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薄暗いんだよこの部屋。(誰か電気点けろよ)

 ああ、やっちまったな。もうどうしようもないかもしれない。


 外を見ると日は沈み始め、薄暗くなってきている。すると当然、この来客室も薄暗くなるのだが、外の植木が他の部屋の電灯の光を反射させてこの部屋を微かに照らす。

 目の前に座っている奴の薄ら笑いは、それらと相まって不気味にすら感じられる。



 沈黙は肯定か。なら叫べば否定なのかな?それともずっと沈黙してた方がいいのかな?


 でも、どちらにしろ確信させれしまったようなもんだからな。

 ここからは、泥のかけ合いになるだけだろう。



「いや違う......もっと恐ろしいものも作れますよね?」



 猟銃は出せねぇぞ?



「俺が作れるのは缶のみだ。尤も、その缶の中に何が詰まっているのかは、お楽しみだがな」


「そうですね。ですが貴方は非常に貴重な存在ですね。だから敵対関係はやめておきたい」


「じゃあどんな関係を望むんだ?」



 その質問にくまタヌは顔の前で指を組んでから答える。



「もちろん、主従関係ですよ」



 そして彼の腕が、熊のような腕になり、その爪は頬杖をついた俺の首に触れる。



「驚きましたか? 私にも能力はあるんですよ」


 それも聞いたな。確かに動物に化けている。



「確かに貴方の能力は強力だ。だがこの状況で貴方には何が出来ますか?」



 この今にも俺の動脈を喉笛ごと抉ろうとする爪に対して俺は何も出来ないな。


 

 植木を照らしていた光が消え、それに伴いこの部屋も暗くなる。



 いや、何も出来ないと言うのは少し違うかもしれない。



 ドアがノックさせる。


 俺は何もする必要が無いのだ。



「命拾いしましたね」



 小声でそう言ってからノックに対して「どうぞ」と言う。熊の手が引っ込んだ。

 


 ドアが開かれ、廊下の光がこの部屋に差し込んだ。ハゲ頭から後光が差しているようになっている。



「いやぁ、すみませんがもうそろそろお時間ですので、私にもある程度の話の内容をお聞かせ下さい(・・・・・・・)



 そう言いながら部屋に入ってくる。



「特に、『この状況で貴方に何が出来るか』などを」



 くまタヌキの目元が震えた。



 八頃(ピッコロ)はずっと、初めから隣の部屋でこの会話を聞いていたのだろう。



「ですが、これであなたの要望が無くなった訳ではないのでご安心を」



 八頃(ピッコロ)は俺を睨む。


「明日、能力テストと言うものがあってですね、そこで井浦の能力に成長が見られなかったら、あなたの要望は了解しましょう」


 当然、八頃(ピッコロ)は俺の爆発物云々を聞いていない訳が無い。


 ああ、本当、やっちまったな。



「.......仕方がありませんね。分かりました。そうしましょう」



 くまタヌに拒否権は無く、言われた事を受け入れた。



「ありがとうございます。では、今日はそろそろお引き取り下さい」


 訳: 分かったなら、はよ帰れ。



「ええ。遅くまでおたくの生徒をお借りして申し訳ない」


 訳: 今度は借りずに貰いますのでご勘弁。



 そう言ってくまタヌは、そそくさと部屋を出て行った。




「おい井浦」


「いい奴でしたね」



 声音は厳しい。冷や汗が出てくる。



(とぼ)けても無駄だぞ?」 


「はい」


 もうどうしようもない。



「さっき奴が言っていた事は本当だな?」


「俺は缶しか作れない」


「中には何が入っている?」 



 部屋は暗く、八頃の表情は確認出来ない。



「缶の中に入る物しか入ってないっすよ」


「そうか」



 何故か納得したような、悟ったような声が聞こえた。



「能力テストは、ももの缶詰と、みかんの缶詰と、缶コーヒーくらいにしておきますよ」


「また売るつもりか?」


「買ってくれるのか?」


「それは分からん」


 買えよ。特別に千円で売ってやんよ。


 

「まあいいか。それより俺の能力、どう思う?」



 俺の質問を最後に、沈黙が流れる。



「今までは、お前に似てダメな能力だと思っていたが......」


 おい。「お前に似て」って部分は要らないぞ? 文章になってたら、その上に墨塗っちゃうレベルで要らない。



「だが........恐ろしいものだな。熊谷商業の倉庫の謎の爆発事件。不思議な現象。お前の能力は恐ろしい程に、強かったんだな」



「恐ろしい....か」


 上手くいかないな。弱すぎてもダメ。強すぎれば恐ろしい。



「ああ、これを学校側が知ったらお前はただでは済まないだろうな」


 そりゃそうだな。事件を起こした能力。謎の現象としか説明させていなかった事故は、全て俺の缶がバーストしちゃったのが原因だもんな。



「そうなったら俺は、その時こそ全力で抵抗させて貰う。まぁ、 どこまでこの星の地形が変わるかはやってみないと分からないですけど」


 俺の能力がばれたら脅迫。これ基本。



「つまり、秘密にすればいいのか?」


「はいさ」


 良かった。これで世界の危機は救われたな。



「だが、隠す必要が無いものは使ってくれよ?」


「そうするつもりではある」


「なら良し。もう外は暗いから早く帰れ」


「へいへい」


「返事は はい だぞ?」



「さいなら!」


 そう言って速足に部屋を出た。廊下の電灯が眩しく感じる。




 ふぅ、今日の帰り道には何かが出そうだ。


 獣、特に熊や狸には気をつけた方が良いかもしれないな。

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