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STREET PHANTOM(ストリートファントム)  作者: STREET PHANTOM 編集部
19/20

師匠の背中を追う弟子は、Zを選んだ。黒崎 歩とフェアレディZ Z32 ツインターボの話。

「青井さんに弟子入りしたのは、3年前です」

黒崎 歩は静かにそう言った。

AOI CRAFTの青井 学――本誌vol.02でBNR33と共に登場した、湾岸と辰巳を制する男。そのショップに通い続け、弟子になった青年がいる。それが黒崎だ。そして彼はストファンの愛読者でもある。

取材場所はAOI CRAFTから少し離れた駐車場。黒崎が連れてきた車を見て、編集部は思わず息を呑んだ。

Do-luck T-2のエアロを纏い、VOLTEX GT WING TYPE 3がリアに仁王立ちする。D.SPEEDのカーボンボンネットが夜の光を受けて鈍く輝く。そして師匠のBNR33とは異なる、低く重いシルエット。

フェアレディZ、Z32型、ツインターボ。

「なんでGT-Rじゃなくて、Z32にしたんですか」と聞いた。

「青井さんと同じ車に乗っても意味がないと思って」

その一言で、この青年の本質がわかった。


VG30DETT、再び。

VG30DETTはV型6気筒DOHC24バルブ、排気量2960cc。最高出力280馬力を6400回転で、最大トルク39.6kgmを3600回転で発生する Tomei Powered、Z32のためだけに磨き上げられたエンジンだ。本誌vol.05の加藤 良平号でも登場したが、あちらは「蘇生から始まったZ32」だった。黒崎号は「最初から本気で仕上げる」Z32だ。同じエンジン、同じ車種、でも方向性は全く違う。

「加藤さんの取材、読みました。あの人のZ32は大事に育ててる感じで好きです。自分はもう少し攻めたかった」


GReddy タービンキット TD04H-15G TWIN ACT、Z32唯一のボルトオンタービン。

今回の仕様書の核心はここだ。

GReddyのTD04H-15G ツインアクチュエータータイプは、2024年に国内唯一のZ32専用タービンキットとして注目を集めた製品で、純正エキゾーストマニホールドと純正インテークパイプにボルトオンで装着可能という、Z32の整備性の悪さを解決する設計になっている。

Z32のタービン交換について、加藤号の記事でも触れたが改めて説明しよう。Z32はエンジンを降ろさないとタービン交換ができない構造で、スペースがないために社外タービンを装着すると他と干渉し加工が必要なケースがほとんど TOMEI UKだ。だからこのキットが「無加工でポン付け装着できる」という事実は、Z32オーナーにとって革命的な意味を持つ。

ECUセッティングとインジェクター交換が必須となっており、黒崎号はそこにHKS F-CON V Proのフルコン、SARD 550ccインジェクター、SARD 265L/h燃料ポンプ、SARD調整式フューエルレギュレターのフルセットを投入している。

「青井さんに相談したら、タービン換えるならフルコンとインジェクターと燃料ポンプは必ずセットで用意しろって言われて。その通りにしました」

師匠の教えは正しい。


( ・∀・)つ PHANTOM's EYE

GReddyのTD04H-15G TWIN ACTは最低ブースト圧0.8〜0.95kg/㎠での設定だが、GReddy Profecとフルコンの組み合わせでブーストを管理することで純正タービン比でさらに過給圧を高められる。ただしZ32のVG30DETTはノーマルでも熱的に厳しいエンジンで、ポン付けタービン仕様でパワーが500ps前後に達するとアクセル操作に対するクルマの挙動がピーキーになりがちとされている。黒崎号の水冷・油冷の徹底した熱管理は、このリスクを正しく理解した上での準備だ。セッティングは欲張らず、まず安定したブーストをきっちり出せる状態を作ることが先決。(゜Д゜)



