2010年3月 基本方針とアレルギー対策
志を抱いたまでは良いものの、元来の私は怠け者です。面倒くさいことは嫌いです。
よって、至上命題はこれでした。
――いかに楽をして、英語力を上げるか。
そうです、私は英語力を何とかしたいだけで、英語を勉強したいわけではありません。目的は単位取得です。英語はただの手段に過ぎないのです。
それに英語力といっても、私に必要なのは読解力だけです。幸いにして当時の私は読解力だけが妙に高く、好きなジャンルの原書ならば、それなりの速度で読めるだけの力はありました。
ですが、読む速度はともかく、語彙の面では大いに問題がありました。歴史物やSF、ファンタジーばかりを読んできたので、ニュースや新聞に出てくる一般的な語彙がすっぽり抜けているのです。この偏った状態を何とかしなければ、専攻予定の社会科学系の英語文献など読めるはずもありません。
しかし、私の性格上、机にかじりついて勉強するのは論外です。
というわけで、私は通勤時間を利用して英語のリスニングをすることにしました。読書用の本を持ち歩く習慣をやめて逃げ道を断ち、リスニングでひたすら英語をインプットするのです。その代わり、リスニング以外の手段は使わないと決めました。
リスニングでリーディングの勉強をするというのは、自分でも奇妙な話だと思います。
しかし、一人暮らしなので家事もしなければなりませんし、資格取得のための勉強も必要でした。目的のための手段に過ぎない英語に捻出できる時間は、通勤時間くらいしかなかったのです。
私は生まれてはじめて、携帯音楽プレイヤーを購入しました。
最初の教材は『リアル・マザーグース(The Real Mother Goose)』です。
マザーグースのオーディオブックには、音楽に乗せて歌っているものやBGM付きなど色々なタイプがありますが、これはシンプルに、305の詩を約1時間45分かけて朗読してくれるだけのアルバムです。
マザーグースを選んだのは、英語が特に好きではなく、リスニングも初めて体験する私ですから、間違いなく拒絶反応が出るだろうと考えたからです。本格的な教材に移る前段階として、幼児向けのマザーグースでリスニングというものに慣れておく必要があると判断しました。
通勤時間は往復で1時間弱ですが、休日は聴きません。でも、てくてく歩いて買い物に行く時も聴く予定だったので、おそらく1日平均1時間のリスニングということになるでしょう。
1年で365時間、3年で1,095時間のリスニングにどれほどの効果があるのか、その時点では全く未知数でした。
ですが、何もしないよりはましだろう、と私はリスニングに踏み切りました。特に気負いもありませんでした。というのも当時、並行して資格取得のための履修手続きを進めていたからです。私にとっては、最初の1年で取らなければならない資格のほうが、3年以上先の英語よりもはるかに重要でした。




