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STREET PHANTOM(ストリートファントム)  作者: STREET PHANTOM 編集長 神崎
20/20

編集長の愛車、最後に見せます。ジンとインテグラタイプR DC5前期の話。

ジン編集長から一言。

「自分で書く気はない。誰かに書いてもらう。恥ずかしいから」

というわけで取材班の俺、近藤が書きます。プレオRS乗りの。

正直に言う。編集長のDC5を初めて見たとき、うちの雑誌の取材車の中で一番緊張した。

理由はわかる。他の取材は「その人の車」を見ている。でもこれは「この雑誌そのものの基準を作っている人間の車」だからだ。ジン編集長が「赤バッジは本物だけ」と言い続けてきた。「ブレーキを入れろ」と言い続けてきた。「準備してから攻めろ」と言い続けてきた。その人間の車がどうなっているのか。

それを見るのは、少し怖かった。


DC5 インテグラ タイプR、その意味。

DC5インテグラ タイプRは2001年にデビュー。2.0リッターK20A型i-VTECエンジンを搭載し、最高出力220馬力を8000回転で、最大トルク21.0kgmを7000回転で発生する。ホンダ車初のブレンボ社製ブレーキキャリパーを採用し、クロスレシオ6速MTにLSD標準装備、レカロ製バケットシートという純正からすでに戦闘仕様の車だ。

K20AエンジンはB型の弱点だった低回転域のトルクを補いながら、高回転域の鋭い伸びも持ち合わせており、最強のNAエンジンと言っても過言ではない Weblioという評価は、乗れば即座に理解できる。

「なんでDC5にしたんですか」と聞いたら、ジン編集長はしばらく黙ってから「好きだから」と言った。「でもDC2の方が好きって言う人が多いですよね」と続けたら、「俺はDC5の方が好きだ。それだけだ」と返ってきた。

その一言が全部だった。


K20A、8000rpmまで回るNAエンジンへのアプローチ。

エンジン本体には手を入れていない。ジン編集長のアプローチは一貫している。「NAの純正エンジンを信頼できる状態で、最大限に使い切る」。

まず補機類を完全に刷新する。GReddyのオイルキャッチタンクショート15φ、アルミラジエターTW-R、BLITZのレーシングラジエターキャップTYPE-2、GReddyのオイルクーラーキット10段スタンダード、J'sレーシングのSPLローテンプサーモスタット。冷却系を全部固めてから先に進む。「エンジンを攻める前に熱を管理しろ。黒崎(vol.19)に言ったことは自分にも当てはまる」。

戸田レーシングのエアコン付き車用軽量フロントプーリーキット(専用ベルト付き)で補機類の回転抵抗を低減する。「軽量プーリーはレスポンスが変わる。ハイカムを入れなくても体感できる変化だ」。

無限製の強化エンジンマウントでエンジンのたわみを抑え、H.S.P製の強化イグニッションコイルとNGKイリジウムMAXプラグで点火系を強化する。「高回転まで回すエンジンに、点火系の強化は基本中の基本だ」。


給排気、SPOONで一本筋を通す。

今回の仕様書の核心がここだ。

エキマニはSPOONの4in2エキゾーストマニホールド(DC5専用、品番18100-DC5-000)。

ホンダNAエンジンは比較的低速トルクが少なく、4-2-1レイアウトの優位性が高い。SPOONの4in2エキマニはポートとの段差がないフレアインサート工法とTIG溶接を採用しており、純正OEMの5.8kgに対してSPOON製は3.2kgと大幅な軽量化を実現。ノーズの軽量化によりハンドリングへの副次効果もある。

「SPOONの4in2は、K20Aとの相性がずば抜けている。排気をちゃんと流せるようにするだけで、このエンジンのポテンシャルが全部出る感じがする。俺はこれが好きだ」

触媒はWeds sports RevCatalyzer、マフラーはGP SPORTS EXAS EVO Tune。インテークは零1000パワーチャンバーとJ'sレーシングのハイパフォーマンスインテークパイプ。そしてウルトラストリート製のサージタンク。

「サージタンクはK20Aの吸気脈動を整える。4in2エキマニと合わせると、低回転から中回転のトルクの厚みが変わる。数値より体感で分かる変化だ」


( ・∀・)つ PHANTOM's EYE

K20A i-VTECのエキマニ選択において4in2(4-2-1集合)と4in1(4-1集合)の論争は古くからある。SPOONが4in2を推奨するのは、ホンダNAエンジンの低速トルクの薄さを補うには4-2-1の排気慣性効果が有利に働くためで、純正の2in1と組み合わせることで中低回転域のトルクを厚くしながら高回転の抜けも確保できる。高回転一辺倒より「全域で使えるトルク特性」を目指すのがDC5の正解ルートだと、ジン編集長の選択が示している。(゜Д゜)



