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STREET PHANTOM(ストリートファントム)  作者: STREET PHANTOM 編集長 神崎
3/20

コレ、ティーダです。――祖父のお下がりをぶっ壊した変態大学生の愛車をスクープ!

言っておく。ネタじゃない。

編集部に一通のメールが届いたのは、今年の春のことだ。

「ティーダをチューニングしています。取材してもらえませんか」

最初は冗談だと思った。ティーダ。あの、おじいちゃんおばあちゃんが近所のスーパーに乗っていくやつ。あの、後席がやたら広くて、ファミリー向けコンパクトとして設計された、あの。それを、チューニング?

でも写真が届いた。本物だった。

IMPUL製のフルエアロをまとい、車高が落ちていて、ホイールが変わっていて……確かにティーダだった。でも何か、普通じゃなかった。

編集部は会いに行った。


翔也、登場。

出てきたのは21歳の大学生だった。名前は翔也。「苗字は出さないでください、実家にバレると怖いんで」とのこと。(笑)

「これ、祖父のお下がりなんですよ。大学入るときに『車いるだろ』って言われて。ありがたいですよね、ほんとに。でも……ちょっとずつ変えてたら、気づいたらこうなりました」

ちょっとずつ、じゃないと思うんですが。

「ですよね(苦笑)」

そのティーダ、JC11型の後期、18G、6速MT。MR18DEエンジンを積む1.8リッター直4NAだ。最高出力128馬力を5200回転で、最大トルク17.9kgmを4800回転で発生する、扱いやすくフラットなキャラクターのエンジンだ。悪くない。でも、これをチューニングのベースにする人間はあまりいない。

なぜなら、パーツがない。

「それが一番つらいですね。ショップに聞いても『ティーダ用は……』ってなるし、ネットで調べても情報が少ないし。でも逆に言うと、誰もやってないから面白いかなって」

この男、ポジティブすぎる。(´∀`)


まず外装から、それが正解だった。

翔也号の第一印象を決めているのは、何といってもIMPULのフルエアロだ。フロントバンパー、サイドステップ、リアハーフスポイラー、リアウィング。全部IMPULの純正オプションで、ティーダに正式に設定されていたもの。

「IMPULのエアロが存在することを知ったときは感動しましたね。公式がやってくれてた、って」

IMPULはNISMOと並ぶ日産系チューニングブランドで、レース参戦の実績を持つ名門だ。そのIMPULがティーダ用エアロを出していたという事実は、地味に熱い。見た目がきれいに締まっていて、「ただの改造車」感がない。ドレスアップの方向性として、これ以上ないくらい正解の選択だ。

「エアロが一番高かったです。合計で45万くらい……言うと怖いので、バイト頑張りました」

お疲れ様です。(´;ω;`)


足回りとホイール、ここから「別の車」になった。

車高調はTEIN STREET ADVANCE Z、ホイールはFINALIST FZ-S5(17インチ 7.0J +45)、タイヤはKENDA KR20(205/45R17)。この3点セットで、ティーダの顔が劇的に変わった。

「車高落としたとき、友達に『別の車みたい』って言われたんですよ。で、次の日に祖父に見せたら無言でした(笑)」

TEIN STREET ADVANCE Zはストリート向けの減衰調整式車高調で、乗り心地とスポーツ性のバランスが取れた製品だ。ティーダへの適合もしっかり存在する。

ホイールのFINALIST FZ-S5はホワイト塗装の5スポークで、ティーダの柔らかいフォルムに対して適度な主張がある。タイヤのKENDA KR20はストリート向けのUHPタイヤで、ティーダ C11系はENDLESSのシステムインチアップキットの適合も存在する(だがしかし6MTは対象外なのである( ノД`)シクシク…)など、意外と対応製品がある車種だ。

ウルトラレーシング製のフロントタワーバー、フロントメンバーブレース、リアメンバーブレースの3点もしっかり入れてある。車高を落として剛性が必要になったところに補強を入れる、正しい順番だ。リアスタビライザーもウルトラレーシング製に換装しており、コーナリングのロールを抑えている。

「補強系は安くないですけど、体感できるんですよね。入れたとき感動しました」


エンジン周り、できることをやる。

ここが翔也号の最大の課題であり、最大の見せ場でもある。

MR18DEはNA(自然吸気)エンジン。ターボもスーパーチャージャーもない。128馬力、17.9kgm Do-blogというスペックは普通に走るには十分で、決して遅い車ではない。でも「チューニングして馬力を上げる」という方向には、壁がある。

パーツが、ない。

「カムシャフトとか調べたんですけど、MR18DE用って出てないんですよ。インジェクターとかタービンとか、そういう話は当然ない。だから、できることをやるしかなくて」

できることをやる。それがこうなった。

H.S.P製の強化イグニッションコイル(黄)で点火系を強化。「強化コイルは体感ありましたね。吹け上がりがちょっとシャープになった気がする」と言う。AUTOBAHN88のシリコンラジエターホースとBLITZのレーシングラジエターキャップで冷却系を補強。オイルフィラーキャップはTEMU(中国の通販サイト)の格安品。「正直飾りですけど、エンジンルームがちょっと映えるんですよ」と笑う。(笑)