AMS Motorsports マックスフローエキマニ、海外の本気。

AMS MotorsportsのマックスフローエキゾーストマニホールドはZ32 VG30DETT専用設計で、海外のZ32チューニングシーンでの実績が高い北米ブランドのパーツだ。純正比で排気流量を最大化する設計で、TD04H換装後のタービン効率を最大限に引き出す。「海外のZ32フォーラムで定番パーツって書いてあって、取り寄せました。英語のサイトを読むのは西園寺さんに教えてもらった(笑)」。

vol.04の西園寺号の海外情報収集スキルが、ここで活きている。本誌の登場人物たちが繋がっている。(´∀`)

インタークーラーはGReddy T16F、加藤号と同じZ32専用キット。ブローオフはHKS製、ターボタイマーはHKS TURBO TIMER X。「師匠のBNR33もSQV4を使ってる。だから自分も同じで統一した部分があります」


DRM 強化タイミングベルトオーバーホールキット、弟子の誠実さ。

「青井さんに言われた最初のことが、まずエンジンを信頼できる状態にしろ、でした」

その言葉に従い、黒崎が最初に手をつけたのがDRM(DAYTONA REST&MOD)製のVG30強化タイミングベルトオーバーホールキット2だ。Z32のVG30DETTはV6ゆえにタイミングベルトが複数本使われており、経年車では最優先の整備ポイントだ。「タービン換える前にここをやっておけって。当然のことをちゃんとやれって」。師匠の教えは地味なところから始まる。

NISMOのローテンプサーモスタット、コヨウラッドのレーシングラジエターTYPE-F、GReddyの汎用オイルクーラー、OKUYAMAのラジエタークーリングプレート、ADVANCEのハイエフィシェンシーオルタネーター、NGK IRIWAY7の高熱価プラグ。Z32の熱管理を完全に固めてからタービン換装に臨んだ。「先に足場を固めろ、って青井さんはいつも言う」


ECU:HKS F-CON V Pro、フルコンで全部を統括。

タービン換装・エキマニ・大容量燃料系すべてをHKS F-CON V Pro専用ハーネスと組み合わせて管理する。岡本氏(vol.12、Z33)と同じフルコン選択で、VG系エンジンとF-CON V Proの組み合わせは実績も豊富だ。NTKの空燃比モニター、LINKのノックリンクでノッキングをリアルタイム監視する体制も整えた。「フルコンは青井さんのショップでセッティングしてもらいました。ノックリンクは青井さんに勧められた。これがあると安心感が違うって」


給排気、ZEESで締める。

マフラーはZEES サイバーGT――加藤号と同じ選択だ。「加藤さんの取材を読んで、ZEESにしようって決めました。V6ツインターボの音に、ZEESは本当に合う」。キャタライザーはHKSのメタルタイプ、インテークはAUTOBAHN88のサクションキット付きエアクリーナー、インテークパイプはGReddy製アルミ。吸気から排気まで一本の流れで通す。


駆動系、2wayで本気を出す。

LSDはCUSCO Type RS spec-f 2way。加藤号の1wayから一段上の2way選択は、黒崎がZ32をどう使うつもりかを示している。クラッチはオグラクラッチ Metal Series ORC-559ツイン標準圧着タイプ、ダンパー付きディスク。「ツインクラッチにしたのは街乗りも考えて。青井さんのBNR33もOS技研のツインで、同じ方向性です」。ミッションマウントはZ.S.S.製の強化品。


足回りと剛性、前後左右すべてを詰める。

車高調はCUSCO STREET ZERO A+CUSCO e-con2(電動減衰調整)。

CUSCOのピロボールテンションロッドでフロントを固める。

補強はウルトラレーシングのフロント・リアスタビライザー、フロントタワーバー、フロントメンバーブレース、リアアッパーブレース、ルームバー、シークレットスポーツのBピラーバー、ナギサオートのがっちりさぽーと、カワイ製作所のリアモノコックバー(牽引フック付き)。「Z32のボディ補強は、全部入れる気でやりました。青井さんに『Zは補強が甘いとすぐ動きに出る』って言われて」。