剛性、ロールケージで締める。

CUSCOのフロントストラットバー Type OS、SPOONのリジカラ。

そしてCUSCO SAFETY 21 定員乗車用 スチール。CUSCOのロールケージだ。本誌に登場した多くの車がロールケージを入れているが、ジン編集長のDC5にも当然のように入っている。「安全装備なしで本気で走る気はない。それだけだ」。


ミッション・足回り、バランスを取る。

ダンパーはRGレーシングギアのHS DAMPER。「RGのHSは、街乗りからサーキットまでのバランスが俺の使い方に合ってる。固すぎない、でも動きが正確だ」

クラッチはOS技研のストリートマスター GT1CD。「OS技研のストリートマスターは何台もの取材車で聞いてきたブランドだ。自分もここにした。それだけの理由がある」

LSDはCUSCO LSD プロアジャスト タイプRS。「DC5には純正LSDが入っているが、さらに詰めたかった。プロアジャストはセッティングの自由度が高い」

CUSCOのスタビライザーは前後装着済みだ。


ブレーキ、当然のこと。

プロジェクトμのNS-Cブレーキパッド前後セット、APPのブレーキラインステンレスタイプ一台分セット。

「DC5のタイプRには純正でブレンボが入っている。これをちゃんと生かすためのパッドとラインを選んだ。純正ブレンボをサポートするパーツに投資する方が、キャリパーを換えるより先だ」

細田号(vol.18)にブレーキを入れろと言い続けた編集長の車には、当然ブレーキが入っている。それだけのことだ。


ホイールとタイヤ、コーセイとNITTOで決める。

ホイールはコーセイ K-1レーシング レヴ(REV)17インチ、タイヤはNITTO NT555 G2。

「派手なホイールは好きじゃない。走りが全部だから、足元は仕事をしてくれればいい。コーセイは軽くて強い。NITTOは高速域のグリップが信頼できる」

本誌に登場した多くの車がワーク、アドバン、5ZIGENなどを選ぶ中、コーセイとNITTOという組み合わせは静かな主張がある。「人と違うホイールを選んでる俺、ではなく、これが俺に必要なホイールだ、という選び方をしている」と取材班は感じた。


内装、最小限の快適さと最大限の情報量。

ドライバーシートはセミバケのレカロから、ナニワヤのSP-GTタイプ フルバケットシートとシートレール一体型スーパーダウンへ。ハーネスはZ.S.S.製の4点式シートベルト(緑)。「緑にしたのは……特に深い理由はない。ただ好きだ」。

(後日聞いた話だが、本当はTAKATAの4点が欲しかったらしい。ただ、4点式に10万円も出せなかったようだ。要するに、編集長は金欠だったらしい。)

Defiの水温計・油温計・油圧計の3点セット。BLITZのレーダー探知機TR315RとOBD2接続ケーブル。「メーターは必要最低限だ。情報が多すぎると走行中に目がいく。俺は3点で十分だ」


外装、チャージスピードとC-WESTで纏める。

チャージスピードのハーフエアロ3点セットとフロントグリル、C-WESTのGTウィング。「ウィングはダウンフォースのために入れた。見た目のためではない。でも、まあ、かっこいいとも思っている(笑)」


インタビュー:ジン、最後に話す。

「取材する側の人間が取材される、か。まあ仕方ない」と言って、ジン編集長は少し笑った。

――この雑誌を始めたときの創刊の辞(vol.01)を今読み返すと、どう思いますか?

「恥ずかしい。でも嘘はついていない」

――本誌に登場してきた取材対象者たちについて、印象に残っている人は?

「全員だ。ちゃるどね氏のS14から、黒崎のZ32まで、みんな自分なりの答えを持って車に向き合っていた。それが嬉しかった。こういう人間たちがいる限り、このシーンは終わらないと思った」

――辛口評価コーナー(vol.11, vol.18追記)では厳しい言葉もありました。

「あれは全部、愛情だ。本気で向き合っていない人間に厳しいことは言わない。向き合っているから言える」

――細田氏のTypeR宣言(vol.18)については?

