03
「どいて!どいてください!!」
「負傷者は!?」
通報を受けて駆け付けた二人の救急隊員たちは、周囲の野次馬たちをかき分けるようにしてその中心へと向かった。
一定の距離を置いて野次馬たちが見つめるその先を見て、彼らは一瞬、目を丸くした。
「…え?二人?」
通報を受けた時、階段から落ちたのは少女が一人ということだった。
が、どういうわけかそこには二人の少女が倒れている。
二人の少女にはそれぞれ、スーツ姿の男と女子高生がそばにしゃがみ込んでいる。
「いえ、負傷者はそっちの子だけです」
女子高生がついている少女の方を手で指示し、驚く彼らにそう声をかけたのは、スーツ姿の男の方だった。
仰向けに倒れた少女は頭部から出血をしており、それを女子高生がハンカチで抑えて止血している。
すぐに片方が少女のもとへ向かい、手早く処置を済ませていく。
もう一人も残った少女の方に向かうが、一目見てすぐにわかった。
男が見ていた少女は、首が自然ではありえない方向に曲がっており、確かに負傷者は一人だった。
救急隊員が一応少女の死亡確認をし終えると、男が離れた場所で一人階段に腰かけている女性を指差した。
「それと、あそこにいる女性の手当ても。骨折はしていませんが、捻挫しているので」
「あの、失礼ですがあなたは医師ですか?」
隊員の問いに、男はうなづいた。
「ええ、今は保険医ですが」