのうち二人はオカマか。世も末だな。
「ここの給湯室、人気過ぎるだろ。どんだけ人来るんだよ」
俺は何でもないように呟く。
「ポチ、頼むわ」
「ポチ、行ってきぃ」
俺とトキサが言った。
ポチ、出動。
ポチは、廊下に出ていった。
『あんら〜、かんわいいワンちゃんだこと〜』
『いやどう見てもアレ......』
『ワタッシが相手するわ〜』
『わかったんわ〜。じゃああんの部屋に先に行かせてもらうわんよぉ〜』
廊下から混沌とした空気が流れこんでくる。ポチ、大丈夫かな?
廊下で何かと何かがぶつかり合う音がした。
『ふん!!!....このワンちゃん、なかなかやるわね』
『ワォン!』
なんだ、奴らは筋肉系オネェか。
そう思っていると、こちらにも筋肉系オネェが降臨していた。
「あんら〜、ん良い男がいんるじゃないの〜ん」
小爆発缶。
鼓膜を突くような音と爆風が起こる。
....どうだ?
「ん〜、刺激的ねぇ〜」
立ち込める煙の中から声が聞こえた。
.......おいおいまじか。爆発力は抑えたが、それでもまともに爆発を食らって立ってるのか。
瀬田さんかよ。どんな能力だ?
「........これは驚いたね。出会って速攻で爆発缶を使う井浦くんも井浦くんだけど」
「いや、生理的に使いたくなった」
筋肉オネェの威力が予想以上にハンパなかった。
「手榴弾よりも弱かったわんね〜」
奴が言った。手榴弾受けた事あるのか。
「ん〜でも良いわ〜。刺激的よ〜」
「お前の喋り方も刺激的だんわー。手榴弾より強いんわー。悪い方向でな」
俺は煙から出て来た奴を見る。ピンク色のタンクトップから隆起している。髪型は長めのツインテールである。
わかっていただけただろうか? 俺が爆発缶を使った気持ち。
ほら、コウキくんなんて連れて来た少女の目を手で優しく覆ってるよ。
「君は見ちゃいけないよ」ってコウキくんが少女にやってる構図がもう見ちゃいけませんって感じになってるよ。
「余所見すんな。生贄にすっぞ?」
俺の懐に、オネェじゃない方の奴が潜り込んでいた。彼は、ナイフを俺の脇腹から心臓部にかけてを切り裂こうと振り始めている。
まずい。そう思った瞬間、稲妻が発生した。
彼はそれをいち早く感知し、距離を取る。
「大丈夫かい?」
「ああ、危なかった。すまんな、もう大丈夫だ」
黒髪に眼帯をした少年は筋肉オネェの隣まで戻っている。
「ん〜、二人とも刺激的で良いわんね〜」
「もう少しだった....」
そう少年が言った時、その奥の廊下で粉塵が起こった。
「ワタッシの顔に傷を付けたワンちゃんわ〜あなたが初めてよ〜」
「ガルル....」
ポチの左足と右腕がおかしい方向へ曲がっている。
「ポチ!戻れ!」
トキサが叫んだ。ポチは缶の中に吸い込まれるように戻った。
「あんら〜? もう終わり〜? じゃあ次にかわいがるのはあの二人でいいのかしら〜ん?」
「そうよ〜、ん〜楽しませて頂戴〜」
ならんでいるオネェと少年に、もう一人オネェが加わった。....これは酷いな。
[][][][][]
落とし穴を抜け出して先に進むと、エレベーターがあった。地下へ行けると思ったのだが....
「これは....電子ロックか」
〈1111〉と入力してみたが、開かなかった。
コウキを呼ぼ......そういえば、連絡手段が無いな。
仕方ない。一旦戻るか。




