表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

一歩踏み出したその先に

作者: 親方さん

 高校の帰り道。夕暮れの桜並木の道で彼女に出会った。

 桜の木を眺める長い黒髪の彼女。

 自分と同じくらいの年に見えるから高校生だろうか。

 彼女を見た瞬間、顔が熱くなるのを感じる。

 顔を上げていられなくなり、下を向く。

 しかし、彼女のことがどうしようもなく気になる。

 意を決して彼女に声をかけることにした。

「桜が綺麗ですね。桜が綺麗ですね」

 小さな声で彼女に言う言葉を何度も確かめる。

 顔を上げ、彼女に声をかけた。

「あ、あの、さく」

 だが、そこには彼女の姿はなかった。

 考えている間に彼女はどこかに行ってしまっていた。


 家に帰り、部屋のベッドに身を投げる。

 ふと、先ほどの彼女が頭の中をよぎる。

 顔が熱くなり、衝動でベッドを叩いた。

 ほんの少し見かけただけ。言葉を交わしたわけでもない。

 でも、頭の中は彼女の事でいっぱい。

 こんな事は初めてだ。

 彼女の事を考えるだけでひどく胸が高鳴る。

 今までにも好きな子は何人かいた。

 しかし、ここまで高まる気持ちは初めて。

 そう、僕は今日、本当の初恋をした。


 眠い目をこすりながら、自転車で高校に向かう。

 昨夜はドキドキしてあまり眠れなかった。

 でも、気分は晴れやかだ。

 別に何かが進展したわけでもない。

 もし、また彼女を見かけても声をかけられるのか分からない。

 でも、昨日とは世界が違って見えた。

――今日は何かいい事がありそうだ――

 そんな事を思いつつ、ペダルを踏んだ。


 教室に入るとクラスメート達はグループを作り、話していた。

 僕も席に鞄を置き、いつものグループも入る。

 みんなと話しているとチャイムが鳴った。

 鳴るとすぐに担任が教室のドアを開けた。HRの時間だ。

 担任はゆっくりと入ってくる。その後ろに女生徒が続いてくる。

 女生徒の顔は担任の影でよく見えない。

「今日は、転校生がいる。じゃあ、まずは自己紹介を」

 担任の言葉を聞いた女生徒が影から顔を出す。

――彼女だ――

 僕は驚愕した。

 あまりの衝撃にその後のHRの事を覚えていない。

 彼女の自己紹介を聞き逃したのは大きな失敗だった


 彼女が転校してきてから数日。

 未だ、彼女と話せてない日々が続いている。

  彼女と話している女子達が羨ましい。

僕は彼女を眺めているしかない。

「?」

 一瞬だった。

 友達と話しているのに、どこか憂いを含んだ寂しげな表情をした。

 その時は見間違いかと思った。

 だけど彼女は時折、寂しげな表情を見せる。

 その表情を見るたびに、胸が締め付けられるように苦しくなった。

 次第にその表情をどうにかしたいと、助けたいと思い始めた。

 でも、今のままではそれは適わない。

 そこで思い切って彼女に告白する事にした。

 ほとんど話した事もない僕と彼女。

 正直、フラれる事は非常に恐ろしい。

 それでもこの気持ちには嘘をつけない。

「あ、あの」

僕 は彼女に思いを伝える為、一歩踏み出した。


                    完


感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