オイルキャッチタンクとリザーバータンクはADPOW製の汎用品。「本当は有名ブランドのが欲しかったけど、金がなくて。でも機能は変わらないと思うんで」。インテークはEbayのコールドエアインテーク。マフラーは柿本改 GTbox 06&S。

「マフラーは音が変わったのが一番うれしかったです。ティーダでこの音が出るのか、って。笑いましたよ(笑)」


( ・∀・)つ PHANTOM's EYE

MR18DEのチューニングパーツが極端に少ない理由のひとつは、このエンジンを積む車種がファミリーカー寄りであること。同じMRファミリーでも排気量違いのMR20DEはセレナやエクストレイルにも使われており、若干ながら流用できるパーツが存在するケースがある。翔也号のように吸排気・点火・補機類を地道に固める「できることをやる」方向性は現実的で正しいアプローチだ。でもLSDと強化クラッチがないのは……割り切るしかないな。(´∀`;)



DIYキャリパー流用、これが一番クレイジーだった。

このページ最大の見どころはここだ。

翔也号のブレーキ、フロントにはECR33(スカイラインGT-R)純正4ポットキャリパーが付いている。ヤフオクで3万円で落とした中古品だ。

「ティーダのブレーキ、リアがドラムなんですよ。フロントもディスクだけど貧弱で。もっとガツンと止まりたくて調べてたら、ECR33のキャリパーって汎用性高くて流用事例がけっこうあるって知って。じゃあティーダにも行けるんじゃないかって」

行けるかどうかは別として、やってみた。

ECR33純正のフロントキャリパーは、ローター径はノーマルより大きい296mmの4ポット対向キャリパーで、流用事例も多い定番アイテム RHDJapanだ。しかし問題はPCD(ハブの穴の間隔)だ。ECR33は5穴114.3、ティーダは4穴100。ここが根本的に違う。

「ローターはFMパーツのE51エルグランド用を4穴加工(100mm)前提で使って、スペーサーはHKBの8mmを入れて、バンジョーボルトはグッドリッジのを2個使って……って感じでなんとかしました」

ブレーキパッドは曙ブレーキの純正同等品。「パッドはケチらないほうがいいって先輩に言われて。ここだけはちゃんとしました」。賢明な判断だ。

仕上げにリアのドラム部分をDIY塗装。エンジンルームの樹脂カバーを外してタペットカバーも塗装した。「見た目が好きで。エンジンルームの樹脂カバーって外すとスッキリするんですよね」

全部合わせて、エンジンルームが妙に映える。


( ・∀・)つ PHANTOM's EYE

ECR33キャリパーのティーダ流用はかなりの難易度で、ハブ・PCD・ローター・ブレーキラインのすべてをクリアする必要がある。翔也号のようにロール加工・スペーサー・専用バンジョーボルトを組み合わせる方法はDIYとしては素晴らしいが、ブレーキは命に直結するパーツだ。取り付け後は必ずエア抜きを完全に行い、低速からの踏み込みテストを繰り返して、異常がないことを確認してから本走行に臨んでほしい。流用DIYは楽しいが、ここだけは絶対に慎重に。(゜Д゜)



内装。フルバケが鎮座するコンパクトカー。

コクピットに乗り込んで、笑ってしまった。

NANIWAYAのSP-GTタイプ フルバケットシートが、ティーダの室内に鎮座している。シートレールもNANIWAYA製。オートゲージの水温・油圧・油温の3点セットが追加されている。

BLITZのレーダー探知機 TR315RにOBD2アダプターが繋がっていて、車両情報のリアルタイム表示もできる。「OBD2で水温とかも見られるんですよ。なんか管理してる感があって好きです」

HKBのボスにステアリングが刺さっているのも、ちゃんとしている。


インタビュー:翔也、語る。

――祖父はこの車を見てなんて言いましたか?

「最初は無言でした。で、しばらくして『乗っていいか』って言って、近所をちょっと走って帰ってきて、また無言で『まあいいんじゃないか』って(笑)。その一言がうれしかったです」

――チューニング費用、トータルでいくらくらいかかりましたか?

「……全部足すと怖いんで計算してないです。バイト代がほぼここに消えてます」

――ティーダでやることの限界、感じますか?

「感じます。LSDないし強化クラッチもないし。でも、だからこそ自分でできることを探す楽しさがある。パーツが少ないのって、逆に言えば誰もやってないってことじゃないですか。それはなんか、面白いなって」

――将来、もっとガチな車に乗りたいとは思わない?

「思いますよ、もちろん。でも今はこれでいい。このティーダが好きだし、祖父の車だし。もうちょっと一緒に走りたいです」

――最後に、このティーダに点数を付けてください。

「……80点ですかね。残りの20点は、まだやれることがあるから、取っておきます」


取材が終わって、翔也号のエンジンがかかった。柿本改のGTboxが、ティーダとは思えない音を立てる。21歳のバイト代が詰め込まれたコンパクトカーが、夜の住宅街をゆっくりと走り去った。

馬力は128。でも、かっこよかった。

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