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きっかけ 2

 ゲームがうつるパソコンの画面を眺めながら僕はキーボードとマウスを操作する。それとあわせて画面の中で自分のキャラクターが動き出す。

 最初にいた地点は前回ログアウトした城下町の地下水道だ。僕はこの城下町を拠点としてPKを行っている。そのおかげでこの町では少し名の知れ渡っている。名が知れるというのはうれしいのだが逆にPKをされる確率もあがるので少しだけ複雑な思いだ。

 僕はキャラクターを操作して地下水道を歩く。途中に出てくるモンスターは弱くナイフの一振りで死んでいてしまう。ドロップ品には目をくれず僕は迷路のような地下水道を歩いていく。

 そして十五回目の曲がり角をまがったその先に外へと通じる出入り口が現れる。

――さてと行きますか。

 僕はまず最初にハイドを自分にかける。効果時間は三十秒。一定時間足の速さを上げるスキルも発動する。こちらは一分。これで準備は完了だ。

 外はあかるい。ゲーム時間では朝だ。その日の光の中を透明な影が疾走する。

 ほかのプレイヤーからは僕は見られない。僕は一気に走り商店街へと足を向ける。そこにはたくさんのキャラクターが集まっておりPKにはもってこいなのだ。

――ハイドの残り二十五秒。

 最初の目標発見。狩りを終えたところだったのだろうか。魔法使いの装備をしたキャラクターが一人商店街のほうへ歩いている。これは最高の獲物だ。魔法職は柔らかく攻撃にも時間がかかるため反撃をもらいにくい。

 僕はそのキャラクターに一気に近づきスキルを発動する。それはハイド中に発動すると確実にクリティカルになる攻撃だ。

 それが当たった相手は体力がガクンと減り半分ほどになった。そこに第二のスキルを発動する。それは威力が二倍の攻撃をする代わりに三秒間受けるダメージが倍になるというものだ。だが相手を殺してしまえば問題ない。

 二本のナイフが敵をえぐり血のエフェクトが舞い散ったその場には魔法使いの死体が倒れていた。

 僕はすぐにチャットを開く。

――さてどんなことを叫ぶかな。

 チャットには罵詈雑言が書き込まれていく。消えろ。死ね。なんてどんどん幼稚になっていく書き込み。

 それを鑑賞して僕は笑いをこらえながら商店街に突っ走る。なごりおしいがハイドに時間制限があるのだ。

――ハイドは残り十秒。

 僕は商店街に飛び込む。そこはたくさんのプレイヤーがいて、にぎわっていた。

 僕はターゲットをだれにするか吟味する。白銀の鎧を着た戦士。荘厳な雰囲気の魔法使いなど様々だ。だがそこに一つ目につくキャラクターが現れる。

 赤い鎧に身を包み身の丈ほどの斧を背負ったキャラクター。筋肉隆々のそのたくましい体を持った男性キャラクター。そして名前がMAMA。

 百位ランキング中、五十六番の強者。

 無課金でそこまで上り詰めた強者だ。

――きめた。あいつをぶっ殺す。

 強者は全力で殺しにかかる。そう決めているのだ。

 僕は残り五秒のハイドが切れる前に買い物をしているMAMAの背後にまわりそしてスキルを発動する。クリティカルのエフェクトが舞いMAMAの体力が五分の四に減る。

 そこに追撃のスキルを発動した。しかしそれがあたることはかなわなかった。

 MAMAが背中の斧を一振り。ものすごい速さでスキルを発動。その余波で周囲のキャラクターをすべてふき飛ばしたのだ。範囲攻撃そう呼ばれる部類の攻撃だ。防御力の低いキャラクターはそれだけでもう死体となっている。

 僕はすぐにスキルを発動する。毒のによる継続ダメージを与えるナイフがMAMAにとんでいく。

 MAMAはスキルの硬直で動けずそれにあたってしまう。継続ダメージはDOTと呼ばれている。特に魔法職のDOTはとても強力だ。僕のは威力はそこまではないが固定ダメージのため硬い相手にも有効。なので戦士系にはこれを使うのだ。

 スキルの硬直から立ち直ったMAMAが動き出す。僕は距離を取りつつナイフを投げ続ける。だがそれは甘かった。

 突撃スキル。MAMAの体が一直線に飛び出し僕のキャラクターを殴りつける。そしてめまい。一秒の硬直が僕に生まれる。それは重大なすきとなる。MAMAのスキルが発動。一定範囲に威力二倍の攻撃をした後そのダメージの半分を自分も食らうというものだ。あたりのキャラクターが巻き込まれ死体の山が作られていく。MAMAは余計なものを巻き込んだせいで体力が大幅に減っている。

 僕のキャラクターはMAMAの攻撃を寸でのところで持ちこたえた。純アサシンだったら耐えられなかっただろう。

――だめだ。相手も死にそうだが先にやられる。

 僕は撤退を始める。スキルを使い二秒間相手の動きを止める。そして毒のナイフを一つ投げ突撃スキルの届かない場所へと町を奔走し逃げるのだった。

 

 

 


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