表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
STREET PHANTOM(ストリートファントム)  作者: STREET PHANTOM 編集長 神崎
17/20

190馬力のFFクーペにスーパーチャージャーを乗せたら何が起きたか。宝田 大輔とセリカ ZZT231 SS-Ⅱ 6MTの話。

「峠もC1も両方行けます。それがこの車の一番好きなところです」

宝田 大輔は、そう言ってさらっとした顔をした。

「両方行けます」という言葉の重さを、この仕様書を見た後では改めて受け取り直す必要がある。峠の狭いコーナーをグリップで攻め、首都高の高速コーナーで踏んでいく。それを1台のFFクーペでこなす。普通はどちらかに振るものだが、宝田号は「どちらも」を選んだ。

駐車場に停まったセリカは、ウェーバースポーツのフルエアロを纏い、アドバンレーシングTC-4(レーシングホワイトメタリック)が低く構えていた。純正OPの大型リアスポイラーはAliExpressのレプリカ品だが、遠目には全くわからない。「本物は高すぎて(笑)。でも形は同じなんで」。


2ZZ-GE VVTL-i、世界初の技術を積んだエンジン。

1ZZ-FEをベースにヤマハと共同開発された2ZZ-GEエンジンは、連続可変バルブタイミングと一定回転数以上でのカム切り替えによるバルブリフト量の変化を両立したVVTL-i機構を備え、これは当時世界初の技術だった。最高出力190馬力を発揮し、排気量1リットルあたり105馬力という出力密度は、熟成を重ねた3S-GE最終型と同等の水準だ。

このエンジンには独特の「二段ロケット」的な特性がある。低回転域はおとなしく、6000rpm手前でVVTL-iのハイカムに切り替わった瞬間、一気に加速感が変わる。ハイカムに入った際の気持ちよさは格別と評されるあの感覚だ。

「VVTL-iが入ったときの感触が最高なんですよ。だから最初はNAのままでも十分楽しかった。でもそこに過給を足したらどうなるか、って考えたら止まらなくなって」

止まらなくなった結果がこの仕様書だ。


戸田レーシング 2ZZキャパシティアップ1933KIT ローコンプ仕様、まずここから話す。

今回の仕様の構造を理解するために、最初に整理しておきたいことがある。

宝田号の2ZZ-GEは、エンジン本体に戸田レーシングの1933ccキャパシティアップキット、ローコンプ仕様が組まれている。1795ccから1933ccへのボアアップだ。「ローコンプ」というのは圧縮比を下げた仕様を指す。

なぜ過給エンジンに低圧縮比が必要なのか。2ZZをスーパーチャージャー化した場合、NAエンジンをそのまま過給することになるためノッキングのリスクが高まる。2ZZ-GEは元々ハイコンプエンジンで、そこに過給圧を乗せるとノッキングが起きやすい。だからボアアップと同時に圧縮比を下げて、スーパーチャージャーによる過給圧を受け入れる余地を作っているわけだ。排気量を増やしながら圧縮比を下げるという一見矛盾した操作が、この場合は理にかなっている。

これに合わせて戸田レーシングの強化オイルポンプも組まれている。2ZZ-GEは1リッターあたり105馬力という高出力設計で、スーパーチャージャーでさらに上乗せするなら油圧・油量の管理は最優先だ。


トライアル スーパーチャージャー、2ZZにかける。

そしてここが今回の一番の核心だ。

トライアルはトヨタZZ系エンジンのチューニングを得意とする大阪のショップで、ZZ系エンジンに対してスーパーチャージャーキットを含む多数のチューニングメニューを確立してきた実績を持つ HKS。そのトライアルのスーパーチャージャーキットを2ZZ-GEに装着している。

スーパーチャージャーはターボと根本的に異なる過給器だ。エンジンのクランクシャフトからVベルトで直接動力を得て作動するため、排気ガスを利用するターボと違ってアクセルに対して即座に過給効果が現れる。2500rpm付近からスーパーチャージャーの過給効果が感じられ、エンジン回転の上昇に合わせてノーマルを一回り太らせたようなトルクが繰り出される。アクセルオンに対して即座にトルクが立ち上がりNAフィールのまま加速する HKSという乗り味は、ユーザーからも「ターボと違いすぐかかるし扱いやすい。作動したら加速は圧倒的」と評される。

