異世界転生
初めまして!ゆきと申します。
拙作をお読みいただきありがとうございます!
初めての作品なので色々と下手な所あるでしょうが、楽しんで頂けると幸いです。
32歳の引きこもり童貞のニート。
それが俺だ。
外に出ることも働くこともなくただ無為に日々を過ごしている毎日。
腹が減ったら深夜にリビングに降りてカップ麺を啜る。
風呂には入らない。
親とはもう何年も会話どころか顔も見ていない。
まさにクズとは俺のような人間の事を言うのだろう。
自分でも思うよ。
俺、なんで生きてるんだろうって。
でもさ、仕方ないじゃ無いか。
俺だってこうなりたくてなった訳じゃない。
昔は俺だって…なんて考えても今更遅いのだろう。
もう手遅れだ。
ならもういっそ死んで来世に期待した方が良いのだろうか。
考えて、部屋の隅に置いてあるネクタイを手に取って首に巻いてみる。
これが締まれば俺は死ぬ。
「い、いやだっ…こわい…」
このくだりも何度繰り返しただろうか。
思えば最近死ぬ事ばかり考えている。
あぁ…死にたいなぁ。
なんて漠然と考えて、その道具を取ってみるも、いざ死が輪郭を帯び始めると怖気つき逃げる。
その繰り返し。
その時テレビにあるニュースが写る。
「強盗殺人…?」
どうやら我が家の近くで強盗殺人事件があったらしい。
「…どうせなら」
どうせなら、真面目に懸命に生きてる人じゃなくて、俺みたいな死ぬために呼吸してるような奴が殺されればいいのに、俺なら死んでも誰も悲しまない。
むしろ喜ばれるか?
ならwin-winだな。
なんて考えていると、
バンッ!と部屋のドアが蹴破られる音が聞こえた。
何事かと振り返ると、そこには見知らぬ男がナイフと大きなバッグを手に立って居た。
「あぁ?んだおまめぇ…」
強盗、思い浮かぶのはニュースでやっていた事件。
犯人は未だ捕まる事なく逃走中。
男の顔は見覚えがあった。
だって今さっきニュース番組に写っていた男の顔と同じなのだから。
と言う事はつまり…。
俺はその結論に辿り着くと恐怖のあまり腰を抜かしてしまう。
「あ…あ、あぁ…」
喉からは情け無い嗚咽が漏れる。
助けを呼ぼうにもここ十数年まともに声を出してこなかったせいで声が出ない。
犯人はそんな俺を見て、
「おいデブ、この家の金目の物はどこだ?言わなきゃ殺す」
ナイフを俺の首筋に突き立てて脅してくる。
完全に力関係を理解しきっているのだろう。
男は犯罪行為をしているはずなのに行動に一切の迷いが無い。
俺は目の前から感じる強烈な死の気配に吐き気を催す。
多分こいつなら俺を何の躊躇いもなく殺せる。
死ねるのか?いつもビビって死ななかった俺が。
男は俺のそんな様子に苛立ったのか
「チッ…使えねぇ…もういいわ」
そう言うと、俺の首筋に当てられていたナイフを思いっきり喉仏に突き刺した。
「っあっ!ぅぁぁう!?」
声にならない声が自分の喉から出てくる。
…はずだった。
実際にはカヒューと情け無い音が喉に空いた穴から鳴る。
痛い痛み痛い辛い苦しい助けて。
そんな言葉が喉まで込み上げて空気と共に逃げていく。
「…っぁ」
死。
これまで幾度となく目の前に立っては逃げてきた相手、それが今俺を襲ってきている。
死んだらどうなるんだ?輪廻転生?それとも幽霊になるのか?それとも…何もない?
…い、いやだ。
死にたくない!まだ生きて居たい!
俺は情けなく地べたを這いずりながら部屋の外を目指して進む。
けれど運動なんて1ミリもして居なかった体がこの状態で動かせる訳もなくて。
俺の意識は次第に闇の中へと堕ちていく。
情け無い、死を願う癖にいざ死ぬとなるとびびって逃げ出してこんな最後。
もし来世って奴があるなら次は真面目に生きよう。もう同じ過ちは繰り返さない。やり直すんだ。
そんな思いを最後に、俺の意識は途切れるのだった。
「あぁ…う、生まれた、生まれたぞ!」
「はぁ…はぁ…」
「よく頑張ったな…ありがとう」
声が聞こえて来た。
死人となった俺には縁遠いはずの生者の声が。
視界はぼやけてなにも見えない。
けれど確かに感じる温もり。
まるで抱きしめられているような、安心する心地よさ。
次第に視界は晴れ、目に入ったのは
「っ!?」
俺を愛おしそうに見つめてくる見ず知らずの夫婦。
そしてそれに抱き抱えられている小さな小さな子供。
…あれ、俺は?
鏡に映るのは夫婦と子供…そして俺の視線は…子供と同じ…まさか
転生した…のか?
異世界転生、それは今や一大ジャンルとなった漫画やアニメの舞台設定。
俺は、まさかそれと同じ状況に?
は、はは…まじかよ。
まだ動く筈のない表情筋が強張る気がした。
…せっかく得たこのチャンス、絶対に逃さない。
次こそは、自分の為に生きよう。
もう同じ過ちは2度と繰り返えさない。
俺は…いや僕は、目の前両親にそう誓うのだった。