「……認める。ブレーキを入れたと聞いたから(笑)。約束を守る人間は信頼できる」

――このDC5、点数をつけてください。

「80点だ。K20Aのポテンシャルをまだ全部引き出せていない。サージタンクを入れてからセッティングをもっと詰めたい。それが終わったら、また点数が変わる」

――最後に、STREET PHANTOMという雑誌について一言。

「車が好きで、走ることが好きで、でも誰にも話せないでいる人間に届けばいい。それだけだ」


取材が終わって、ジン編集長がDC5のエンジンをかけた。

K20A i-VTECが目を覚ます。SPOONの4in2エキマニを通った排気音が、GP SPORTSのマフラーで締められて夜に響く。ブレンボが正確に制動する。クロスレシオの6速が、正確に速度に変換される。

220馬力のFFクーペが、夜の街に消えていく。


「走り屋の記録をちゃんと残す」と言って始めたこの雑誌の記録は、創刊号から数えてここまで来た。

全員が、本気だった。

STREET PHANTOM 取材班・近藤

創刊から、ここまで来た。

最初の一冊を作ったとき、正直続くかどうかわからなかった。「チューニング誌を作りたい」という気持ちだけで始めて、最初に取材したのが群馬の峠に出る白いS14だった。ちゃるどね氏は「ただ走ってるだけなんで」と言った。

そのひとことが、この雑誌のテーマになった気がする。

ただ走ってるだけ。でもそのために、エンジンを降ろして、タービンを換えて、足を組んで、ブレーキを固めて、ボディを補強して、ECUを詰める。バイト代を全部ここに注ぎ込んで、親に内緒でローンを組んで、休日のガレージで工具を握り続ける。

「ただ走ってるだけ」のために、こんなに本気になれる人間がいる。

それを記録したかった。


翔也のティーダは、祖父から受け継いだ車だった。

西園寺のギャランは、打倒・青井のために静かに刃を研いでいた。

加藤のZ32は、死にかけた車を蘇らせるところから始まった。

がっくんのGDB丸目は、ドッカンターボを少しずつ乗りこなしていく記録だった。

近藤のプレオは、アルトワークスへの宣戦布告だった。

稲辺のオデッセイには、夜中に一人で湾岸を走る元・湾岸の貴公子がいた。

オクラのNAロードスターには、父と同じものが目に宿っていた。

琴葉のレガシィB4には、亡き父の遺志と700円のSTIエンブレムがあった。

岡本のZ33は、整備のプロが自分に正直に作った一台だった。

西宮のアルテッツァは、低速トルクの薄いエンジンに自分なりの答えを出そうとしていた。

瑛太のGE8フィットは、6年間の相棒との対話だった。

北田のRX-8は、前オーナーのバトンを受け取った話だった。

へもしーのマーチは、C1を小さい車で走り切るための本気だった。

宝田のセリカは、VVTL-iとスーパーチャージャーが同時に炸裂する二段ロケットだった。

細田のGDフィットは「TypeRを名乗ってもいいと思います」という一文から始まった。

黒崎のZ32は、師匠の背中を師匠と同じ車種で追いかけない、という意志だった。

宝田のセリカは峠もC1も両方こなす万能FFモンスターだった。

そして俺、ジンのDC5は……近藤が書いてくれた。ありがとう。


辛口評価コーナーでは何度か厳しいことを書いた。

プリウスの「ダウンサスで終わるな」も、CR-Zの「最後の統一感だけ詰めろ」も、細田のGDへの「ブレーキを入れたら認めてやる」も、全部本気だった。

でも本当のことを言うと、あのコーナーに車を送ってきた全員が好きだ。自分の車を誰かに見せたい、評価してほしい、という気持ちを持っている人間は、車と真剣に向き合っている証拠だからだ。

細田はブレーキを入れた。約束を守った。それで十分だ。


この雑誌に登場した車は全部、架空だ。

登場した人物も全部、架空だ。

でも、「こういう人間はきっとどこかにいる」と思いながら書いた。

夜中のガレージで工具を握っている誰か。

峠の入り口でエンジンをかける誰か。

サーキットのピットで悔しい顔をしている誰か。

バイト代でパーツを買って、次の休日を待っている誰か。

そういう「誰か」に、この雑誌が届けばいい。

2012年の空気を、ちゃんと残せただろうか。

幽霊みたいに気配を消して、でも確かにそこにいる。

そんな一冊になっていたなら、それでいい。

また走ろう。

2012年 STREET PHANTOM 編集長 ジン(神崎 仁)


そして最後に。

近藤からひとこと。

「プレオRS、アルトワークスにまだ勝てていません。でも来年こそ。

それまで待っていてください、へもしー」

へもしーからひとこと。

「待ってます。マーチでDC5の後ろを走れる日まで、俺も走り続けます。ジンさん」


STREET PHANTOM vol.01〜vol.20

全20号 完結


ありがとうございました。

またどこかの峠で、湾岸で、サーキットで。

STREET PHANTOM 編集部一同

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