そしてVVTL-iとの合わせ技が最高だ、と宝田は言う。

「スーパーチャージャーが効いている状態でVVTL-iのハイカムに入ったとき、もうヤバいですよ(笑)。引っ張って引っ張ってそこからさらに来る感覚で。これFF車のセリカだぞって思いながら踏んでます」


( ・∀・)つ PHANTOM's EYE

2ZZにスーパーチャージャーを組む場合、純正ECUでは過給状態に対してノッキング防止のマージンが大きく取られており、フルコンへの換装で性能を引き出す余地が大きい。宝田号がF-CON V Proを組んでいるのはまさにそのためだ。またノーマルのMAFセンサーで250馬力程度まで対応できるとされているが、燃料系の容量も同時に見直す必要がある。550ccインジェクター・255L/h燃料ポンプ・SARD調整式レギュレターというセットは、スーパーチャージャー仕様の2ZZに適切な燃料管理体制だ。(゜Д゜)


ECU:HKS F-CON V Pro、全部を制御する。

ECUはHKS F-CON V Pro。フルコンの中でも信頼性と実績で定評があり、2ZZ-GEスーパーチャージャー仕様に対してF-CON V Proを組み合わせた実例も存在する TOMEI UK構成だ。ボアアップ+スーパーチャージャー+ビッグスロットル+大容量燃料系という複合チューニングをフルコンで統括することで、すべての条件で最適な燃調と点火時期を実現する。NTK製のAFRモニターで空燃比をリアルタイム確認しながら日々セッティングを詰めている。

「フルコンは怖いイメージがあったけど、一回組んでもらってセッティング出してもらったら、それ以降は安心感が全然違う。エンジンの状態がちゃんとコントロールされてる感じがする」


燃料系、スーパーチャージャーを支える。

東名パワードの255L/h大容量燃料ポンプ(インタンクタイプ)、SARD製の調整式フューエルレギュレター、SARD製の550cc大容量インジェクター(ZZT231 2ZZ-GE専用品)。この3点セットで燃料系を構築している。「トライアルさんに言われた通りの構成で揃えました。スーパーチャージャーに燃料が足りなくなると終わりなんで、ここはケチらなかった」。コレクタータンクについては西園寺号(vol.04)や近藤号(vol.07)でも触れたが、燃料不足はエンジンブローに直結する最大のリスクだ。


エンジン周り、徹底した熱管理。

ミシモトのパフォーマンスアルミニウムラジエーター、BILLIONのスーパーサーモ、GReddyの汎用オイルキャッチタンクとオイルクーラー。TechnoProSpirit製のアルミプーリーセットで補機類の回転抵抗を低減。アースモンスター製のセリカ専用設計プレミアムアーシングキット14sqで電装系の接地を強化する。「スーパーチャージャーを積んでから熱が全然違う。ラジエターとオイルクーラーはスーパーチャージャー装着前に絶対に固めておくべきだった、と今は思う」


給排気、トライアルで統一する。

エキマニはトライアル製のZZT231用、キャタライザーもトライアル製のメタルキャタライザー。ビッグスロットルもトライアル製の2ZZ用。スーパーチャージャーキットを組んだトライアルのエキマニと組み合わせることで、吸排気系の流れが一本の筋で通る。マフラーは5ZIGEN ZZで締め、エアクリーナーはブリッツアドバンスパワーだ。


駆動系、クロスミッションで6速を使い切る。

CUSCOのクロスミッションが投入されている。純正の6MTのギア比を詰めることで、スーパーチャージャーのトルクをより有効なギア比で使えるようにする。「クロスミッションを入れてから、6速全部が気持よく使えるようになった。特に峠での3速・4速の使い勝手が全然違う」。LSDはCUSCO Type RS Spec-F 1.5way、クラッチはEXEDY製のウルトラファイバークラッチセット。フライホイールは1ZZ用の軽量品を流用し、レスポンスを高めている。

(なお戸田レーシングのローコンプキットを組むなら1ZZ用が必須となるので要注意ダゾ by 大輔)


