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STREET PHANTOM(ストリートファントム)  作者: STREET PHANTOM 編集長 神崎
14/20

成人祝いの相棒と、6年間。瑛太(仮名)とGE8フィットRS前期5MTの話。

「成人祝いでもらったんですよ。親から」

瑛太は少し照れながら言った。

「フィットRSがほしいって言ったんです。一番最初から。周りには『え、フィット?』って言われましたけど、自分の中ではこれしかなかった」

26歳、会社員。6年間乗り続けた相棒は、今も進化を続けている。

取材場所の駐車場に停まった瑛太号を見て、「これはフィットじゃない」と思った。無限のフルエアロを纏い、タケローズのリアウィングが立ち、J's RACINGのエアロボンネットが鎮座している。ホワイトのワーク エモーション T7Rが低く構える。どこから見てもホットハッチとして完成している。

でも、確かにフィットだ。


L15A i-VTEC、このエンジンの正体。

GE8フィットRSに搭載されるL15A i-VTECエンジン。水冷1.5リッターSOHC直列4気筒で、最高出力120馬力を6600回転で、最大トルク14.8kgmを4800回転で発生するNAユニットだ。

VTECとはパワーと環境性能を両立させるためにホンダが開発した可変バルブタイミング・リフト機構で、2種類のカム山を持つカムシャフトを回転数によって切り替えてバルブの開き方を可変させることで、低燃費が求められる街中とスポーツ走行に必要なパワーの両方をカバーするテクノロジーだ。

しかしこのエンジン、正直に言うと癖がある。2000rpmから4000rpmの領域は力強いが、上の方の回りが鈍く、回してもスピードが伸びにくいという特性がある。VTECが入る領域は気持ちいいが、そこから先の伸びにもう一声ほしい――それが正直な評価だ。

「最初はそれが気になってたんですよ。VTECが入るまでは楽しいのに、その上がなんか物足りなくて」

その「物足りなさ」を解消するために、瑛太は6年をかけてこの車を仕上げてきた。


JUN ハイカム、今回の核心。

今回の仕様書を見たとき、編集部がまず目を引いたのがここだ。

JUNオートメカニック製のハイリフトカムシャフト。

JUNといえばエンジン内部加工の老舗ブランドで、カムシャフトの再研磨と新プロフィール製作に長年の実績を持つ。純正カムシャフトを再研磨し、新しいプロフィールのカムシャフトを製作するという手法で、これまでの実績から選りすぐったプロフィールをカタログ化している。L15A用のハイカムは、VTECの切り替わり後の高回転域でのバルブリフト量を増やし、L15Aの弱点だった高回転の伸びを引き出す設計だ。

「入れてから変わりましたよ、明確に。VTECが入った後の伸びが全然違う。6000回転を超えてからも止まらない感じになった。このエンジン、こんなに回るんだって思いました」

戸田レーシングの軽量フロントプーリーと組み合わせることで、補機類の回転抵抗を減らしながら高回転への吹け上がりをよりシャープにする。NGK IRIWAY7の高熱価プラグで点火を安定させ、ゼロファイター製の強化エンジンマウントでエンジンのたわみを抑える。J's RACINGのハイパーECUがこれらすべてを統括する。

「ECUはJ's RACINGにして正解でした。カムを換えた後にECUを合わせてもらったら、全部が繋がった感じになって。バラバラに動いてたパーツが一本の線になった感じ」


( ・∀・)つ PHANTOM's EYE

L15A i-VTECにJUNハイカムを組む場合、必ずECUの現車セッティングが必要だ。VTECの切り替えタイミングと燃調がカムプロフィールに合っていないと、本来の高回転域の伸びが出ないどころか、VTECの切り替わりがギクシャクする。J's RACINGのハイパーECUはL15Aに対応した実績があり、カム換装後のセッティングとして相性がいい。ハイカム+ECUセットで考えることがこのエンジンの正解ルートだ。(゜Д゜)



給排気、ホンダスポーツらしく吸って吐く。

インテークは零1000 POWER CHAMBER TYPE-2。マフラーはJ's RACINGのR304 SUSエキゾーストシステム、センターパイプ50CTとエキゾースト50Rのセット構成で、インナーサイレンサー75φ対応品だ。

「J'sのマフラーにしたのはブランドが好きで。音もいいし、作りもいい。GE8でJ'sで揃えるのが夢だったんですよ」

インナーサイレンサーが用意されているのがポイントで、住宅街の夜間や車検時に音量を抑えられる。「近所に気を使う必要があるんで、サイレンサーは助かってます(笑)」。実用性も忘れないのが6年間乗り込んできた相棒ならではの知恵だ。

Spoon製のビッグスロットルもL15Aの吸気効率をさらに引き上げる定番パーツ。ホンダ系チューニングの老舗スプーンならではのパーツ選択で、J'sとスプーンというホンダスポーツ界の双璧を並べた構成は、瑛太のホンダ愛の表れでもある。


