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2016年1月―3月 エピローグの後で

 「リスニングだけで英語力をどこまで上げられるか」は、2010年3月から2013年3月にかけての約3年間を、英語学習という観点で切り取った個人的な体験談です。


 消化不良なエンディングなので軽く近況を付け足してはみましたが、本来の趣旨は、3年という限られた期間、そしてお金も時間もままならない状況で何ができるか、という問いに対して私が出した答えを描くことにあります。


 設定された3年はすでに過ぎ去りました。


 このエッセイは前後編をもって完結しています。途中、出来心で受験したTOEICも名称が変わったようですので、完全に過去の出来事になったといえるでしょう。ですから3年間の挑戦が終わった後のことは、何を書いても蛇足にすぎません。




 しかし、わざと読みづらく書いたこのエッセイを、それでも最後まで目を通して下さった方々は、おそらく一つの疑問を共有して持っておられると思うのです。――本当にできないのか、と。




 2015年5月。

 エッセイを書いて投稿した時には、答えは一つでした。――本当にできないのです。




 ◇ ◇ ◇




 リスニングの素材の一部をオーディオブックに切り替えてから、しみじみ思ったことがあります。

 大変お世話になっておきながら失礼な話ですが、やっぱり勉強用の教材というのは面白くないものです。オーディオブックと聴き比べると、どれだけ退屈なのかよく分かります。

 ただしこれは個人的な好みの問題もありまして、後編のあとがきでご紹介しているリスニング素材には、罪はありません(注:例外として、『ナイン・インタビューズ』全文と『ACADEMIC』の中・上級編の半分くらいは、相性が良かったのか普通に楽しめました)。単に私が、ビジネス英会話はもちろんのこと、ニュースや海外旅行や日常英会話にも全く興味が持てないのが一番の原因なのです。


 でも、どうせ聴くなら面白いほうがいいに決まっています。


 私は少しずつ、リスニング用のオーディオブックを増やしていきました。節約生活を送っているのは変わらないので、そんなに一気に購入はできません。そして、大変申し訳ないと思いつつも、携帯プレイヤーの容量がいっぱいになって入らない時は、面白くない教材を一つずつ外していきました。




 そして年が改まり、2016年になった頃から、私はちょっとした悪夢にうなされるようになりました。


 夢の中で、私は必ず英語を喋る状況に追い込まれていました。相手はガイジンさんで、日本語が全く通じないのです。英語を話すしかありません。

 私は必死になって英語を話し、時々、奇々怪々な英文を口走ってしまったことに気がついては、慌てて訂正する……そんなことを繰り返していました。


 これのどこが悪夢なのかと言われるかもしれませんが、普段から無口な私にとっては、十分、悪夢でした。

 日本語ですら喋りたくない時があるというのに、なぜわざわざ得意でもない英語で喋らなければならないのでしょうか。私はこんな不条理な夢を見るよりも、睡眠時にはきちんと熟睡したいのです。




 幸か不幸か、数か月後、私は悪夢から解放されました。


 理由は明らかでした。

 2016年4月から生活環境が変わり、英語のリスニングをほぼ休止することになったからです。


 私は通勤時間や買い物をする時間をリスニングに充てていましたが、引越しして自動車がないとやっていけない地域で暮らすことになりました。

 それほど車の運転が得意なわけではありませんから、通勤中に英語を聴くなんて危険なことはしたくありません。よってリスニングは中止です。

 この文章を書いている時点で、最後に英語を聴いたといえば、半月ほど前、病院への行き帰りで電車を使った日くらいでしょうか。


 現在は一か月に一回か二回、合計数時間リスニングができればもうけもの、その程度の状況です。




 ただ、悪夢にうなされていた期間、私は別のことも考えていました。


 ――今なら別の答えを返せるかもしれない。


 私は以前、エッセイでこう書きました。「私は英語が話せません。ガイジンさんに道を訊かれたら、分かるけど分からないふりをして逃げる自分が容易に想像できます」と。


 でも夢の中では喋るようになったのですから、もしかしたら、逃げる必要はなくなったのかもしれません。

 もしかしたら、私はこう答えるべきなのかもしれません。


 "Probably ― Yes. What can I do for you?"




(2016年11月12日、記す)

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