足回りと剛性、万能FFモンスターの土台を作る。

車高調はBLITZのDAMPER ZZ-R、CUSCOの前後スタビライザー。峠からC1まで幅広く使う足として、ZZ-Rの減衰調整で場面に合わせたセッティングの切り替えが可能だ。

剛性補強は充実している。タナベのフロントストラットタワーバー、ウルトラレーシングのフロントフレームブレース・フロントメンバーブレース・リアメンバーブレース、Beatrushのフロントパフォーマンスバーとリアタワーバー、CUSCOのドアスタビライザー。「FFでスーパーチャージャーを積むと、フロントへの入力が増える。補強をしっかりやっておかないとボディのたわみで力が逃げる」

ブレーキはプロジェクトμのテフロンブレーキライン、CUSCOのブレーキシリンダーストッパー、そしてBRSS製の6ポッドキャリパーキット(フロント)。「6ポッドは正直オーバースペックかなと最初は思ってたけど、スーパーチャージャー仕様のパワーで峠を攻めるなら、ブレーキが一番大事だって走ってから気づいた」


タイヤ・ホイール、アドバンで統一する。

ホイールはアドバンレーシングTC-4(レーシングホワイトメタリック)、18インチ 8.0J +37前後同サイズ。タイヤはアドバン フレバ。「ADVANで全部揃えました。TC-4はセリカのボディラインに似合うと思って選んだ。ホワイトメタリックが光の当たり方でいろんな顔を見せる。夜のC1で見るのが好き」


内装、走りの情報を全部見る。

シートはBRIDE ZETA Ⅳ、スーパーシートレール FOタイプ。Defi-LinkアドバンスコントロールユニットSEを核に、ADVANCE BFシリーズの油圧・油温・水温の3点セットと排気温度計を配置する。NTK製のAFRモニター、Panasonic caosバッテリー。BLITZのレーダー探知機TL315R。「スーパーチャージャー仕様は、全部のデータを見ながら走りたい。油温と排気温は特に重要で、ここが上がりすぎたら一旦休憩する。それがこの車を長持ちさせるルールです」


外装、セリカらしく仕上げる。

ウェーバースポーツのフルエアロ、純正OPリアスポイラーのAliExpressレプリカ品、汎用エアロミラー。「セリカってアメリカで大ヒットしたこともあり、カスタムパーツ、特に外装パーツが豊富で選びやすい。ウェーバースポーツのエアロはフィッティングがよくて気に入ってます」


インタビュー:宝田 大輔、語る。

――セリカを選んだ理由は?

「形が好きで。あの縦につり上がったヘッドライトが。あと、2ZZというエンジンに惹かれた。VTECを超えようとしたトヨタの本気が詰まってるエンジンだと思って」

――スーパーチャージャーを決断したのはなぜですか?

「NAのままで限界を感じたというより、2ZZにスーパーチャージャーを乗せたらどうなるか純粋に興味があって。トライアルさんに相談したら、このエンジンとの相性は良いって言われた。やってみたら本当にそうだった」

――VVTL-iとスーパーチャージャーが同時に効く感覚はどんなですか?

「文章にするのが難しいんですけど……スーパーチャージャーで底上げされたトルクの上に、VVTL-iが乗ってくる感じ。二段階でパンチが来る。FFなのに前輪が引っ張る力がすごくて、最初は慣れるのに時間がかかりました(笑)」

――峠とC1、どっちが好きですか?

「両方好きで甲乙つけられないです。峠はコーナリングの精度を問われる感じで、C1はスピード域が上がって車の挙動の読み方が変わる。違う乗り方ができる分、この車が二倍楽しめてる感じがします」

――このセリカに点数をつけてください。

「85点です。あと15点は、もっとセッティングを詰めれる余地がある。特にフルコンのマップはまだ途中なんで。完成したらもう少し上がると思います」


取材が終わって、宝田号がエンジンをかけた。2ZZ-GEとスーパーチャージャーが目を覚ます独特のサウンドが駐車場に響く。FFクーペのセリカが、峠に向けて走り出した。

万能FFモンスターは、今夜も両方をこなしに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