ブレーキはプロジェクトμのテフロンブレーキラインとB-SPECパッド前後セット、CUSCOのブレーキシリンダーストッパー。アーム類はKTS調整式リアアッパーアーム、DAYTONA調整式フロントアッパーアーム、Z.S.S.製のリアトラクションロッドとリアトーコントロールアーム。「アームを全部調整式にしたのは、セッティングの自由度を最大にしたかったから。青井さんのBNR33もアーム類がちゃんとしてた」


ホイールとタイヤ、ワーク エモーション T5Rで統一。

ホイールはワーク エモーション T5R、タイヤはMICHELIN PILOT SPORT 5。「T5Rはシンプルで強い。師匠のBNR33はCR極でしたけど、自分はT5Rが好みで」。師匠と同じブランドで、型番は自分で選ぶ。その一つ一つが黒崎の自立を示している。


外装、Do-luckとVOLTEXで決める。

エアロはDo-luck T-2の3点セット。師匠・青井号のBNR33と同ブランドで揃えたのは偶然ではないだろう。「Do-luckはZ系の車に似合う。青井さんもDo-luckを使ってたし、自然とそこに行き着いた」。ウィングはVOLTEX GT WING TYPE 3――師匠のTYPE 7より一つ型番を下げたモデルだ。「TYPE 7は師匠に取っておこうと思って(笑)」。D.SPEEDのカーボンボンネットが夜の光に映える。汎用エアロミラーとケイズプランニングのアルミナンバーステー、各種ステッカーで仕上げる。


内装、計器の網を張る。

コクピットはBRIDE ZETA Ⅳ、スーパーシートレール FOタイプ、K17バックプロテクター。オートゲージで油圧・油温・水温の3点セット、430シリーズのブースト計、548シリーズのタコメーター、355シリーズの電圧計と排気温度計、612EVOシリーズの燃圧計まで揃えた。プロテックのシフトポジションインジケーター、LINKのノックリンク、NTKの空燃比モニター。「師匠に、走行中は数字を見る習慣をつけろって言われました。燃圧とノックを常に見ておけって。だからメーターが多くなった(笑)」

Panasonic caosバッテリーで電装系を安定させ、BLITZのレーダー探知機TL405Rも装備済みだ。


インタビュー:黒崎 歩、語る。

――青井さんの弟子になったきっかけは?

「AOI CRAFTに整備を頼みに行ったのが最初で。作業を見ながら質問してたら、話が長くなって。それが何度も続いて、気づいたら弟子みたいになってた(笑)」

――師匠から言われて一番響いた言葉は?

「『壊してから学ぶのは金と時間の無駄だ。壊れる前に考えろ』です。チューニングって攻めたい気持ちが先に出るんですけど、青井さんはいつも準備の話をする。タービン換える前に熱管理を固めたのも、その教えです」

――なんでZ32を選んだんですか、改めて?

「GT-Rは師匠が乗ってる。同じ車に乗っても意味がない。自分はZで青井さんを追いかけたい。GT-RとZが湾岸で並ぶとき、Zが前を走ってたらかっこいいじゃないですか」

――師匠はこの仕様書を見ましたか?

「見せました。で、『よく調べた』って一言だけ言われた。それだけで十分でした」

――このZ32に点数をつけてください。

「今は60点です。タービン換えてセッティングも出たけど、まだ乗り込めてない。この車が出せる全部を引き出せたとき、初めて点数が上がると思う。師匠のBNR33に追いつくまでは、ずっと途中です」


取材が終わって、黒崎号のエンジンがかかった。GReddyのTD04H-15GツインがVG30DETTを過給する音が夜の駐車場に響く。ZEESサイバーGTの排気音が重く、低く広がった。

師匠のBNR33とは違う音。でも、確かに同じ方向を向いている。

弟子はまだ60点だと言った。でも、その準備の仕方は師匠譲りだった。

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