駆動系、FF2駆の限界を高める。

LSDはCUSCO Type RS spec-f 1.5way、フロント装着。FF車のフロントLSDはコーナリングの立ち上がりで内輪の空転を防ぎ、トラクションを確保する。「LSD入れてから、コーナーの立ち上がりで全然違う。踏めるようになった感じがする」。

クラッチはオグラレーシングクラッチのシングル。「慣れるまでは大変だったけど、今は普通に乗れてます。でも渋滞は嫌いになりました(笑)」。ミッションマウントはJ's RACING製の強化品、クラッチホースはSPOON製。無限製のクイックシフターでシフトストロークを詰め、操作感を引き締める。「クイックシフターは付けてすぐ気持ちよくなった。ショートストロークになるだけでこんなに楽しくなるのかと思って」


足回りと剛性、FF小径ボディを完全に固める。

車高調はTEIN FLEX Z。CUSCOのフロント・リアスタビライザーで前後のロールバランスを整える。

剛性補強はCUSCOのフロントストラットタワーバー タイプOS、CUSCOのロアアームバーVer.1とVer.2をフロントに併用、オクヤマ製のリアフレームブレース。さらにSPOON製のリジカラ(リジットカラー)も全車装着済みだ。

「リジカラは地味に一番体感できたパーツかもしれないです。サスのボルトとボディの遊びをなくすだけなのに、コーナリングのダイレクト感が全然違う。こんなにシンプルな仕組みのパーツでこれだけ変わるのかって驚きました」

そして仕上げにCUSCO製の7点式ロールケージ、5名乗車・ダッシュ逃げ仕様。「ロールケージは安全のためです。サーキットに行くようになってから、これは必要だと思って。あと剛性が上がって、ボディがカチッとした」


ブレーキ、ENDLESSの4POTで本気を出す。

ENDLESS製の4POTシステムインチアップキット。ENDLESSのブレーキラインと組み合わせて、純正比で圧倒的に強化されたフロントブレーキシステムを構築している。「サーキットで純正ブレーキがフェードしてからここに踏み切りました。止まれる車じゃないとサーキットでは怖い」。踏み込むほどリニアに制動力が出る4POTの感触は、一度体感すると純正には戻れない。


タイヤ・ホイール、白のT7Rで纏める。

ホイールはワーク エモーション T7R ホワイト、17インチ 7.0J +53前後同サイズ。タイヤはトーヨー プロクセス TR1。「ワークのT7Rにしたのは、繊細なデザインがフィットのボディラインに合うと思って。ホワイトにしたのは……無限エアロの雰囲気に合わせました」。こだわりの色使いが統一されている。


外装、無限とJ'sとタケローズで纏める。

エアロは無限製のフロントエアロバンパー、サイドスポイラー、リアアンダースポイラーの3点セット。無限はホンダの純正ブランドに近い立ち位置で、ホンダエンジンのアイデンティティを体現するVTECを活かした無限の仕上げはフィットRSに自然に馴染む。

リアウィングはタケローズのリアウィング I。ボンネットはJ's RACING製のエアロボンネット。「ボンネットをJ'sにしたのは夢だったんですよ。ずっとほしかったパーツで。付けた日は写真を20枚くらい撮りました(笑)」。

ケイズプランニング製のアルミナンバーステーと、AliExpressで購入した赤ホンダエンブレムが前後に入る。「赤エンブレム……ジン編集長に怒られそうですけど(笑)。でも自分のホンダ愛の表現なんで」

(怒らない。愛情は伝わる。でも次回のコーナーに送ってくるな。笑)


内装、BRIDE一式で固める。

シートはBRIDE ZETA Ⅳ レッド、スーパーシートレール FOタイプ、バックプロテクターK17タイプのフルセット。「レッドにしたのはホンダのイメージカラーで。エンブレムと合わせました」。

BLITZのタッチブレインプラスでOBD2との連携も取れている。


インタビュー:瑛太(仮名)、語る。

――6年間、この車に乗り続けた理由は?

「飽きないんですよ。いじるたびに変わるし、走るたびに上手くなってる感じがする。フィットって言うとみんな驚くけど、この車で上手くなれてることが自信になってます」

――成人祝いでもらったとき、改造するつもりはありましたか?

「してなかったです(笑)。最初はマフラー換えるくらいのつもりで。でも変えるたびに気持ちよくなって、気づいたらこうなってた」

――JUNのハイカム、一番印象に残ったパーツですか?

「そうですね。ここまで変わるとは思わなかった。VTECが入った後も伸び続けるエンジンになって……ああ、このエンジンってこういう車だったんだ、って初めてわかった気がしました」

――この車の好きなところを一言で。

「全部です。でも一つ言うなら、6年間一緒にいてくれたことです。相棒ですから」


取材が終わって、瑛太号が動き出した。L15A i-VTECがJ'sのマフラーとともに音を出す。VTECが切り替わる瞬間、エンジンの声が一段上がった。

成人祝いでもらったフィットと、6年間。走るたびに上手くなってきた26歳の男は、今夜もアクセルを踏む。

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