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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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短編小説(ホラー)

音の出るおもちゃ

作者: 三羽高明
掲載日:2026/07/16

 ソラくんは、音の出るおもちゃが大好き。紐を引っ張ると鳴きだすアヒルに、シンバルを叩くサル。どんなに激しく泣いている時も、おもちゃの奏でる音があれば、あっという間にご機嫌になります。


 でも、どのおもちゃもたくさん遊んだせいで、最近はちょっと飽きてきたみたい。「あー!」と言いながら、ソラくんはプラスチックのラッパを投げてぐずぐずとむずかります。


「そろそろ新しいおもちゃが必要だな」


 お父さんがソラくんを抱き上げて、よしよしと背中をさすってあげました。


 けれど、ソラくんの眉は八の字に下がったまま。今にも大声で泣きだしそうな表情に、お父さんはオロオロしました。


 ピンポーン。


 二人のいる部屋に、チャイムの音が響きます。


 その途端に、ソラくんはぐずるのをやめました。もっと聞きたいと言っているのでしょうか。玄関のほうに手を伸ばして「あうぅ」と無邪気な声を上げます。


「お母さーん。お客さんだよー」


 ソラくんの機嫌が直ったので、お父さんはほっとしました。部屋の外に向かって声をかけます。


 けれど反応はありません。お父さんは、お母さんは買い物に出かけていて留守だったと思い出しました。


 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン……。


 どうやら、お客さんはよほど急ぎの用があるようです。連打されるチャイムの音が家中にこだましました。


「うううっ! あうううっ!」


 何度も鳴らされるチャイムに、ソラくんはすっかり興奮して体をゆさゆさと揺すっています。一方のお父さんは、ちょっと困っているようでした。


「しつこい人だなあ。……ちょっと見てくるからね。いい子で待ってるんだよ」


 お父さんは抱き上げていたソラくんをふかふかの絨毯(じゅうたん)の上に下ろし、早足で玄関に向かいます。


 ソラくんは鳴らされ続けるチャイムの音に聞き入っていて、お父さんが急にいなくなったことなんてどうでもいいようでした。


 けれど、不意にチャイムが鳴り止んで、ソラくんは呆然とします。代わりにうろたえるお父さんの声が聞こえてきました。


「ど、どうしてここに!? 家には来ないでほしいとあれほど言ったじゃないか!」


「先に約束を破ったのはそっちじゃない! 一体いつになったら奥さんと別れてくれるのよ!」


 バタバタと玄関で騒がしい音がします。聞き慣れない物音に、ソラくんはじっと耳を澄ましていました。


「待て、やめろ! そんなものは早くしまって……うっ!」

「あなたが悪いのよ!」


 玄関のドアが乱暴に閉められる音がしました。ヨタヨタとふらつきながら、お父さんがソラくんのいる部屋に戻ってきます。


 先ほどまで真っ白だったお父さんの服は、今では赤く染まっており、その体には包丁が深々と刺さっていました。


 お父さんは力ない足取りで二、三歩ほど歩いた後、絨毯の上にどっと倒れます。


「ヒュー、ヒュー……」


 お父さんの口から、喘ぐような息が漏れました。


 それは少し木枯らしの音に似ていて、でももっと深刻な響きを帯びています。今まで一度も聞いたことのない音色に、ソラくんは目を輝かせました。


「ああい! ああい!」


 すっかり夢中になったソラくんは、拍手をするようにぷくぷくの手をパンパンと打ち鳴らしました。けれど、お父さんの発する「ヒュー」という音は段々と小さく、弱々しくなっていきます。


「ううう……」


 ソラくんは口を尖らせましたが、しばらくすると音は完全に途絶えてしまいました。


「ああーん!」


 せっかく見つけたお気に入りの音が鳴り止んでしまったことに、ソラくんは不満そうに口元を歪めます。


「あう! あう!」


 またあの面白い音を聞きたくてたまらないソラくんは、床に横たわった音の出る大きなおもちゃをもう一度動かそうとして、お父さんの体を小さな手で何度も何度も叩くのでした。

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― 新着の感想 ―
ソラくんの将来がめちゃくちゃ心配。 ありがとうございました。
ソラくん… それはおもちゃやないで…… 不倫してた父は悪いですな。
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